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クソ馬灯

第二章「クソ馬灯」


僕が死ぬ?

死神が現れてから意味不明な事が起こりすぎて頭の整理ができない。

部屋の鍵は閉めたはずなのにどこからともなく現れるし、警察官には姿が見えないし、薬物検査させられて、挙げ句の果てに、来年死ぬ?

自分でも幻覚を見ているんじゃないかと疑ってきた。

まあ何回も言ってるけど、俺、死神だし、俺が見えるって事は一年以内にその人は死ぬよ。

相変わらず落ち着いた話し方をする死神。

ってことで君まだ二十歳だけど残りの人生悔いなく自分が好きな事やって過ごしてよ。

死神にそう言われたけど、僕はしたい事なんて何もなかった。

夢も目標もなければ、これといって趣味もない。

「まあいいです。死んでも」と僕は死神に答えた。

どうせこれからの人生仕事へのストレスとただただ戦って生きるだけの人生。

彼女だってできた事ないし、家族だってそこまでとても仲が良いわけではない。幼い頃から周りは誕生日プレゼントや、家族旅行、休日は一緒に遊びに行ったりと家族との楽しそうな話をしていたが僕にはそんなもの一つもなかった。

幼い時からこうなんです。

何の目標もなく、ただ何となく生きてきたしょうもない人生なんです。きっとこれからも・・・

なのであと一年ゆっくり死ぬのを待ちます。

死んで来世で頑張ります。

とさっき初めてあった意味不明の死神に永遠と自分の過去を話した。すると死神は「はー」とため息をついた後、思ってもみなかった言葉を死神が口にした。

「つまらない。最近の人間は本当につまらない。言っとくけど君みたいなしょうもない人間、俺地獄にしか見送らないからね。また人間になって人生初めから過ごせると思うなよ。」

と死神が答えた。

地獄!?

なんで僕が地獄なんですか、悪いことなんて何もしてません。小学生の時から周りに言われて勉強だって毎日していたし、中学生になって周りが友達やら彼女、部活って言ってる時も高校生になって周りはバイトやペンション、旅行とか遊び呆けている中、僕はちゃんと勉強して、周りよりはそこそこ優秀な成績で高校卒業して、今はフリーターだけど、お客さんから理不尽な事にも耐えながらちゃんと働いている。そんな僕が何で地獄なんですか?悪いことなんて何もしてません。

とこれまでたまっていた僕の人生への不満を死神に話ながら問いかけた。

そして死神は「だって君の人生つまらないんだもん」と即答された。

若くして死ぬつまらない人間に一つ良いこと教えてやろう。まぁそうだな・・・

いわゆる人間がよく言う、天国と地獄、どうやって、誰が決めていると思う?

そんなの神様が亡くなった人をみて、この人が良い行いをしていたら天国、逆に悪い行いをしていたら地獄とか、そういう決め方じゃじゃないんですか?

「え、そんなもの見る訳ないじゃん」と死神は少し呆れていた。君らの面白くもない人生見るほど、こっちは暇じゃない。

いいか、人間。人が天国に行くのか地獄に行くのかを決めてるのは今お前の目の前にいる俺たち死神だ。最近は昭和だの平成だの令和だのとくだらない時代が続いているけど。

言っとくが今の時代死んだ人間の八割地獄行きだよ?

それを聞いて僕はかなり驚き、動揺した。

は、八割!?何でそんなに地獄に!?

人間が死んだ後、その人間と担当の死神は人間界とはまた別の神の里と言われるところで、その人が生きている間の走馬灯を一緒に見る。人間界でいう映画館?みたいなところで。

その走馬灯を見た死神がこの人間の人生楽しかったかどうかで、また人間に戻すために天国に送るか、一生人間に戻れないように地獄に送るのかを決める。

まぁ言えばその人の走馬灯が楽しいかどうかでこれからの君たちの死んだ後の第二の人生ってやつが決まってくる。

僕は驚きながらもわからない事が多すぎて少しテンパっていた。

それで八割の人は地獄に行くんですか?

