<シーフードカレーの秘密>それはSea風なのか〜女子高生達の考察〜
実際にあった会話を膨らませた作品です。作者は地図を上下左右で表現してしまう人間です。メルカトール。
偏差値が可愛いとらしいという表現を使用していますが、揶揄する意図は一切ありません。苦手な方はお手数ですがブラウザバックをお願い致します。
日本の何処かにあるっぽいリーブリヒ学園は可愛らしい偏差値の女子高校である。
どんな風に可愛らしいかと言うと、入試の数学と英語は三択のマークシート、分からない問題は塗りさえすれば1/3の確率で、国語は最近読んだ本の紹介と感想文で、事前に読書感想文の下書きをしておけばそれなりに点数が取れる。更に親子で受ける面接の配点が試験全体の50%で、親への質問も多く面接の基本を抑えておけば安心といった風に可愛い。
要は、学校の規則は守るから興味の無い勉強に力を入れず無理なく高卒の資格を取りたいという、可愛らしいお嬢様達の学校だったりする。
中間、期末試験で赤点を取った場合、全く同じ問題の追試を受け、それでもダメなら読書感想文、解き方と答え付きの問題プリント、といった提出物の救済がある。
因みに試験の時点で、解答プリントの裏に『知っている作家の名前を書けるだけ書け』『知っている数学者の名前を書けるだけ書け』『行った事のある地方と感想を書け』『知っているレシピを詳しく書け』『歴史的事件の語呂合わせを書け』『実験器具の図と名前を書け』と言った、赤点回避の為の救済書き込みスペースが設けられている位可愛いかったりもする。
放課後。自称帰宅部の仲良し四人組が教室の後で紙パック飲料を飲みつつ、休日の予定をたてている。
「お昼は?お昼はどうする?」
「ファミレスかなぁ」
「パンケーキ食べ放題っていうのがあったよ」
「パンケーキは思ったより入らないよね、実際」
「あ、新しくオープンしたカフェの割引券付きのチラシがあるよ」
「あー、色々載ってる」
「お勧めはシェフの気まぐれパエリアと、シーフードカレー」
割引券が付いてたから、いっぱい貰って来ちゃった。と、分厚い束で取り出す茶髪ボブの可愛らしい女子高生。
「取ってきすぎー」
「宣伝になるからいいじゃん。一人一枚だからね、割引券」
「いつもみたいに生徒会室に置いとけば」
「こないだ、パンカフェのトッピング券貰ったよ、生徒会室で」
「でもさでもさ、残り置いといて、美味しかったからまた欲しいってなった時、無くなってたらやじゃない?」
「だいじょーぶだって。オープンしたばっかなら店にあるって」
盛り上がる中、チラシを表裏とめくっていた黒髪ショートの可愛らしい女子高生が眉を顰めた。
「あのさあ、ずっと謎だったんだけど」
「なになに?」
「どしたの?」
「シー風っていうのはわかるんだ。ドって何?」
「は?」
「え?どゆこと?」
「シーフーって?」
「だからさ、シー風」
「だからシーフーって?」
「シー風だよ、シー風。知らないの?シー風」
「シーフー???」
「知ってるよ、シーフード」
「だからそのド、シー風のド」
「どはドーナツのど?」
「れはレモンのれ」
「みはミカンのみ」
「ファはファランクスのファ」
「なんでそこで、古代の密集陣形よ」
「話がつながる二人もどうよ」
「どうよの、どー」
「そうじゃなくて、シー風のドって何?」
「シーフーのド???」
「シーフーのドじゃなくて、シーフードだけど?」
「だからシー風ド、でしょう?」
シー風黒髪ショートが、何でわからないかなー?という顔をしているが、残りの三人である茶髪ボブ、茶髪ポニテ、纏め黒髪簪は首を傾げた。コイツハナニヲイッテルンダ???
