第三話「部活動を選ぼう(上)」
前回(第一話)投票の結果:2
1.はい!生徒会入ります!
→2.一応全部見学してから決めます…
「…ええ。それがいいでしょう。
入念な準備はいいことです」
言い終わるのとほぼ同時に、
生徒会室のドアをノックする音が聞こえる。
入ってきたのは、小柄な男性。
どことなーくネズミっぽい印象の、背骨の曲がった青年だ。
「会長さん?ちょっとお時間いいすかね。
予算案の改正前の奴シュレッダーにかけたいねんけど」
彼は額の汗を拭い、腕をゆっくり伸ばした。
相当重い荷物を運んでいたようである。
「放送室のシュレッダーを使いなさい。
あと、改正案には目を通しました。
概ね大丈夫なのだけれど…もう少し…」
返事を受け、露骨に嫌そうな態度をとる。
「ええ~!??堪忍してくだせぇ!
部費なんてどこもかしこもカツカツでんがな!
ワシまた謝りに行くの嫌や~!!」
「例の物を増設するよう"路補"に頼めばすぐでしょう。断られたら…
そうですね。インターホンの弁償代として徴収するように」
「弁償代?ま、とにかく。
解決できるんならそれでええですわ。
んで、会長。この人誰?」
→1.氷室です。よろしく
「ほ~ん。君が転校生の氷室君?
どっかで見たような顔やな。
ワシは金田 昇陽や。生徒会の会計担当。
ま、おおきにな」
束は金田に提案する。
「金田君。彼は部活動見学を希望するそうですが、
どういう順番で回ったら良いでしょうかね?」
「ワシ割と忙しいんですが…
まあ、人が多く集まるんなら、まずは調理室と食堂やな。
まずはそこ行けば大体の人には会えるで。それと…」
金田は君との距離を詰め、
声を低くして付け加える。
「化学室・武道場と屋上には近づいたらあかんで。
これだけ覚えとけばええ。ほなな」
金田は部屋を後にする。
「生徒会の仕事は、今の通りです。
各部活動の業務を円滑に進める、お手伝いですね。
まぁ…楽しそうには、見えないでしょう?」
1.そうですね…
→2.そうですかね?
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…あー。君はそういうこと言うよね。
氷室君、もともと結構友達多いタイプでさ。
すぐ誰かと友達になれるし、
友達が困ってるとすぐ助けに行くタイプなんだよね。
だからこそ転校してすぐでも、新生活への
憂鬱さとか不安がなかったんだろうけど。
氷室君にとっては、生徒会は天職だね。
どれだけ雑用押し付けられる生徒会だったとしても。
前回の1.の返答は、彼自身の考えなんだぜ。
まー要するに、主人公気質ってコト。
主人公だし、当然っちゃ当然だよね。
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君の返事を聞いて、会長は少し固まったあと。
「…実際に見てみるのが一番でしょう。
私は忙しいので一緒に見学しに行けません。
生徒会に限らずとも、好きな活動が沢山見つかるといいですね。
それでは、書類仕事に移るので、また後程」
→1.はい。失礼します。
次向かう場所は"食堂"だ。
渡されたマニュアルを見ながら、君はゆっくり階段を下りる。
…氷室君?"美食部もいいな"、とか思ってる?おーい!
――――――――――――――――――――――――
暖簾の付いたドアを抜けると、
外食の店によくある鈴がカラカラと音を立てる。
「はーい!今行きまーす」
食堂入り口からはかなり距離があるのに、
なお重々しい足音がこちらまで響いてくる。
「おや…見ない顔ですね。
新入生の…氷室君?でしたっけ。家保から聞いています。
私は台場 糧太と申します。お見知りおきを」
→1.こ…こちらこそ…
2.で…デカいっすね…
凄く恰幅の良い彼が、"美食部"の台場君だ。
保健室のデータを漏洩させるけど、
身長189cm,体重102kg。イカれてるだろ?
あまりの体格の差に、氷室君は圧倒されている。
でも、彼の目的は変わらない。
「美食部の活動はただ一つです。
"美味しい食事を作って、振舞う"!
本校での食事はお任せあれ!
アレルギーなど有れば事前によろしくお願いします!」
→1.料理得意です!雇ってください!
2.誰かに食事を振舞うの慣れてます!
うん。華麗なる自己PR。
氷室君料理は得意だもんね。
まあ当然と言えば当然なんだけど…おっと。
彼は嬉しそうだが、反応はあまり良くない。
「あー…実際に料理したい方ですか?
見学は嬉しいんですけど…」
「実は、この部活、個人の食欲のついででして。
校内で朝昼晩の三食用意してるのも、
自分が一番食べたいものを作ってるだけでして…」
→1.要するに…定員オーバー?
「はい…申し訳ないんですけどね…。
つ…さんが前に一度厨房に立って以来、
スタッフは雇わないようにしているんです…」
1.あっ…すみませんね…
→2.そうですか!なら仕方ないですね!お昼はカレーお願いします!
テンション高いな君!?どうしたの一体!?
「おっ!丁度いいですね!
カレー今作ってる最中なんですよ!
特製スパイスが味を引き立ててましてね…」
キミたちが料理談議に花を咲かせようとしたとき、
静かに暖簾が揺れ、誰かが入ってきた。
「定期点検だ。
地下室は空いているな?失礼する」
入ってきたのは、痩せぎすの青年。
手足は冬の街路樹のように、心許なかった。
→1.えっと…初めまして…?
