初めまして死神です。
第一章「初めまして、死神です。」
(神々の世界)
大神「お疲れ、死神。百才になったお婆ちゃんしっかりと見送った?」
死神「はいはい、いつもと同じ病院で予定通り。相変わらずしょうもない人生でしたよ。前々から疑問だったんですけど、俺も一緒に死んだ人間と走馬灯見る意味あります?最近の人間の走馬灯全然面白くないんですけど」
大神「まあまあ、そう言うなって。短い命の人間からしたら最後の思い出なんだから一緒に観てやってよ。ところで死神、戻って来たばっかで悪いんだけどさ、次、行って来んない?」
死神「ちょっと勘弁してくださいよ。俺今戻って来たんですよ?二人連続で天に見送ったんですよ?人間界の言葉で言えば730連勤ですよ?たまには休み下さいよぉ。」
大神「いや、休みをあげたい気持ちはあるんだが、なんせここ数年、守り神やら守護神やらが体調を崩しておってな。そのせいで人間どもは事故にあって死ぬは、病気になって死ぬはで、死神はみんな他の人間に既についておってな。今行けるの君しかおらんのよ。」
死神「勘弁してくださいよ。こっちが人間とは違って過労死しないのをいい事にこき使わないで下さいよ。」
大神「まあまあ、はいこれ。君の次の担当。可哀想よね。この子まだ二十歳なんだって。もしかしたら若すぎてショック大きいかもしれないから、ちゃんとケアしてあげてね。」
死神「俺はいつからメンタルカウンセラーになったんですか。で、この子の死に方は?」
大神「それは・・・」
(現実世界)
いらっしゃいませ。ご注文をお伺いします。
遅いよ。お前注文とるだけなんだから、もっと早く注文取れないのかよ、俺この列もう10分も待ってるんですけど。
申し訳ありません。気をつけます。ご注文はお決まりですか?
すぐ決めるから待っとけ。
(は?これだよこれ。遅い原因。10分も列にいたんだったら決めとけよ。)
僕は接客をしながらふと思った。
お疲れ、歩。休憩?今日さ。この後全然従業員居ないんだよね。だから閉店までよろしくね。
はい、残業確定。今日も開店から閉店まで10時間以上の労働。
僕は新田歩。高校卒業後、特にやりたい事や夢もなかった為、何となくフリーターをしていた。周りは新社会人として働きながら彼女と充実した生活を送っている者、大学に進学して自分の夢に向かって日々勉強に励む者、将来の夢に向かって専門学校に入学し、専門職のスキルを磨く者、みんな目標を持って行動している中、僕は親から「いつまでフリーターするつもり?ちゃんと就職して正社員として働いたら?」と一人暮らしの僕に毎日電話で言われる日々、そして自分がやりたい事も分からないまま、就活を始めたが、上手くいかず、結局ファーストフード店アルバイトとして働いている。
そんな何となく過ごしている生活だが、毎日浴びる客からの罵声、店長からの終わりの見えない残業通知、アルバイトの学生の子達から言われる店長への愚痴や不満。そんな事俺に言われても・・・。そう思いながら聞き流すようにしている。
今日も疲れたー。一人暮らしの家に帰って来て早々部屋のベットに横になる。
僕の生活はアルバイトとして働きながらお客様からの理不尽な要求、スタッフ間の人間関係、彼女も居ないため、吐口もない。ストレスと勝負をする日々だった。
今の職場の給料は手取りが14万。そこから家賃、光熱費、食費、交通費、携帯代を引いて残るのは2万くらいだ。
貯金もない、彼女もいない、社会人になって、周りの友達とも休みが被ることも減り外で遊ぶこともほとんどない。僕は何のために働いているのか自分でもよく分からなかった。
そういえば俺今日誕生日じゃん。疲れた体、残ったわずかな体力で携帯を開き、母から届いていた誕生日祝いのメールを見て、今日自分が誕生日だった事を知る。俺の誕生日もあと30分で終わりか。やりたい事も、目標も特にない。「俺ずっとこんな人生なのかな」そう独り言を呟いた時だった。
