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01話 主人公、死す?

 気が付くとそこは真っ白な空間だった。


(なにこれ?)


 突然のありえない状況に茫然とし、私は白い世界の中で立ち竦む。

 前も後ろも、白、白、白。

 ぐるりと白い世界が私の周りを囲むように存在し、その先が全く見えない。


 ええっと? 何で私はここに居るのかな?

 思わず首を傾げる。

 っていうか、ここどこなの。

 確実に言えるのは、私がついさっき迄いた所とは全くの別の空間という事。こんな場所は見たことも無い。

 ついでに言うと、どうやってここに来たんだ、私。


 意を決し、恐る恐る腕を伸ばしてみるが、その指の先さえも白に飲み込まれる。

 そのまま左右に振ってみるが、視界は変わることなく白のままで変化はない。

 いや本当、ナニコレ。

 ただ白いだけで害はないようだけど。

 ん? 待てよ。


 (あ。これってもしかして、霧?)


 ひんやりと体に纏わりつく湿り気に、その白が深い霧だということに漸く思い至る。

 どうやら私は視界ゼロの霧の中という、人生初の現象に出会っている最中らしい。


(霧か。ということは、ここは外だよね。視界が悪い時は歩き回らない方が良いらしいけど……どうなんだろう)


 自分の理解が及ぶ現象だと気づき冷静になるが、依然状況は分からないままだ。

 何故、こんな所に私は一人で居るのか。

 再度疑問に思いつつ、この現状を打破すべく、周囲を確認しようと足を踏み出す。が、あまりの視界の悪さにすぐさま立ち竦んでしまう。


 うん。視界が遮られている霧の中を歩くなんて、私には無理だ。

 方向感覚が全くないし、なにより、進む先に何があるか分からないというのは、不安を通り越して恐怖すら感じる。

 うーん。他に私に出来ることって何があるかな。

 取りあえずは、声かけぐらい?


「……えーっと、ここはどこかなー? 誰か居ますかぁー?」


 他に誰か居ないかと声に出してみるが、周りからの反応は無し。どうやら周辺には、自分以外の人間は居ないようだ。

 更に誰か居ないかと耳を澄ませてみると、川の流れるような音が聞こえてくる。

 聞こえてくるのはその音だけで、他には何もない。


(やっぱり、おかしいよね)


 自分はつい先ほどまでバスに乗っていて、こんな所に一人で居るはずがないのだ。

 高校の修学旅行中で、クラス貸し切りの大型バス。

 次の目的地に向かって峠を走っていて、暇だなーとか思いつつ親友と話していて。

 それからブレーキの音と同時に大きな衝撃が……。


 ……あれ? もしかして事故った? 

 え、嘘?! 嘘だよね?!


 一瞬で全身の血が引く。

 慌てて周囲を見回すが、代わり映えの無い白い景色しかない。

 嫌な予感を感じつつ、そのまま屈んで地面へと手を付く。

 足元には平らで角の取れた石たちが転がっていて、触ると冷たい感触が伝わってきた。

 それを、震える手で摘まみ上げ手のひらに乗せる。


(これって、河原によくある石、だよね……?)


 事故に河原とくれば、思い浮かぶのは一つ。息を飲み込む。

 認めたくない。認めたくないけど、ここって三途の川の入り口ってやつ? なのでは。


(そうだとしたら、私、死んじゃった?)


 「死」という言葉に力が抜けて石を放り出し、その場にペタリとうずくまる。

 ありえないと思いたいけれど、これは夢にしては妙に生々しくて現実的過ぎる。


 どうしよう。

 いや、どうしたらいいんだろか。


(……皆はどうなっているのかな。私が死ぬほどの怪我だったら、隣にいたヒナも酷い怪我してるよね)


 成瀬 比奈。

 血の繋がった、従姉妹で親友の顔が浮かぶ。

 進学した高校は知り合いが少なくて、一緒のクラスになったヒナとばかりつるんでいた。

 今回の修学旅行でも、常に一緒に行動していたのだ。無事とは思えない。

 

(あの子もここに居るんだったら探さないと。きっと不安がっているはず)


 そんな考えにたどり着いた矢先に、突然、背後から石を踏む音が聞こえてきた。

 その音に驚き、思わず振り向く。

 そこにはニコリと微笑んだ青年が一人、白い霧を背負いながら立っていた。


 ……え? この人、近づいてくる足音が聞こえなかったんだけど。

 人間、だよね?












お読みいただきありがとうございます。

連休中は連投できるといいなぁと思っております。

暇つぶしに読んでいただけると嬉しいです。

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