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アラサーだって、翼  作者: 橘皐月
第四話 翼、ひろげて
19/31

4-1

今日もまた、右腕にあざが一つ増えた。

スマートフォンの内蔵機器をつくる工場で働いている私にとって、こんなあざは作業着を着ればさっと隠せてしまう。むしろ、隠せる箇所にしかやつは傷をつけないのだから、心配する必要はないのだ。


「姫野、次の作業任せたわ」


「分かりました」


大学を卒業してすぐの頃は本社の内勤だった。あの頃は、先の未来に不安と期待が半分ずつで、でもやっぱり期待の方が大きくて——とにかく毎日目の前のことをこなすのに必死。


新社会人として、一刻も早く仕事を覚えたかったし、先輩たちに信頼されたかった。

仕事をしていると大量のアドレナリンが放出されて、今までに味わったことのないような高揚感に包まれた。

私って、仕事が好きなんだ。

就活生の頃、電車で疲れた顔したサラリーマンたちを見ていると未来に不安を感じていた。だが実際自分が働きだしてみると案外楽しくて仕事後の飲み会や休日の付き合いも苦にならない。

一生このままでいい。

そう本気で思っていたのに。


周りの同期が次々と結婚、出産で仕事を辞めていく中で私はいやでも自分の人生について考えさせられたのだ。

私は仕事が生きがい。

仕事と結婚するんだ。

ばかみたいに意気込んでいた社会人の始まりから状況は一変。

深刻な人手不足のために本社内勤から工場のライン作業に配置されてはや4年。私は今年32歳になる。正直最初は営業部でどんどん昇進していく男の子の同期たちが羨ましくて、工場の仕事がいやでいやで仕方がなかった。けれど、年齢を重ねるにつれて、「こんなもんでいいかな」と思うように。

だって、もう結婚して退社していても良い歳だし。

産休で休んでいても不思議じゃない歳だし。

女のキャリアとしては上出来なんじゃない?

はやく身を落ち着かせて、ぼちぼちパートでもして生きていきたい。

それでいいのだ。だってほら、大多数の女の人って、家庭生活での幸せを夢見てるもんじゃないの?


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