乱暴
更新します。
なお今回は最初だけ琉人の目線で、
残りは須郷の目線となります。
セバスチャンと一葉から得られた情報を統合してみるに、どうやら須郷お気に入りの少女たちは三階建ての領主の館の三階奥の部屋――監禁部屋に押し込まれているらしい。
だが、救出すべき人員は少女たちだけではない。どさくさ紛れに連れ去られて兵士たちの慰み者にされている女性たち――彼女たちは館の中ではなく、館に併設されている兵舎の中に監禁されているとの話だった。
つまり今回成すべきことは、監禁部屋と兵舎の両方に侵入して女性たちを救出すること。
しかし、その間に須郷やその妻である勇者たちの横槍が入ると面倒。そこで女性たちを救出するまでの間、須郷や他の勇者たちを押さえておく必要もある。
そこで考え付いたのが、一番厄介な須郷を一端館から引き離すという作戦。
要するに須郷の天職とスキルは確かに脅威だが、逆を言えば須郷さえ屋敷から引き離してしまえば、残る彼の妻である他の勇者たちと一般兵卒のみ。大した脅威ではなく、制圧は十分可能というワケだ。
だが、須郷の性格を鑑みるに、小火が出た程度では勿論、一般市民が反乱を起こした程度の騒ぎでも、自ら館を出てくることはないだろう。
となると、ヤツを館から引き摺り出すためには――
◇
天藤から領主代行を依頼された時、最初に思ったのは「楽そうだな」だった。
だって領主代行なんて、見張り番みたいなモンだろ?
そんでもって一応は領主だから、領民相手に偉そうにしても誰も文句を言わない。寧ろ領主だからこそ、領民を玩具みたいに弄ぶことだってできる立場にあるってことだ。
だから俺の望み通りに何だって出来ると思っていた。それなのに、思い通りにいかないことが意外と多くて、俺は最近少し苛立ち気味になっていた。
「おいおい、税収が少し落ち込んでいるじゃねえか! 税金をこれまでの三倍にしたのに、どうして落ち込むんだよ!」
部下が持ってきた今週の収支報告書を見るなり、俺は激怒してその報告書を部下に叩きつけてやった。すると部下は今にも泣きそうな情けない顔で何度も頭を下げてくる。
「……も、申し訳ありません! ですが、納税額が厳しすぎると言って、土地を捨てて逃げ出す者が後を絶たず――」
「言い訳は聞きたくねえんだよ! 大体、そんな根性無しは処刑すればいいだろ! この俺様が治める土地に、俺様の命令に背いて逃げ出すような軟弱者は要らねえんだよ! 見せしめに一族郎党皆殺しだ! そうすれば、領民共ももう逃げようなんて考えねえだろ!」
「……はっ、はい」
弱々しく頷いて退出しようとする部下。
「おっと、でも可愛い女のガキは殺すんじゃねえぞ。俺様の玩具にするからな。もし間違って殺してみろ? その時は……てめえも見せしめに公開処刑だ」
「――ひっ! どうかお許しを!」
「許して欲しけりゃ、さっさと行って俺様の命令を実行しやがれ!」
「はっ、はいぃぃぃっ!」
ちょっと凄んでみれば、まるで鞭打たれた馬車馬の鳴き声みたいな汚い声を撒き散らしながら、ソイツは青褪めた顔で出て行った。
目障りなヤツが居なくなったことで、部屋には漸く静寂が返ってくる。
落ち着いたところで、怒鳴り過ぎたせいか喉が渇いていることに気が付いた。
俺は机の上に置いてある呼び鈴を軽く二回鳴らす。しかし、誰も来ない。
苛立った俺は、より強く呼び鈴を二回鳴らすと、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
「お、お待たせ致しました、領主様」
ノックとともに開け放たれたドアから現れたのは、布地の少ない特注の給仕服に身を包んだ十五歳くらいの少女。大蔵を殺した日に俺が遊んでいた、あのガキだ。確か名前は――
「フラン、てめえ遅えよ! 俺様が呼んだらすぐに来い!」
「――ひっ! ご、ごめんなさいごめんなさい……」
俺が少々語気を強めただけで、このガキ――フランはすぐに体を大きく跳ねさせると、青褪めた表情でおどおどし始める。この反応、まるで俺がイジメているみたいじゃねえか。
「まあ、いいや。喉が渇いた。さっさと紅茶を用意しろ」
「はっ、はい! ただいま」
そう言って、フランはこの領主専用執務室に備え付けられた給仕場で紅茶の用意を始める。五分ほど経った頃、漸くフランは両手で後生大事にティーカップを持って帰ってきた。
「お、お待たせ致しました……紅茶で――」
執務机の上に紅茶を置こうとした瞬間、フランは足を縺れさせて転倒。あろうことかこの俺様のズボンに紅茶をぶちまけやがった。
「――熱っ!」
「あああ……ご、ごめんなさいごめんなさい! すぐに拭きま――」