急に外が凄い大雨になった。雨はどんどん激しくなりそのうち雷も鳴るようになった。
俺の誕生日は天気も悪いのか、そう思った時だった。
急に部屋の電気が全て消えた。
「あれ、停電?」そう思い急いで疲れた体を起き上がらせた。すると部屋中の電気はつき元に戻った。
ただ一つを除いては・・・
「凄い雨ですね〜」と僕以外誰もいないはずの部屋から始めて聞く声がした。僕の後ろから聞こえた為、慌てて後ろを振り返る。
僕は目を疑った。
そこに居たのは全身真っ黒のスーツ、白髪の髪、黒いハットをかぶって、黒い杖のようなものを持っている僕より少しだけ年上に見える男性が窓から外を見ながら立っていた。
その全身黒い服装の男性はゆっくりと自分のベースで自分の方に体を向け、意味不明な発言をした。
「初めまして、死神です。」
僕は急いで、死神と名乗る意味不明の男から距離をとり、携帯電話を使い警察に通報した。
「そこまで避けなくても」と言いながら、焦っている僕にお構いなしに話を続ける不審者。
そんなに避けられたのいつぶりだろか。この前なんて避けられるどころか歓迎されたのに。
死神と名乗る男は余裕そうに自分の話をしながら、さっきまで自分が寝ていたベットに座って話を続けた。
そっか、もう一年前か。この前担当した百歳のお婆ちゃん、病院で始めて挨拶した時自分の孫と勘違いしてそれはそれは歓迎してくれたんですよ。体はもう自由に動かせないっていうのに、あっちにあるりんご食べてとか、みかんもあるよとか?
おかげで果物嫌いになりそうなくらい食べさせられたけど、こんなにびっくりされるのは久しぶりだな〜。と自分の家かのようにくつろぎながら話す。
僕「え、いつからそこにいたんですか!?」
死神「え、今きたばっかです。どうも初めまして。」
僕「どうもじゃないですよ、僕ちゃんんと鍵かけているので、入れるとこなんてどこにも・・・」
急に現れた男とテンパりながら話している間に、すぐ警察官二人が到着した。
僕は急いでドアを開け、「助けてください。不審者です。」と警察に助けを求めた。
警察官はここにいてくださいと僕に伝え、二人で部屋の中に入っていった。
すると男は、「あ、伝え忘れてたけど、俺、君以外には見えないよ。」と話す。
警察も誰も居ませんが・・・と困惑する。
「いますよ、そこ。ベットに座っている人」と僕は警察官に伝えると、警察官の二人は顔を合わせ、さらに困惑した。
あの、少しお話ししませんかと言われ、かなり疑われた状態でいわゆる職務質問をされた。
部屋のドアを閉め、僕と警察官二人、その横で笑いながらくつろいでいる男。四人がいる部屋で職務質問は続き、薬物検査担当の警察官まで家にきた。
結局、僕が幻覚を見ていると疑われ、薬物検査までさせられた。
そして異常がない事を確認すると、お兄さん仕事終わりですか?と言われ、しっかり睡眠とって休んで下さいね。と警察官は僕の部屋を出た。
大変だったねと余裕の表情を浮かべてくつろいでいる男。
だから言ったじゃん、俺死神だから君にしか見えないよって。信じてくれた?
僕は仕事から帰って来た時の事を思い出し、しっかりと家の鍵を閉めていた事や、今の警察官の行動を見て信じたくはないが信じざる負えなかった。この男はただの人間ではない。
この人が死神?
死神が僕に何の用ですか?と死神に問いかけながら、直感的に悪そな人ではなさそうだった為、自分も床に座って話を聞く事にした。
「やっと落ち着いたから本題に入るよ。君今日二十歳の誕生日だよね?」と相変わらずくつろぎながら死神に言われた。
急にこんなこと言われても理解できないと思うんだけど、と淡々と話し始める死神。
そして次に発した言葉に僕は耳を疑った。
「おめでとうございます。来年の今日、つまり二十一歳の誕生日、君死ぬよ?」
と言われ、僕は理解ができなかった。
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