第一話「氷室の君へ」
――1-01-1
「氷室のキミへ」
――清々しい朝だ。
晴れた空は人の心を温かくする。
セロトニンの分泌が云々、ということもあるのだろうが、
我々は実際、太陽の恩恵を受けて生きている。
太陽の温かさが無くなったら、僕たちはどうすればいいのだろう。
そんなことをいろいろ考えながら、
君は初めての通学路を急ぐ。
君はこの春、転校してきた高校二年生。
いつも使っている目覚まし時計がなかったことや、
初めての道のりで道に迷ったことなどで、
転校早々遅刻しかけてしまった。
このままでは生徒会長との面会の時間に遅れてしまう。
そして、よくある十字路がそろそろ迫ってくる。
異常なくらい視認性の悪い曲がり角で、
いかにも重大な事故が多発しそうなものだが…
まあ、基本的にはこういう場合、
ヒロインとの事故しか起きないものだ。
「もぐもぐ… !」
ところが君は、こういう恋愛ものの定型とは異なり。
「…曲がり角は危険ですよ、気をつけて」
――黒髪を伸ばし、スレンダーな容姿をした美少女に。
逆に、転んだ所を抱きかかえられていた。
→1.あ、ありがとうございます…。
2.ど、どうも…初めまして…。
黒髪の少女は君を地面に下ろして、乱れた髪や服装を整えた。
その髪型は尼削ぎ、或いは姫カットと呼ばれるもので、
右腕の腕章と同様に、少女の厳格さを如実に表していた。
「礼には及びません。
事前にカーブミラーを設置しておいたのが功を奏しました。
君の制服は本校の物…ということは、君が転校生ですか?」
その姿や佇まいは凛としており、
如何なるモノにも心を開かない氷の女王の様であった。
→1.はい、よろしくお願いします!
2.さっきまで何食べてたんですか?
君の返事を受け、少女は少し顔を綻ばせる。
「いい返事ですね。よろしい。私は本学…
"私立凍結学園"生徒会会長の束 命[ツツカ ミコト]です。
貴方の学生生活が実りあるものになるように尽力しますので、
今後ともよろしくお願いしますね」
→1.貴方が生徒会長さんだったんですね。
2.こちらこそよろしくです(…何処かで会ったような…?)。
挨拶を終えると、また初対面の時の厳格な顔に戻る。
「…君との待ち合わせ時間は8:30の予定でしたね。
"君の来た方向は学校とは真逆でしたし"、道に迷った様子。
時間も時間ですし、道案内もかねて歩きながら話しますか」
→1.時間に正確なんですね、俺は時間管理が苦手で…
2.(学校と真逆の方向に走る俺とぶつかった…この人ひょっとして…)
君の言葉を受けて、彼女は頷いた。
「時間を強く意識しなければ、出来る人はいませんよ。
かくいう私も、規則正しい訳ではありません。今朝も…いえ。
とにかく。社会に生きる人間たるもの、"時間には正確に"ですよ」
そんな会話を交わしながら、
束少女は君に学校のルールについて教えながら、
学校までの道のりを歩いていった。
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1-01-2
「最後に…"お互いの絆の輪を崩さない事"。
…以上が"学長"の定めた、この学園の大まかなルールですね。
先ほど渡した簡易マニュアルに載っているので、熟読するように」
君は、学園のルールについて詳しいことを聞いた。
…"後でマニュアルを読めばいい"と思って、
あまり真面目に聞いていなかっただろ?後悔するぞー!
「…見えてきましたね。あれが"凍結学園"です。」
よくある学校のように中心に時計がある四角い建築だったが、
それは"高校"にしては遥かに規模の小さな物に見えた。
それこそ、家から500mほどの距離しかないのに、
ここまで近づかないと建物が見えないほどに。
→1.うぉ…ちっちゃ…
2.あれ?あの時計12時10分?なんで?
「まあ、学校としては小規模ですが。
その分自由にやりたいことができますよ。そこは利点ですね」
「学校の見取り図はマニュアルの最終ページを。
1F西は化学室、1F東は調理室と…保健室。
2F西に管制室、2F東に放送室と和室。
西別棟に寮と、東別棟に武道場。
武道場付近、半径50m以内には立ち入らないことをお勧めします」
「そして、屋上に飛行場、中央階段裏に「大扉」。
以上で部室の説明は終わりです。
詳細は実際に行ったほうが説明するより早いでしょう。
さて、ここまでで質問はありますか?」
1.えっ??屋上に飛行場???
→2.…「大扉」には何が入ってるんですか?
――おや。
その質問は、ちょっと不味いぞ?
