序章
「いいかいステラ、あの星もこの星も全て皆が幸せになれるよう導いてくれる燈火なんだ。」
幼い私の肩を抱き、生まれ変わったこの不思議な世界での祖母はそう言った。
祖母の指差すその先には、眩いばかりの星が数え切れないほど
夜の闇を消し去るかのように光を放ち、
深い蒼、紫、そして白と地上にはない正しく天ノ河を作り出している。
「ステラ、ステラ。いつかお前も聖女様に仕えて、星の聲を聞きながら、この国の人達を導いておくれ。」
「はい、おばあさま。」
私はこの世界で、大きな力を持つ巫女の一族の愛娘として生まれた。
この国にとって、神の声を聞き信託をさずけ
精霊と関わり繁栄をもたらす巫女たちの存在は
貴重なものであり
そして、いくつか時代を経る度に救国として現れる聖女をお助けするのが巫女の役目であった。
正直なところ、今の自分の幼い体でも成熟した精神でも
聖女様とやらのことは分からないし
国のためという実感もわかない。
ただ、この柔らかく包み込む暖かい、もう腰の曲がった祖母の声を聞いていると
それもいいかもしれないと、
軽く返事をしてしまう。
そんな私の心を知ってか、祖母は私を抱きしめ
神話の時代の、お伽噺のようなものをまた聞かせてくれるのだ。
これは、何も持たない大学生だった私が
不思議な力の世界の、不思議な力を持った一族に生まれた、そんなお話。