2.氷室です…よろしく…
痩せた男は一瞬目を合わせて、すぐ向き直り、
食堂の隅へすたすたと歩いて行った。
明らかに肩を落としている氷室君を見かねて、
台場君が君に声をかける。
(大丈夫です…路補君、誰に対してもこの態度なので。
君が嫌われているわけじゃないですよ)
→1.地下に何かあるんですか?
「んー。食糧庫ですね。
なんでも、クローン技術で複製できるそうで…
食用肉、野菜、果物、なんでも。
定期メンテナンスしないと、複製ミスや
劣化で味が落ちるから、彼に頼んでいるんです」
→1.すっごくハイテクなんですね!
2.(誰がそんなものを作ったんだ…?)
「メンテナンスは終了した。肉食複製機の劣化が激しい。
エネルギー消費も多いので肉はなるべく減らすといいだろう。
報告は以上だ。また3日後に点検する」
「うわっ!いつの間に終わったんですか!?
手際良すぎませんか!?」
「他に大した損傷はない。
あと数十回絶えられればいいからな」
→1.(…言ってることの意味が全く分からない…)
すると、突如彼は君に振り返り、
「あの機構はおそらく拙作だ」
とだけ呟いた。
→1.――え?
「では、特に異常も無いので失礼する。
不具合があればすぐに知らせろ」
→1.ま、待ってくださ…
「え?もう帰るんですか?ちょっと!
最近食堂来ないですけど、ご飯食べてますか!?
ちゃんと食べないと倒れますよ~!!」
君たちの制止も空しく、
彼は何処かに行ってしまった。
→1.あの人ちょっと痩せすぎですよね…
2.食べ過ぎるのもどうかと思いますけど…
その言葉は、決して口から出ることはなかった。
――突如として。
君の肉体は叩き起こされる。
いつか、どこかで味わったような恐怖が、
何の脈絡もなく背筋に走った。
君は持てる力を総動員して後ろを振り向く。
そこにいた、恐怖の由来は。
「毎度世話になるな、台場。
弁当は出来上がっているか?」
同じ人間とは思えないほど。
全身の肉体が鉄壁のように堅牢に。
指の一本一本が武器のように鋭敏に。
身長こそ、自分より低いが。
その肉体は生物の枠に収まり得るものではなかった。
その女はまさに、"武"だった。
…いやー。何度見てもヤバいわー。
アイツの周りだけ劇画みたいになってるわー。
世界観違うところから来てるよ絶対。
「お…お待ちして…おりました…!!
どど…どうぞ…用意は出来ております…!!」
隣を見ると、緊張か恐怖かで震えている台場がいた。
肉体の揺れも相まって、心なしか丸まって見える。
台場は台所に駆け足で向かい、
新年の料理のような量の重箱を持ち運んできた。
両腕を全力で使って支え、必死で運んでいる。
「お…お受け取りください…!!!」
女は重箱の包みの結んである部分を軽くつまんで、
箱を片手に軽々と掴んで持った。
「うむ。お前の作る食事は、研鑽が積まれている。
それもまた"武道"なのであろうな。とても佳い」
言の葉を一つ紡ぐたび、空気がびりびりと震える。
「お…お褒めに預かり恐悦至極でございます…!!!」
いつも機嫌のいい台場君も、完全に委縮している。
→1.は…初めまして…
氷室君、凄いな。良くこの状況で挨拶できるね。
一応、君一度彼女に殺されてるんだけど。
私だったらダッシュで逃げてるわ。
鷹のように鋭い目を君に向けて、
筋骨隆々な女は口を開く。
「新入生、か。珍しいものもあったものだな。
挨拶は不要だ。不用意に接触するな。
貴様が俺に会うのは、まだ尚早に過ぎる」
「先達としての助言だ。"鍛えぬくがいい"。
さもなくば、残るのは死のみだ」
そういうと、彼女は食堂を後にした。
「…はぁああぁあ…緊張したぁあ…!!」
→1.あの人…人??誰なんですか???
「ああ…彼女は、円 歩[マドカ アユム]さんだよ。
この学園随一の凄い人だよ。
氷の化け物を素手で倒せるのは彼女だけだよ」
君たちはほとんど放心状態だ。
どのような心理状態か簡単に説明すると…
10時間近く頑張ってやったゲームを、
ようやくクリアできた間隔かな。
そうやって疲労している君たちを起こしたのは、
甲高いスピーカーからの声だった。
『食堂限定校内放送でーす!
新入生君は至急放送室前までいらっしゃーい!
繰り返しまーす!新入生君は放送室前までー!』
「…ああ。君、三会君に呼ばれているのかい?」
→1.あ…そういえば、そうだった!!
「あの子、テーブルマナーがちょっと悪すぎて…
それ以外はまぁ、基本的にはイイ子ですけど。
テーブルマナーが良くてそれ以外が…な子もいますし」
→1.呼ばれているので、そろそろ失礼します!
2.お昼ごろ、また来ますね!それでは!
「ええ。今日のメニューはカレーですよ!
期待して待っていてくれると嬉しいです!」
→1.ヤッター!!
"大扉"前、中央階段についた君。
そこを登れば、放送室に行けるが…
さて、どうしよう?
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一日目・3
氷室君の行動は?(投票で決定します)
1.真っ先に放送室へ
2.怪しいし、ちょっと西へ寄り道してもいいよね…
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あとがき
伏線あるとはいえ、テンポが遅い!!(挨拶)
次回からは加速するのでお楽しみを…
感想投票お待ちしております…