行くよ。だってつまらないんだもん。昔はもっとハラハラできるし走馬灯も楽しくて、次も死んだらまた楽しい話持ってきてねーって人間を天国まで見送っていたのに。

昔はもっとこう旧石器時代って言われてた頃だったらマンモスと戦って勝ったり、負けたり?逃げて逃げて追いつかれる寸前のところで難を逃れたり?しばらくしたら自分たちで考えて新しい食べ物一から生み出したり、生活が豊かになっていくと思ったら、今度は人間同士で戦いを始めたり?本当人間って生きている間でコロコロ生活が変わって、俺たち死神も見てて、楽しかったのに。

今の人間の走馬灯、死神達の中でなんて言われているか知ってる?

急に問いかけられて、咄嗟に全然分かりませんと僕は答えた。

今の人間の走馬灯、あれ死神達の中で走馬灯じゃなくて「クソ馬灯」って言われてる。

俺の後輩死神なんて一年間担当した人間が一緒にいてつまらなすぎて本来であれば一緒にクソ馬灯を見るために神の里にあるシアタールームに行くはずが、そこ飛ばして、そのまま地獄に案内してたわ。

と笑いながら話す死神。

今の人間のクソ馬灯どんなんか知ってる?

2時間上映のうち半分、四角い鉄の塊をずっと見てるだけ。そんな物上映されたら死神寝るわ。

今の人間の走馬灯つまらなさすぎるんだよね。人間界でいう携帯ってやつ?

中学生になったと思えば、携帯ばっか見て、制服変わったと思ったら携帯見て、仕事始めたら携帯、仕事終わって家帰っても携帯、せっかくの休日も携帯。

挙げ句の果てに、やりたい事がない、夢は選ばれた人だけが叶えられる、身の丈に合った生活とか次第に言うようになり行動する事を自分からさけて、何か話したと思えば会社の愚痴、人の愚痴、僕には私にはできない、子供ができたと思えば、今まで散々努力もしたことない奴が現実を見なさいと偉そうに話すし、対して功績も残して無い人ほど、子供に偉そうに話をする。今の人間は本当につまらない。

逆に聞くけど、こんな人をどうやって天国に見送る?また人間になったところで同じことの繰り返し。そんなつまらないクソ馬灯を2時間も見るこっちの身にもなってよ。

死神は担当についたらその人間と一年間一緒にいないといけない。人間界でいうとこの365連勤。そしてその後最後の最後で見せられるのは今の人間のクソ馬灯。

神の人事異動とかないもんかね。死神じゃなくて守護神に異動したいなー。あいつらは良いよなー。人間の身に何かある時だけ、現れて助けるだけ。人間界に行ったと思ったらすぐ神の里に戻って休憩できるもんなー。あいつら休みの方が長いんじゃないか。

と死神が神々の間での不満を永遠と話した。

だからせめて残りのラスト一年分くらいは俺に楽しい走馬灯見せてくれよ。と僕に言った。


あ、君明日で仕事辞めてきな。

急に言われた死神の発言に僕はまた驚いた。

え、何でやめるんですか。

今の仕事、別に自分が好きな事とか、やりたい事じゃないんでしょ?そんな仕事なんでやる意味があるの?

あるよ、生活だってあるし、仕事しなかったら給料もない、将来のために貯金もできない。もしこれから、そのやりたい事が見つかった時にできないじゃないか。と僕は死神に答えた。

すると死神は、君まだ自分が置かれた状況がわかっていないんだねと話す。

まもなく死ぬお前に失うものなんて何もないんだよ。お前の貯金が無くなろうと、夢に失敗しようと、失恋しようと、友達がいなくなっても、どうせお前は二十一歳の誕生日に死ぬ。

失うものなんてもう今の君には何もない。だから最後の一年くらいやりたいことだけを全力で見つけて、それに全力で挑戦しろよ。

今の君にリスクなんてこれっぽっちもないんだから。

「死神・・・」と僕は無意識に呟きながら、僕は死神がこんなどうしようもない自分を応援してくれているように感じた。


「そして来年死ね!」


と最後の発言に、僕の中で少しだけ響いた気持ちを台無しにして、いつの間にか部屋から死神は姿を消していなくなってしまった。

僕はこの数時間で一気に起こった奇妙な出来事を、整理しながらお風呂に入り、コンビニで買っておいた夜ご飯を食べ、電気を消し、布団の中に入った。

目を瞑りながら一人で考えた。

僕は来年の今日本当に死ぬのだろうか。たった一年。この一年の間に僕は何が出来るのだろうか。僕の夢とは。と色々考えているうちに気がついたら深い夢の中にいて、次の日の朝を迎えていた。

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