33話 人狼さん、中二病になる?
いやぁ、この外見で甘えるとか、ホント勘弁してください。
ビジュアル的に無理過ぎます。
でもニケの話っぷりからすると、私はかなり年下っぽいらしい。こうして頭を撫でてるぐらいには、ニケにとって違和感が無いようだ。
けど、イマイチ実感がわかないよね。
「そういえば、ニケはいくつなんだ?」
しゃがみ込んでいる為、私より目線が若干高いニケに聞いてみる。
この体のオリジナルと知り合いだから、最低でも百歳は超えてるんだっけ?
「僕は二百八十歳を迎えたところだニャ」ふふんと得意げに胸を張られる。
「へぇ……」
ヤバい。何でそんなに得意げなのか全然わからん。
二百八十歳って、幻獣の感覚だとどうなの。
あれかな、こう見えても俺も結構な大人なんだぜ! みたいな感覚かな。
兎に角、私の歳と比べたら雲泥の差だということだけは分かったよ。
この見た目で年上……。
くっ、可愛い。
「というわけで、遠慮なく頼るといいニャー」
「そうだな。困ったことがあったら頼らせてもらおうか」
内心悶えながらもそう返すと、嬉しそうに頷いてくる。
うん、そうだね。
せっかくなので、何かあったら頼りにさせてもらおうか。
取りあえず今は無事に元の場所に戻りたいかな。うん。
「ム。そうだニャ。頑張っているクロウに良いものをあげるニャ」
何かを思いついたように目をキラキラさせながら帽子を脱ぐと、それを逆さまにする。
そうして帽子の中に腕を入れそのまま引き上げると、現れたその手には一羽の山鳥が握られていた。
「?」
どうやら、帽子が収納アイテムになっているっぽい。
こういう収納アイテムもあるんだね。初めて見たよ。
「現世で獲ってきた山鳥ニャ。今晩の夕飯にしようと思っていたけど、クロウにあげるニャ。滋養のある美味しい鳥だから、これを食べて元気を出すといいニャ」
「え? いいのか?」
「もちろんだニャ。イヴァリースの我が儘に付き合ってもらっているお礼だニャ。これからも大変だろうけど、頑張って欲しいニャ」
これからも? え、まだ大変なこととかあるの?
それは勘弁してほしい。
でも、こうして励ましてもらうのって、結構嬉しいかも。
「ありがとう」
素直にそう言いながら、渡された山鳥を受けとる。
滋養があるという事は、ルカ達の母親に良さそう。運転手さんに胃に優しい料理を作ってもらおうか。
「折角この世界に来たんだから、出来るだけこの世界を嫌いにならないで欲しいニャ。ついでに僕と仲良くしてくれると嬉しいニャー」
「それは大丈夫だ。こちらこそよろしく頼む」
こんな可愛い生き物にそう言われたら、嫌いになれるわけ無い。
それに怖がられてはいるけど、交流して仲良くしてくれる人達もいるからね。この世界を嫌いになれるわけ無いよ。
それにニケは物知りっぽいし、むしろ私から仲良くして欲しいぐらいだ。
「そうかニャ。そう言ってもらえると安心だニャ」
むふん、と良い笑顔でニケが頷く。
そのまま貰った山鳥を腰の収納アイテムにいれようとすると、ニケが不思議そうに小首を傾げてきた。
「クロウは『影』を使わないのかニャ?」
「影?」何のことか分からず、オウム返しで聞き返す。
「そうニャ。黒狼の能力で、自分の影を操れる……もしかして、知らないかニャ?」
あっれー、それ、どこかで聞いたような……。
そうだ、最初に自分を鑑定した時に見たじゃん。
己の影を操るとかなんとか。
説明は中二病っぽくてカッコいいけど、使うとなると地味そうだってスルーしたよね、確か。
「そういえば、あったような……?」
「黒狼特有の能力ニャ。自分の影に物を収納したり、影を手足のように使える優れモノニャ」
「は? 何だそれ」
え? そんな便利な代物だったの?!
そんなことが出来るなら、エイダから収納アイテムを買わなくて済んだじゃん……。えぇ。
「やっぱり教える存在がいないと、こういう弊害が出るんだニャ。成程、勉強になったニャ」
うんうんと真面目な顔で頷いてくるニケ。
ああ、そうね。
影を操れない他の人狼じゃ、教えられないよね。むしろ彼らも忘れてそう。
そういうことはちゃんと言ってくれないかな、イヴァリースさん。いらない買い物しちゃったじゃないの。
足元を見下ろすが、夜のせいで自分の影が見えない。
それでも意識してみると、何か別の感覚があることに気づく。
んん? もしかしてこれが影を操るとかいう感覚?
うおぉぉ、中二病っぽいのキター。
私も闇の力とか解放しちゃうんですかね!
(動け)
試しにそう念じると、呼応するように足元の闇が騒めきだす。
そしてそのまま影が地面から現れた。
「?!」
足元から躍り出たのは、頑丈そうな黒い鎖。
そのゴツイ鎖が金属の音を立てながら右足を伝い、右手に巻き付いてくる。
ひょえぇ、何じゃこりゃ。
「クロウの影はユーシスと同じ鎖の形をとってるんだニャ。こうして見ると、中々のカッコ良さだニャ」
「これが影なのか? なんだか気持ち悪いぞ」
黒い蛇みたいじゃん。キモチワルイ。
鎖が絡みついている右手を振ってみるが、ジャラリと音を立てながら揺れるだけで、解ける気配は無い。
そんな私の姿を、ニケが不思議そうに眺める。
「そうかニャ? 黒い人の手が無数に湧くより、精神衛生上いいと思うニャ」
マジか!
もっと気持ち悪いのがいた!




