39話 人狼さん、初の依頼報告
えーっと、『画策』って、あんまりいい意味じゃないよね? 裏で色々計画するって意味じゃなかったっけ?
目の前でにこりと優しく微笑むニコラを見ながら、若干引き気味になる。
この人味方だと頼もしそうだけど、敵だとなんだか怖そうだよね……。
きっと、上手に冒険者を手のひらで転がしてるんだろうなぁ。味方になって貰えて良かったよ、うん。
「まさか、こんなに早くクロウさんが活躍することになるとは思っていませんでした。私としては徐々に誤解を解いていこうと思っていたんですけどね」
ニコラにそう言われて、私も頷く。
「俺も予想外だったな。ここに来るまでの間だけでも、随分と街の住人の雰囲気が変わっていて驚いている」
いや、本当。
今朝まで目を逸らされるのが普通だったから、肯定的な視線や噂に驚きだよ。
「それはそうでしょう。ここでは街を守る騎士団や冒険者は一目置かれてますし。それに、今回の被害が少ないのは黒狼の活躍があったからだと話が流れてますからね。街の住人も好意的にならざるを得ないでしょう」
おお、やっぱり好感度が上がってるんだね。
あの冒険者の人もそう言ってたし、どうやら間違いなさそうだ。
はっちゃけて狩りしてお説教を喰らったけど、結果良しで済んだみたいだね。良かった、良かった。
「これからは、クロウさんを嫌厭する住人は表立って出てこなくなると思います。心置きなく街に滞在してもらって大丈夫ですよ。人探しも頑張って下さい」
「ああ。ありがとう」
励ますように言われ、礼を返す。
そういえば、人探しで街に来た設定になってるんだっけ。
一応、探し人のヒナは見つけたんだけど……次はどうやって接触しよう。
折角対面できたのに、獣化を解くのを忘れるとか抜け過ぎだ。せめて人の姿を見てもらえていれば、次に会った時でも声をかけやすかったのに。
それに、名乗る前に意識を失われるとは誰も思わないよね。落ち着いたら話を聞いてもらおうと思っていたから予想外だったよ。
まあ、次は上手くやれるように頑張ろう。
依頼された薬草を渡しながら、ついでに扱い方も聞く。
どうやら私でも簡単に扱えそうだ。これならルカでも問題無さそう。
「こんなに沢山ありがとうございます。これだけあれば、しばらくは大丈夫だと思います」
にこにこ顔の彼女から、依頼報酬より多めの報酬を手渡される。
おぉ! 何気に初の依頼報酬じゃない? でも、何で多いのかな?
首を傾げると、ニコラが説明してくれる。
「これは、ギルドからの依頼分も上乗せされてます。受けてもらえて本当に助かりました」
「いや、こちらも世話になっているからな。何かあればこれからも声をかけてくれ」
そうか。ニコラに勧められた依頼だと軽く考えていたけど、ギルドから頼まれた扱いなんだね。その分報酬が上がってるのか。
まぁ、利害が一致した依頼だったから気にしてなかったんだけど、貰えるものは貰っておこう。
「そう言っていただけると助かります。あ、ルカさん達の分はちゃんとよけてますか?」
「大丈夫だ。別に保管してある」
「それなら良かったです。この薬草は、薬師に調合してもらえるともっと効果が高まりますが、お茶で飲むだけでもそれなりの効果は出ます。余裕があれば薬師に調合してもらえるといいんですが、調合代が高いんですよね……」
へえ、調合代って高いのか。
それだとルカが受け取ってくれ無さそう。
「飲むだけでも効果が出るなら、それでいいか」
「そうですね。しばらく飲み続けていれば疲労もとれて起きあがれると思いますよ」
よし。お金のかからない方にしよう。
足りなかったら、また採ってくればいいしもんね。うん。
「話は聞いたよ。凄いじゃないか」
「お兄ちゃんやっぱり強いんだね!!」
「怪我は無かったんですか?」
いつものように屋台へ顔を出すと、興奮気味に運転手さんとルカ達に出迎えられる。
「え?」
何の事かと思わず聞き返すと、にこにこと運転手さんが説明してくれる。
「今日のオーク討伐だよ。ほとんどクロウくん一人で片付けたんだって? 街の中はその話で持ち切りだよ」
まさか運転手さん達にまで伝わってるとは。
オーク襲撃の城門から離れた地区だからと油断してたけど、街中で持ち切りだと……? マジか。
この街、噂が流れるのが早くないかな。
もしくはこれが普通なのか? ちょっと基準が分からないよね。
運転手さんの嬉しそうな顔を直視できず、視線をずらす。
ルカとリリーを見ると、何やら目をキラキラさせてこちらを見上げてきていた。
うわぁ、何か居た堪れない。
街の心配はしたけど、そんな目で見つめられるほどの事は正直してないんだよ、私。
つい、調子に乗って暴れちゃっただけなんだ……。
「そんなに噂になってるのか?」
ルカ達の期待に溢れた目を見ては、本当の事は話せないよね。子供の夢を壊すのはいただけない。
なので、戦いの内容に触れない方向へ話を振ってみる。これなら無駄に騒がれなくて済むだろう。
「そうだね。君は目立つから、噂が流れるのが早いんだよ。黒狼っていうのかい? 有名人だからね、クロウくんは」
「は?」
え? 有名なの? 私。
そういえば防具屋の前で会ったミナちゃんも、この屋台地区で再度会った時には私の事を知ってたよね。
あれも今思えば、伝わるのが早いし詳しすぎたかも。
「でもこれで、君に否定的な人達も静かになるだろうね。なんたって、街をオークの群れから救った英雄だからね」
「なんだそれ?!」
英雄?! なにそれ、恥ずかしい!
そりゃ、街は結果的には守ったよ? 死人の被害も少なくすんだらしいよね。でも、そんな偉そうな肩書は勘弁してください。いや、本当。
「すごいよね、お兄ちゃん。みんなお兄ちゃんが街の英雄だっていってたよ。すごいかっこいい!」
「うん、本当にカッコいいよね、リリー。お母さんにもお兄ちゃんの自慢をしないとね!」
「ね!」
「っ……」
頬を上気させて嬉しそうに笑い合う二人を見ると、何も言えなくなる。
マジか。運転手さんが勝手に言ってるんじゃなくて、街中で英雄とか言われてるの? うそん。
でも、そんな楽しそうな顔をされたら、私の口からは否定とか無理だ。子供に悲しい顔とかさせたくないし、見たくないよね。
この子達が喜ぶなら、恥ずかしがろうがカッコいいお兄さんで通してもいいような気がしてくる。
うん、この子達の夢を壊すのも忍びないし、否定はしないでおこう……。その代わり、胸張って自慢出来るお兄さんになるよ。
でも英雄かぁ。
正直、とっても恥ずかしいんですけど! どうしてこうなっちゃったのかな。
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