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ちょっと変な国語の先生の話

珍問珍答シリーズ その4 「日記」の例

作者: マボロショ

日記は、ほんとうのことを、正確に書くのが一番大切。あとのことは、気にしなくっていい。

シンプルに、そう教えて、実際に書かせてみました。

「国語表現」の時間に高見順の「敗戦日記」などで、日記の書き方の勉強をしたのち、中間考査(5月27日実施)で、「5月26日の日記を書きなさい」という問題を出しました。

その解答の中から、私が特におもしろいと思った3点を、以下、紹介します。ただし、3人とも、本校の生徒の中では、個性の強すぎる方なので、他の生徒たちもみんなこんな感じだと思わないでいただきたい。念のため、申し添えます。


A子の分


今日、学校で試験がおわってから、帰って、母に服を買ってもらおうと思っていたら、「男の人が来ちょうよ」っち、教えてくれた。ケンカ中の彼氏だった。もう1週間ちょっとぐらい前のことだけど。

すごくうれしかった。けっきょく、仲直りしたけれど、1週間は長かった。もうだめかと思っていたから。5月25日は2人の記念日だったのに、いっしょにいられなかったけれど、まだ先はながいし、がんばろうと思った。そうだ。忘れていた。試験中だった。べんきょうしていないっ。あーっ、欠点かもしれん。

話は前に戻るけど、やっぱり仲がいいのが一番だ。ケンカするほど仲がいいとか、ウソやんっち思った。

これからは仲よくしようと思った。んーっ。楽しい一日だった。


B子の分


5月26日 火曜日 晴れ 中間考査 第2日目だ。昨夜、少し寝て、また起きて勉強するつもりやったけど、そのまま、起きなかった。………けさ、起きて少しした。また欠点とりそうだい。今さら後悔しても遅いけど。

テストが終わったら、一回家に帰って、着替えて、ひできの家に行った。一応勉強道具持って。おばちゃんが出て来て、びびったけど、「こんにちわぁっ」っちゅったら「こんにちわ」っちゆってくれて、やさしかった。おばちゃん最近やさしくなったぁ。おばちゃんがやさしいっちゅうのは、うれしいことやねっ。ひできの部屋に入ってひできの顔見た時、そうとうびっくりしたぁー。目がすごくこわかった。とゆうんは、きのうTELで、「ケンカして目がそうとう痛えー」とか言いよったけ。で、目、見たら、なんか目のまわりが黒くなって、危ない人っぽかった。自分でも「こえーやろ?」とか言いよったけど。

ほんで、勉強もせんで二人でペチャクチャしゃべったりしよった。なんか、ものすごおもしろい話いっぱいしたー。ひさしぶりに爆笑っち感じやった。この人とおったら楽しい。なんか、あきんし、ひませんし。

でも目がこわかったけ、あんまり、顔みらんかった。ケンカとかいらんことするけ、そんなんなるんよ。もう、しなさんなねっち感じ。暗くなったけ、帰らないけんけど、あまり帰りたくなかった。ずっと一緒におりたいっち思う。でも帰らないけんけ、途中まで送ってもらった。

帰る途中、ほたるがおったけ、ひできが取ってくれた。すごく光がきれいかった。でも、ほたるっち、一日で死ぬけ、かわいそう。だけ、ひでき、「かわいそうけ、にがしちゃろうのー」とかゆって、にがした。

ほんで、帰った。今日は楽しかった。


C子の分


一夜づけで勉強しようと思って、昨日の昼、3時頃から寝て、夜の11時に起きた。そして、リゲインを飲んだので目がさえて、朝6時頃から用意をして、7時に家を出て、ものすごく早く駅についた。国語、家住、看護の試験を受け、最悪だった。山が、大はずれだった。帰りに彼氏のところに寄り、せんたくと、おふろあらいをして、そっこう、家に帰った。2時頃だった。また一夜づけしようと思って、ごはんをたべ、たぬきにもミルクをやって、2時半頃から10時頃まで寝た。その間、7時頃、彼氏から、ちょっとおこされた。「ただいま」と言ったから、「しごと、おつかれさん」と言ったら、「ただいまっちゅうたら、おかえり、やろうが。じょうしき知らんのか」とどなられ、あたまにカチンときたから言い返したらケンカになった。ささいなことなのに。なんか、今日、仕事で、へまをやったみたいなことをゆっていた。人にやつあたりすんなよな、と思った。でも、さいごには、なかなおりをして、あんしんしてねた。起きてから、ふろにはいって、ごはんを食べ、彼氏に、いちおう、あやまりのTEL入れて、勉強にとりかかった。たぬきの歯が、1mmぐらいだけどはえてきているのに気づいた。うれしかった。




方言丸出しです。正直に、ボーイフレンドのことも書いています。どう評価すべきでしょうか。

当初の、ほんとうのことを正確に、という目標は、十分に達成していると見ていいでしょう。私は、この問題については、満点をつけました。

国語の学習としては、稚拙な部分もあり、減点すべきかもしれませんが、前書きに記したように、大目標に比べれば、小さい小さいミスと申せましょう。

思い出していただきたいのは、野口英世にあてた母親の手紙です。教育を受ける機会がなかったので、表記の仕方は、間違いがあります。けれども、我が子に寄せる思いは、十分に伝わります。

文の本来の使命は、そこにこそあるのではないでしょうか。

この問題を満点にしても、セットになる他の問題ともからんでくるので、答案は満点にはなりませんでした。

ボーイフレンドとの交際のあり方については、普通の教員ならば、クラス担任、生活指導係、保護者などに、

連絡するかとも思います。しかし、私は、そんなことはしませんでした。手抜きに見えますか?

国語の教師としては、「日記にはほんとうのことを書け」と言って、ほんとうのことを書いた生徒は、ほめてやりたいくらいです。彼女たちを密告するような連絡など、したくありませんでした。

本来、日記というものは、公開しないのが普通です。考査の問題として書かせたこと、こうしてネットで公開すること、すべて、私の、しでかしたこと、なので、彼女たちのしたことを、倫理的に、どうこう言うのは、適当でないと思います。

そういう点で、御批判があれば、甘んじて、お受けいたします。

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