聞いたのが彼女でよかったけどね…。
束は一瞬硬直し、不穏に口を開く。
「そうですね。嘘をついても仕方ないですし、率直に言います」
「もし貴方が大扉を開け、それを詮索しようとしたならば、
本学の全員が、貴方を"即座に殺しにかかる"でしょう。
私ももちろん貴方を殺します」
君は生唾を飲む。
「あそこには誰も近づいてはいけません。無論、私も同様です」
張りつめた糸のような静寂が漂う。
それを破ったのは、束だった。
「…もっとも、あの扉を開ける鍵の場所は私も知らないのですが。
誰もあの中にあるものを知らないし、誰も近づけないので、気にする必要はないかと」
→1.ビックリさせないでくださいよ!!
2.ああ…怖かった…!!
「ふふふ。そう肩肘張らずにいてください。
とても自由な校風ですので、ゆっくり暮らしてくださいね?」
うん。君は実に幸運だ。
この学園に転入してなお、ケガがまだ一つたりともない。
なるべく保健室の世話にならないよう頼むからね?
「…まあ…気風が自由すぎるせいで、
問題を起こすような偏屈…個性的な人しかいませんが。
生徒会としては、正直疲れます」
→1.なるべく問題起こさないよう、善処します…
2.(個性的な人が多い学校…)…まあ、よくある話か。
「(それ、問題起こした人のお決まりの謝り方ですね…)
ええ。そうしてくれるととても助かります。
そろそろ校門ですね。門限もないので入りましょう」
→1.出席は自由、なんですよね。
2.寮に荷物を置かなくちゃ…。
「ええ。何しろ、生徒全員が寮生活ですからね。
寮長には、既に連絡を済ませてあります。
気難しい人なので、後で一緒に挨拶に行きましょうか」
束は、校門を抜けると
少し腹立たしそうな表情をして言った。
「…それにしても。どういうことですか?
もう8:30はとっくに過ぎてるのに、
朝礼のチャイムの音が鳴りませんが。
また三会が職務放棄しているのでしょうか…はぁ…」
すると、正面玄関のほうから誰かが走ってくる。
「やっほー!ひっさしぶりーー!!!」
見たことのないショートヘアの小柄な少女が、
こっちに手を振りながら走ってきていた。
束は頭を抱えながら言った。
「はぁ…三会さん、チャイムはどうしたんですか?
放送室の仕事は貴方が担当でしょう」
「先に優先すべき事項があったので!
生徒会に先に"明日サボります"って紙入れました!」
「貴方が紙を入れたの、匿名の意見箱でしょう!?
せめて所属を書きなさい!」
「はーい!なるべく問題起こさないように善処しまーす!」
「(頭を抱える)…もういいです。
それで?何の用事ですか?」
「いえ、会長に用事はなくって、そこのキミ。
ボクのコト覚えてるくせに、水臭いなーって」
そう言って彼女は、君を指さした。
→1.え?俺?
2.あんた誰です?
「えっ…マジで?ほら!覚えてないの!?
ほら!!三会!!三会爽子[ミツカイ ソウコ]!!
ボクたち幼馴染じゃん!小学校一緒だったじゃん!!」
いろいろ言われても、君は思い出せずに気圧されてしまう。
そこに、束が助け舟を出した。
「君は彼女のことを覚えてないのですか?」
→1.…薄情ですが、全く思い出せません…。
2.(というか、そもそも…)
三会はショックを受けて、大声で叫ぶ。
「ええ!?!ひっどーい!!薄情者!!
会長!!コイツ校則違反ですよ!!
"お互いの絆の輪を崩さない事"に反してます!!
どう処罰しますコイツ!!ねえ!!」
「そうですね。
三会さんは今日一日和室出入り禁止で」
もっとショックを受けた様子でのたうち回っている。
「ええええ!!??それは勘弁してくださいよ~!!
揃いもそろって血も涙もない人しかいない…ぐすん。」
「もうやめましょう三会さん…
そろそろ一時間目なので、放送室に戻ってくださいね。
私も一緒に戻りますから…」
「はい…三会戻ります…
氷室君は時間があったら、後で放送室に来てねー…」
「氷室君、三会さんを片付けて来るので、
15分後に2F東会長室へ来てください。
その間に色々やりたいことをやるように」
そう言って、束は三会を引きずりながら生徒玄関に入っていった。
というわけで、君は突然自由時間を与えられた。
さて、ここからは君のアクションだ。慎重に選ぶといいよ。
選択肢次第では君、マジで死ぬからね?
それと、保健室には来ないように、いいね?
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一日目・1
氷室君の行動は?(投票で決定します)
1.先に、寮長に挨拶に行ってみよう。
2.武道場から見に行ってみるか…
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~あとがき~
というわけで始まりました"凍結学園"。
ヒロイン一人目と、ナビ役の登場です。
正直まだ面白くなってませんが、
伏線はバリバリ張りまくってますのでご期待あれ、です。
今回攻略するのは彼女、束 命さんです。
生徒会長で苦労人気質の彼女をよろしくお願いします。
毎日19時に更新したいですが、予定時刻から遅れたり、
予告なく隔日更新になるやもしれませんので、なにとぞ宜しくです。
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