「ド、よ。ド。ドーナツのド、じゃなくて、シー風のド」
「ええと、ちょっと何言ってるかわかんないだけど」
「しいふうのど」
「シーフードのド」
「そうそう、シー風の後のド」
「えー。シーフーの後?」
「ちょっと待って、わかった気がする」
纏め黒髪簪に視線が集中した。
「もしかして、シーフーってこう書くと思ってる?」
【 シー風 】
「え、それでもいいけどこうでしょ」
【 Sea風 】
「何でだっ!」
「何でそうなった!」
「だって、エビとか海のやつ入ってるじゃん、Sea風!」
「だったら何でカタカナなのよっ⁉︎ 」
「日本人だからでしょー!」
「日本なら何でもカタカナかっ⁉︎ 」
「外来語ならカタカナでしょー!」
「外来語とかカッコよく言っても間違ってるからねっ!」
黒髪ショートはやれやれとばかりに態とらしくため息をついて手を広げた。おうまいごっど。
「シー風ドカレーのカレーはカレーのカレーでしょ」
「何その、カレーのカレーはカレーって」
「華麗すぎるカレー」
【 Sea(海)風 ド←これがなぞ カレー(料理名 インドのやつ)】
「謎くらい漢字で書けよー」
「書ける訳無いじゃん、そんな難しい字」
「インドのやつも酷いわー」
「Seaが書けるのは偉いと思う」
「海ってオーシャンじゃないの?」
「シーハーハーっていうの呪文みたいに覚えてるー」
「ヒーヒズヒム」
「ゼイゼアゼイ?」
「ゼム?」
「誰か知らない?シー風のドの意味」
「ドって、フランスっぽくない?」
「何とかド何とか」
「シャルル・ド・ゴール」
「シャルルのゴール?サッカー?」
「シャルルがゴールに突っ込むんじゃない?」
「それだとゴールもフランス語じゃないとおかしいじゃん。ゴールって英語じゃないの?」
「ジャンヌ・ド・ラ・モット・バロワ」
【 ジャンヌ・ド・ラ・モット・バロワ 】
「知ってる知ってる。漫画で読んだ。首飾りで死ぬやつ」
【 ジャンヌ(名前)ド(フランスのやつ)ラ←NEW!(一文字だから多分ドの友達)モット←新たなるなぞ バロワ(多分名字)】
「書いてみた」
「じゃあシー風だと?」
【 Sea風(海っぽい)ド(フランスのやつ)カレー(インドのやつ)ラはお休み中? 】
「ちょっと待って、カレーってフランスの街があるよ」
「何でそんなお洒落な事知ってんの?」
「上野の美術館あるじゃん、学生無料だから暇になると行くんだけどさ、カレーの市民っていう像がぶっ立ってるの」
「雑学っぽい感じー」
「じゃあ、私の知りたいシー風のドはフランスのドでカレーはフランスの料理って事?」
「違うし」
「どうしてそうなった」
「だって、ド・カレーなんでしょ?」
「フードだよ、フード、シーフード」
「だから、風とドでしょ?」
「そこで切んなってば」
【 シーフード 】
「これで一区切り。海のフード。海の飯」
「へ?」
「シーフードで一つの単語。書けないけど」
「書けよー、それくらい書いてよー」
「じゃあ書いてよー」
「書けたら書いてるよー」
「シー風の人、シーとフード繋げて書いてみて」
「いいけど、ほんとに?騙してない?あ、待って、あった気がして来た」
【 Sea Food seafood Seafood 】
「ごめん、あったわ。勘違いしてたわ。書いたら思い出したよ」
「だよね?」
「自信満々にシー風連呼されたから、本当にあるのかと思いかけてたー」
頷き合う四人。
「でもさ、ドがフランスだと面白くない?」
「どこが?」
「国際的で」
【 Sea (アメリカ)風(日本)ド(フランス)カレー(インド) 】
「ねえねえ、オーシャンは?オーシャン」
「マリーンっていうのもあるよね。シー風の人分かる?」
「誰がシー風だ。狭い海がseaで大きな海がocean。マリーンは海の何々って感じかな」
「海は全部おっきいけど?ちっさい海って何?」
「入江みたいに囲まれてたり、大きな湖がシーだったかな。イギリスに近いカリブ海とかカスピ海とかがシー。アメリカの左が太平洋で右が大西洋で、オーシャン。書けないけど」
「そういう雑学知ってるのに、何で書けないかなー」
「デスクもチェアも書けませんが?catとdogなら書ける」
「それダメなやつ」
「それより、地理を右と左で説明する方がヤバい」
「えー、結構みんな使ってるでしょ。右がアメリカで左がイギリス。上がロシアの右に伸びてるとこ」
「使う使う」
「で、結局これで良いわけ?」
【 Sea (イギリス)風(日本)ド(フランス)カレー(インド) 】
「ちょっと待って、インドのカレーはカリーじゃない?」
「えええ⁉︎ 」
「待って、そうかも⁉︎ 」
「古い小説で使ってなかったけ?カリー」
「インドのシー風は?インドのシー風は何が入ってるの?インドのカレーって豆とか入ってるよね⁉︎ 」
「え?インド人って牛食べないから野菜のカレーをナンで食べてるんじゃないの?」
「ナンってタンドール窯がないと作れないからナン屋で買う物で、普段は家で作ったチャパティを食べるって、駅前のインドカレー屋のインド人の人が言ってたよ?」
「あそこのインド人の人って、インド人じゃない説もある」
「何で?」
「ナンじゃなくてチャパティ」
「そこじゃなくて、インド人じゃない方」
「あ、何か、インド人の人もいるけど、ネパールの人もいるとか」
「インドカレー屋ってネパール人多いって言うよね」
「インドカレー屋の店員がネパール人で、日本人向けにしたネパールのインド風のカレーを出してるって聞いた事ある」
「何そのカオス」
「チャパティって何?」
「ナンは強力粉でチャパティは全粒粉」
話は脱線を繰り返して続いていく……。