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18話 人狼さん、獣人姉妹と出会う

「いやぁ、人狼っていうのは、よく食べる種族なんだね……」


 完食し、満足気な私を見て運転手さんがしみじみと呟くので、「人狼は燃費が悪いんだ」と答えておく。

 実際、大食漢なので嘘ではない。

 人狼だと、若い女の子でも鳥の丸焼きぐらい、普通におやつ程度に食べてたし。


 多分、体を維持するのに必要なんだと思うんだよね。身体能力が他の人族より高いから、その分よく食べるんだと思う。

 そんな話をすると、そういうものなのかいと驚かれ、本気で食費を心配された。

 その気持ち、わかるわー。


「あの、すみません」


 そんなたわいないやり取りをしていると、遠慮したかような、か細い声が耳に届く。

 何事かと声の方向を向くと、ベンチシートの反対側に小さな女の子達が立っていた。

 十歳ぐらいの少女と、四歳ぐらいの幼女の二人。

 小さな籠を持った少女と、その子の服の裾を掴んた幼女が仲良く並んでいる。


 どちらも赤茶色の髪色と焦げ茶色の瞳で、一目で姉妹とわかる風貌だ。髪色と同じ獣耳と尻尾付きの亜人で、その外見から犬の獣人だとわかる。

 そして私は今、その幼女の方に、恐ろしいほどガン見されてる。何故だ。

 もしかしたら、同じ犬の獣人だとでも思われているのかも?


「ああ、いつものやつだね」


 運転手さんがそう言いながら、少女の籠に何やら小さな包みを入れる。

 それに少女と幼女が頭を下げて、そのまま離れて行った。


「今のは?」気になり、つい声をかける。


「うん、近所の子達でね、母親が病気で寝込んでいるんだよ。生活が成り立たなくて、ああやって捨てる野菜くずなんかを貰いに回っているんだ」


 憂い顔でそう答える運転手さんの視線はそのままだ。

 その視線を辿ると、隣の露店で邪険に追い払われている少女がいた。

 ええ?! そんな扱いしなくてもいいじゃない。


 ハラハラしながら見ていると、「捨てる分ぐらい、あげてもいいと思うんだけどねぇ……」と呟かれる。

 うん、私もそう思うよ。激しく賛同します。

 それでも、次の屋台では何か貰えたようだ。それを見て、ホッとしてしまう。


「噂ではどうやら父親が家に居ないらしいくてね。あんな小さい子供じゃ、仕事も無いしどうしたものか」


 そうため息をつきながら、下げた食器を洗い出す。

 ううん、街へ来た早々、暗い部分を目にしてしまった。お腹いっぱいになっている自分に罪悪感が生まれてしまう。

 運転手さんも、気にはしているけど他人の子供の世話までは無理だよね。毎日ただで食べさせるわけにいかないだろうし。

 出されたお茶を飲みながらそんなことを考えていると、きゃあ! という少女の悲鳴が聞こえ、慌てて視線を向ける。


 目に飛び込んできたのは通りに座り込む件の姉妹と、その二人の前に偉そうに佇む三人組の男達。

 どこからどう見ても、偶然ぶつかったとは思えない。空気も不穏だ。


「……!」


 思わず無言で立ち上がる。

 同時に、その中の男の一人が叫ぶ声が聞こえてきた。


「お前ら、まだここに来てるのか。物乞いの真似事して、見苦しいんだよ!」


 後ろ姿で男達の表情は見えないが、その声に怯えるように目をつぶり縮こまる姉妹を見て、腹の底がカッとなる。

 あんな小さい子達に吐く言葉じゃないよ。

 大の大人の男が数人で何をやっているのか。人として恥ずかしくないのかな!

 足音荒く、男達の元へと向かう。


「おい! 何をやっている」


 更に罵ろうとする男達に向かって叫ぶと、瞬時に振り向かれる。

 うわぁ、人相悪すぎぃ。

 日本でいうところの、ヤンキーってやつかな? それともチンピラ? ま、どっちも同じか。

 いいよいいよ、私が相手してあげる。

 里で鍛え上げた成果を披露してあげよう!

