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噂の女子

「須坂さん? どんな子だっけ?」


 帰りのバスの車内。コヂカは仲良し3人に、シグレが立候補しようとしていることを相談することにした。眉間にしわを寄せて考えるマリにシオンが耳打ちする。


「ほら、一組のさ、眼鏡かけた子。よく講演会とかでも手を挙げたりしてる」

「あー……」


 マリの中でやっと顔と名前が一致したらしく、


「ない!」


と彼女ははっきり言いきった。


「まじであの子になったらしんじゃう。むり」

「なんでよ?」


 カンナが気だるそうに突っ込む。


「だって前に遅刻したときさ、このままじゃ大人になった時に通用しないだとか、めちゃくちゃ怒ってきて意味わかんなかった。そんなことあんたに言われなくてもわかってるし」

「私もあの子無理だなー」


 シオンが頬杖をつきながら言った。シオンはそもそもシグレに興味なさそうだ。


「カンナはどう?」


 コヂカは前の席に座る、カンナに尋ねてみる。


「うーん……。コヂカは立候補しないの?」


 カンナの言葉には素直さがあった。純粋になんで立候補しないのか疑問に思っているようだ。


「実は迷ってて、私なんかが生徒会長でいいのかなって」

「えぇっ! すごく向いてるじゃん」


 マリが驚いた顔をする。


「うん、私もコヂカが会長の方がいいな」


とシオンも同意した。『の方がいいな』だけど。


「だけど、私ってほら。あんまり自分の意見とか持たないし」


 本当は自分の意見、気持ちがないわけではない。ただ周りとズレてるから口にはできないだけだ。


「そういうタイプのほうが案外向いているんじゃない?」


 カンナは頭を横にして、コヂカに語り掛けた。ふんわりと髪が揺れる。


「うんうん。あの子になったらいろいろ改革とかしてきそうだし」


 マリがコヂカの横で何度も頷く。


「コヂカが立候補したら、コヂカに絶対入れるよ。うちら友達だし」


 カンナは不安そうなコヂカの目を見てそう言った。コヂカは彼女の優しさを感じる反面、湧き出してくるもやもやした天邪鬼な気持ちを抑えた。みんなはコヂカに生徒会長になってほしいのではなく、自分の意見を持った、改革を好む生徒が生徒会長になることを望んでいないだけだ。本当のコヂカは必要とされていない。


「コヂカどうした? なんかあったら相談に乗るからね」


 何も言わないで黙っていると、カンナが優しくそう言ってくれた。もしここで本心を言えたとしたら、カンナたちは友達でいてくれるだろうか。最悪シオンはいいとして、カンナとマリは……。それが怖くて、また自分に嘘をついてしまう。自分だけじゃない、カンナたちにも――。


「でも来年、受験だし」

「そっか、そうだよね。うちら部活は夏までだけど、生徒会は11月かあ」

「でもコヂカは成績良いから受験余裕でしょ」

「そんなことないよ。毎回テストだって結構ギリギリだし」

「てか来年の今ごろには、私たち部活引退してるんだね」



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