「そんな悠長なことしてたら火傷しちまうだろうが! バカか、てめえ!」
そう怒鳴り散らすと、俺はすぐさま紅茶をかけられてびしょびしょになったズボンを脱ぎ捨てる。おっと、ズボンだけじゃなくて下着まで濡れている。こいつも脱がねえとな。
かくして、下半身が丸出しになった俺だが、ふと見ればブツが反応しているではないか。
そして目の前には、煽情的な服装に身を包んだ、中身はてんでダメだが外見だけは一級品に可愛いガキ。こうなればもう、やることは決まっている。
「おい、何をぼさっと突っ立ってんだ?」
「はっ、はい! すぐに新しいお召し物を――」
「おいおい、何言ってんだ? 違えだろ!」
嗜虐的な笑みを浮かべた俺は、フランにじりじりとにじり寄っていく。
そして来客応対用のソファまで追い詰めると、そのまま乱暴に押し倒した。
「見ろよ、俺様の立派なコイツを。お前の今なすべきことは、こいつを落ち着かせることだろうが♡」
「いっ、いや……嫌です……やめて……」
「おいおい、大いに宜しくヤッタ仲じゃねえか。何を今更、生娘みたいな反応してんだ?」
「――いっ、いやあああああああああああああっ!」
執務室にフランの悲痛な叫び声が木霊する。そうそう、この反応だ! この反応を待っていた! 数年前、俺が誘ってやっているのに靡かない女がいたから、ソイツを強引に傷物にした。 その時にもこんな風に高揚感を感じて、これまでにないくらい気分が良かった。
けど、脅迫とか証拠隠滅とか色々めんどく臭かったから、その一回以降は嫌厭していた。しかし、領主であり勇者であるこの世界の俺なら、そんなことを気にする必要がない。ここでは俺が法であり、俺がルールなのだ! だからこそ、俺の嗜虐心を大いに刺激するこの反応を、幾らでも堪能することが出来る。
「ふっ……ふふふ……フハハハハハハハッ!」
愉悦に浸り切った俺は豪快な高笑いを上げながら、気が済むまでフランを貪り食った。
◇
「ふぅ……良かったぜ。そうだ、これからはミスする度に一発ってことにするか。そうすればお前も、緊張感持って仕事するだろ?」
事を終えた俺が画期的な提案をしても、フランはみっともなくメソメソと泣くだけ。
「おいおい、もう少し嬉しそうな反応を見せろよ。あのガキどもの中で唯一この俺様が召し抱えてやったのに仕事がまるで出来ないお前のために、俺様が知恵を絞ってんだぜ?」
あんまりにも泣くもので、ついイライラした俺はフランの桜色の髪を強引に掴んで凄む。するとフランは、青褪めた顔で目に涙を溜めたまま、弱々しく首肯して答えた。
「よし、いい子だ。ご褒美にもう一発――」
意気揚々と第二ラウンドへ突入しようかと思ったまさにそのタイミングで、けたたましくドアがノックされる。無視しようかとも思ったが、流石にノックが止む気配がない以上は仕方ない。
「ああ、もう! 何だよこんな時に! 今取り込み中だ。後にし――」
「それが一大事なのです! 故にどうか、平にお許しを!」
ドアの向こうにいるこの男の慌てよう、尋常ではない。それに俺様の命に背けばどうなるか分かっている筈なのにこの対応、どうやら本当に何か大ごとが起きたらしい。
「一大事ぃ~? 何だってんだ?」
「そっ、それが……それがこのエルドに、魔獣が侵攻して来たらしいのです!」
「ふ~ん……って、何ぃ?」
突然の報告に流石の俺も度肝を抜かれてしまった。
魔獣制圧区域からこのエルドは、それなりに距離がある。それなのにこのエルドに突然魔獣が出現だと? 一体どうなって――いや、今はそんなことを考えている場合じゃない!
兵士では魔獣の相手など出来ないし、妻たちは誰も魔獣に対抗できる天職やスキルなど持ち合わせていない。行かせても大ケガするか、最悪殺されるだけだ。
だが、放置する訳にはいかない。もしこのまま放置して甚大な被害を出せば、流石に天藤の耳に入って面倒なことになるだろう。最悪この領主代行の地位を剥奪されるかも知れん。
折角ここまでの環境を作り上げたんだ。そんなのはまっぴら御免だ!
「分かった。仕方ねえから俺が直々に行ってやる。兵士たちに戦闘準備をさせろ。そして、俺の武器と防具も用意させろ!」
「はっ! 直ちに!」
活きのいい返事が聞こえてきたのを最後に、ドアの向こうがで足音が響く。
正直面倒だが、まあ仕方ねえ! この俺様の領土に土足で踏み込んできたんだ。きっちり落とし前を付けさせて貰う。魔獣め、待っていろ。ぶっ殺してやるからよぉ!
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