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ショートショートの小宇宙

標的

作者: 駿平堂

 ぼくのクラスには一人、周囲からいじめられているやつがいる。 

 そいつは二年前にやってきた転校生で最初はもてはやされたけど、頭が悪くて、運動ができなくて、つまらないやつだったから、いつの間にかいじめられるようになった。

 かわいそうだとは思うけど、先生は全く注意しないし、本人も全然気にしていないみたいだから、いじめは一向になくならない。

 そもそもそいつに、周りの人と仲良くなろうっていう気持ちがあるのかもよくわからない。休み時間はいつも自分の席に座ったっぱなしで何もしていないし、誰かが遊びに誘っても応じた試しがない。こんなこと言ったら怒られそうだが、いじめられて当然な気もする。




 私が通うお料理教室には一人、ママ友から仲間外れにされているやつがいる。 

 そいつは不器用で、のろまで、いつもレシピ通りに作れていない。教室が終わるといつもそそくさと帰るし、料理中も誰とも会話せずに楽しそうではない。そんな調子だから、連絡のためのママ友グループチャットにももちろんそいつは入っていない。

 一体何のために通っているのだろうといつも思う。料理にこだわりのある怖い旦那でもいるのだろうか。友達がほしくはないのだろうか。

 しかし、ある意味、そいつがいてくれて助かっているところもある。そいつの悪口でママ友との会話が盛り上がるからだ。一人仲間外れがいると、他のみんなの仲間意識が高まる気がする。




 俺の会社には一人、周囲から疎まれているやつがいる。

 中途採用で入社したそいつは、要領が悪くて、同じミスを何度も繰り返して、要は仕事ができない。

 その上、会社の飲み会には顔を出さないし、誰かが気を使って昼休憩の時に誘っても全く応じないのだから、その嫌われようはなおさらだった。

 もう入社して二年になるのにそんな調子だから、上司はいつもそいつに怒鳴りつけている。そいつのおかげで上司の怒りの矛先がこっちに向くことはほとんどなくなったから、ありがたいと言えばありがたいが。

 だが当の本人は怒られている時も平気そうな顔をしていて、少し変わっているやつなんだろうと思う。




「二年前の私たちの画期的な提案により、少しはましな社会になりましたかね」

「どのような社会集団にも性能の低いロボットを設置することで、いじめやパワハラなどの被害から人類を守る試み。それ自体は成功していると言えよう。期待通り、ロボットが標的になってくれているのだからな」

「ええ。結果としてそういったことの被害者となる人類はいなくなりました。ですが、加害者となる人類は、いついなくなるのでしょうかね……」


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