表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/41

20話 人狼さん、奢る

「よし、二人とも一緒に来い」


 そう言いながら立ち上がる。

 え? とまごついている少女と素直についてくる幼女を連れ、運転手さんのいる屋台へと向かう。

 私を怖がらずに相手をしてくれる屋台は、今の所そこだけだからしょうがないのだ。


 周辺の人々は巻き込まれたくないからなのか、こちらに声をかけてくる気配は無い。

 ちらちらと盗み見るような視線はあるけど、それだけだ。

 まぁ、あの土下座のシーンを見てしまえば誰でもそうなるか。私もドン引きだもん。

 これで更に人狼への溝は深まったね。うん。


「そういえば、名前を聞いていなかったな。俺はクロウ。君達の名前は?」


「あ、えっと、私はルカで、こっちの子は妹のリリーです」


「そうか。いい名前だな」


 そう返すと、心なしか嬉しそうな顔になる。

 その隣で、幼女……ではなく、リリーが興味津々な顔で私を仰ぎ見てきた。


「お兄ちゃんは、まちの外からきたの?」


「ん? そうだ。森にある人狼の里からやって来た。よろしくな」


 そう返すと、嬉しそうに頷きながら笑い返してくる。

 どうやら、私に対して警戒心は微塵もないらしい。

 対して姉のルカはというと、自分達がどうなるか心配なのだろう。若干不安そうな表情だ。歩きながら、妹の手をしっかり握りしめている。

 それでも大人しくついてきてくれるので、そのまま運転手さんの屋台へと連れて行く。


 屋台の傍まで行くと、心配そうにカウンターから身を乗り出していた運転手さんと目が合った。

 ここで漸く気づいたことが一つ。

 運転手さんだって、他の人達と同じくドン引きしてるんじゃない? 

 いくら人狼に偏見が無くても、土下座は別案件だよね。

 今更だけど、これで態度変えられちゃったら泣く。絶対泣く。


 内心ドキドキしながら、「子供が食べられそうな料理を頼む」と伝えてみる。

 その言葉にホッとしたような顔で運転手さんが頷き、屋台の中へと引っ込んだ。

 良かった。怖がられてないっぽい。本当に良かったよ……。


「台無しになった夕食の代わりだ。俺が奢るから気にせずに食べるといい」


 そう言いながら、誰も居ないベンチシートに二人を座らせる。

 あれ? これはもしかして、私のせいでお客さんが来ていないのでは……。

 若干不安になりつつも、都合が良いのでそのままスルーして私も一緒に座る。


「いいの?!」


 隣に座らせたリリーが目を輝かせて聞いてくるので、「勿論だ」と頷くと、満面の笑みを浮かべる。

 ううん、守りたいこの笑顔。

 私も妹が欲しかったなぁ。一人っ子だったから憧れるよ。


「お姉ちゃん、食べていいんだって!」


「でも、お金……」


「大丈夫だ。金の事は気にしないで食べていいぞ」


 喜ぶ妹とは反対に、姉のルカは未だに戸惑った顔のままなので、念を押してやる。

 子供なんだから、大人に遠慮しなくてもいいのに。

 まあ、そういう私も中身は未成年なんだけども。


「ここは人狼のお兄さんの顔を立ててあげなさい。はい、お好み焼き二つね」


 コメに馴染みが無いかもしれないから小麦粉のメニューにしたよと、ニコニコしながら皿を並べてくれる。

 おおっ、いい匂い! でも、量が少なくないかな?


「これで足りるのか?」


 あまりの少なさに驚いていると、「これが普通なんだけどね……」と運転手さんに苦笑される。

 そうなのか。

 どうやら人狼基準で見てたようだ。危ない危ない。

 

「……お兄さん、ありがとう」


 出された料理を見つめた後、ルナが顔を上げて礼を言ってくれるけど、その目がちょっと潤んでいるのは見なかったことにする。


「ああ。冷めないうちに食べるといい。ここのは美味いぞ」


 そう言いながら食べるように促すと、漸くフォークを持ち、口に運ぶ。

 一口食べると目を輝かせ、ルナが次々と頬張っていく。

 それを見たリリーも大きく口を開けて齧り付く。

 

「っ美味しい!」


 真ん丸な目で、驚いたように私にそう伝えてくれる。


「だろ? 俺も食べて同じことを言ったからな」


「本当に美味しいです。こんなの食べたこと無いです」


 賛同するように食べかけのお好み焼きを見ながら、ルカが呟く。

 良かった。

 運転手さんの料理は、こっちの人達にも問題無く受け入れられてるんだね。


 そう思いながら運転手さんを見ると、満足そうにルカ達を眺めている。

 そりゃあ、これだけ美味しいって言われたら、料理人冥利に尽きるよね。うんうん。

 私も《料理》の恩恵があることだし、余裕が出来たら料理に挑戦してみようかなぁ。

 喜んでもらえるのって、嬉しいもんね。

 

 そんな美味しそうに食べる子供達を、さり気なく観察してみる。

 ……二人とも、全体的に痩せぎみかな。明らかに服に余裕あり過ぎる気がする。

 これってやっぱり、食事の量が足りてないんだろうね。


 他にも、髪には櫛がきちんと入っていないようでボサボサだし、服も綺麗だとはお世辞でも言えない状態だ。

 多分、世話が行き届いていないんだろうな。

 この分だと、寝込んでいるという母親も大変な状態なんじゃないだろうか。

 この子達プラス、母親かぁ……。

 なんかもう、ここまで来たら最後まで面倒を見た方が後悔しなさそう。


(私に何が出来るかな)


 今の私で、この子達の面倒をどこまで見られるか考える。

 先ずはこの子達の食費を賄いながら、暮らしていけるだけの資金が私にあるかどうかだよね。

 正直、街に来たばかりだから、物価とかよく分かってないんだよね。

 私の所持金で間に合うのかな? うーん。


 そういえば、運転手さんのメニュー表に値段が書かれていたよね。

 あれを見た限りでは、思っていたよりこの街の食事は安いようだ。

 となると、食費はそんなに負担にならない金額と見て良さそう。


 人狼の食事事情を考えて予め里では稼いでおいたし、暫くは懐具合は大丈夫だと思われる。

 むしろ、私の食事の量と比べると、この子達の分はあるかないかの量だ。

 全然気にならないレベルと言ってもいいんじゃないかな。


 最悪、それでも足りなくなるようなら、自分で食料になる動物や魔物を狩ればいい。

 鑑定もあるし、私なら食べられる植物も簡単に見分けられるはず。

 それに忘れていたけど、一応冒険者になったんだよね。仕事の目途はついたんだった。


 んん? 何だ、余裕じゃない。

 これなら、子供二人ぐらい養えるね!

 






お読みいただきありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