 そう心の中でテンションを上げつつ、気合を入れて男達の元へと向かう。


「!! お、おい! あれ、人狼だぞ!」


 男達のうちの一人が、私の目の色に気づいたのか悲鳴のような声を上げる。

 いや、そうだけど?

 なにを今更。今までずっとここに居たでしょ、私。


「? 何だ? 人狼も獣人も同じだろ。それより、その子達が何かしたのか。亜人の誼で俺が代わりに話を聞いてやる」


 そう言いながら更に距離を縮めると、男達が数歩下がってしまう。

 え、ちょっと、三人も居て何ビビってるの。

 そんな引き攣った顔をしなくてもいいじゃん。


「い、いや。ただぶつかっただけだ! それだけだ、なっ!」


「! あ、ああ!」


「そう、ぶつかっただけで……!」


 悲鳴を上げた男がそう叫ぶと、残りの男達も必死に頷く。

 何でそんな嘘つくかな。

 さっきのセリフ、聞こえていないとでも思ってる?


「自分達が何を口にしたのか、忘れたのか?」


 そう言いながら男達の目の前に立ち、頭半分ほど低い彼らを見下ろす。

 この体、背も高い方なんだよね。

 顔も怖いし、見下ろされたら威圧感とか凄そう。現に今、顔が青ざめてるよ……。


 あれ。今更だけどこの人達、武器を携帯してるんだ。

 片手剣と両手斧、それに弓がそれぞれ確認できる。

 え? ということはこの人達、冒険者か何かなの? このガラの悪さで? うそん。


「お前らも冒険者なのか」


「っえ、い、いや、それは……」


 口ごもる男達では埒が明かないので、さっさと鑑定してみると、予想通り冒険者だと情報が開示される。

 こんなのでもなれるのが、冒険者なのか……。

 これが冒険者の一般的なレベルなら、同じ職なのが恥ずかしい。

 出来れば、彼らが底辺の冒険者なんだといいけど。


 でも、同じ冒険者なら殴りあっても、身内同士ってことで大ごとにならなさそうかな。

 一般の人達より、気を使わなくて済みそうだ。

 それに、人間相手に戦闘経験を積めるなんていい機会なんじゃない? 

 これって私が止めに入った状態だから、一方的に悪くなることはないよね。かなり私にとって都合のいい展開なのでは。

 みんな人狼を怖がってるから、剣の相手はしてもらえないと思って諦めてたんだよね。

  

 さあ、さっきの威勢で殴りかかってきてくれたまえ。

 まずは先に殴って貰わないとね。

 じゃないと、正当防衛にならないからね!

 この好戦的な性格は人狼特有なんだろうなぁ、前の私じゃ考えられないもん。


 さて、この世界の人間の強さって、どのくらいなんだろ?

 人狼ほどじゃないだろうけど、恩恵を持っているだろうし、それなりに強いよね?

 余りの愉しさに、つい口の端が上がってしまう。


「ヒィッ!」

 

 可笑しな声を漏らしながら、男達の目が見開かれる。

 あ、しまった。

 この体の笑顔って、凶悪だったんだ。


 今の自分の姿を思い出すと同時に、血の気の失せた顔色の男達が、腰が抜けたようにへなへなと地面に座り込み、そのまま手を付き土下座されてしまう。

 ええ、この世界にもあるんだ、土下座文化。


 こ、これは。

 ちょっと、いや、かなり引くんだけど?

 私の前でやるとか、頼むからやめてくれないかな?!







お読みいただきありがとうございます。


次回は獣人姉妹と交流するお話です。

何故か冒険者に土下座までされてしまったクロウ、次こそまともな交流が出来るのか?

姉妹たちの反応は?! 

そんな感じになる予定です。

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