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バン、と大きな音を響かせて開かれた扉の先にいた人物を見て、私は目を疑った。
「さくらぁっ! こんなところにいたんだな」
怒鳴り声を上げて乗り込んできたのは、紛れもなく祐一だった。
髪の毛はボサボサで、いつもより髭が伸びている。あの日、家の中がぐちゃぐちゃになっていた日、私は彼を置いて家を出た。家に帰ってから祐一は私の頬や太腿を精一杯殴りつけてから、泣いて謝った。
どこまでいっても彼は彼で。
変わらない愛情を私に向け、今もこうして私を迎えに来たんだ——。
「ほら、帰るぞ!!」
祐一は私の髪の毛をひっつかみ、そのまま引きずるようにして私を部屋から出そうとした。「痛いからやめてよ」と叫んでも聞かない。部屋の中で呆然とこちらを見るつばさの目が、大きく見開かれた彼女の瞳が、絶望の淵に沈んだかのように黒く染まって見えた。
髪の毛は何本、いや何百本と抜けたんだろうか。あれから増えた身体中の痣が、私を彼の元から離すまいと主張している。
祐一に家に引きずり戻されてから、私は軟禁生活を送っていた。もちろん仕事を休まざるを得なくなって、しばらくして仕事を辞めた。
経済的に祐一を頼るしかなくなり、完全に彼の言いなりになっていた。
「じゃあさくらちゃん、今日も俺仕事行ってくるから、また夜にね。くれぐれも家から出ちゃダメだよ」
「うん、分かってる。行ってらっしゃい」
もう私はとっくに壊れていた。経済的にも心も彼に依存しきっているから。彼がいないと、私は生きていけない。普通に考えれば異常なのに、自分の中では自然にそう思っていた。
「はあ……」
それでも時々夜になると我に返って考えてしまう。
私と別れた時のつばさの目が、脳裏に浮かんでは泡のように消えていく。
つばさとはあの日以来会っていない。家を出られないからという理由もある。でもそれ以上に、感情的になっていたとはいえ、ひどいことを言ってしまったことで彼女に会わせる顔がないと思っていたのだ。
つばさ。
そう言えば私は、彼女の連絡先を知らない。彼女とは会って話をするだけの関係だった。ううん、会って話すだけで十分だった。
つばさに、会いたいと思う。
私には、ここから羽ばたくための翼が必要なのだ。




