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「碧」14歳。さきほど65歳の老婆に転生しました!  作者: 北佳凡人


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動け動け

短いですが、昨日につづいての投稿です。


 ゴンプームは強い。強くてしつこい。

 そんな敵なので、私は押されていた。それもわりと一方的にだ。


 神気搾奪(エクシーズ)は、一度にひとつのモードしか使えないんだよね。併用ができないのがとっても不便だ。

 フラットレンジモードにしたら、空気感染(エアポイズン)が消えてちゃったし。残留してくれたらいいのに。けちっぽい。


 ヤツは速い。

 御庭番という職業がらか、獣人の身体能力が優れているのか。足場が悪い天井をとにかく動き回る、低い梁に逆さつりになったかと思えば、高い縁とかの数センチの出っ張りに手足の指をかけて、貼りつく。

 

 私は神気搾奪(エクシーズ)を最大射程の8メートルに設定。そんで、部屋をいったりきたり追いすがるんだけど、捕まらない。ひらりひらりと、隙間を縫って、範囲外へと身をずらして、反対がわへ逃げていく。


 射程っていうのは半径のこと。歩数から計算してこの部屋の大きさは10メートル四方。だからほとんど、部屋の8割くらいは、私で埋めつくしてるようなもの。だけども捕まらない。まったく。いらいらするくらい捕まってくれないから、子供の頃を思い出した。虫取り網をふりまわしてチョウチョを捕まえようとしたことを。


 チョウチョなら、逃げてくだけ。でもヤツはする抜けるタイミングで、黒い攻撃をしかけてくる。防ぐ盾なんてとっくに壊れてソファの後ろ。がんばって避けてるけど、避け切れない。これ、絶対、受けるほうが多いよ。


「痛いって!」


 黒い攻撃が私の肩をかすった。また出血が増えたよ。

 つぎつぎに増えていく怪我。やっと一個治ったところだったのに。


「ふぅ、ちと外れた。思うように手が振れんわ。この場所は狭くて動きづらいの」

「なら、ここまで降りてくれば? 下界は天国だよ」

「そうさせてもらうかの。ミドリの嬢ちゃんの屍を拝みに、のっ」


 角っこから隅っこへ。

 そんな追いかけっこが、果てしなく続く。


 疲れてきたよ。だいぶ削られたよ。

 パトラッシュ、ぼくはもう眠いんだ…………いかんいかん、寝ちゃだめだよネロ。ルーベンスの3枚の絵をみるまでは、冬山睡眠は冬眠永眠だ。届け神気搾奪(エクシーズ)、届けフラットレンジモード。助けてオビワンケノービ。


 なにをいってんだか、妄想ピークもここに極まり。

 とにかく、がんばれ私。ヤツだって、完全には見切れてないんだ。

 詰めれば終わる。終わるんだ。王手飛車取り。ちはをとってクィーンになるんだ。


「ミドリお嬢はトロイのぉ。若かりしころのお嬢なら……おっと!」


 ひとつわかったこと。

 それは、獣人の話を聞かないことだ。いちいち話しが長いなぁと思っていたが、あれは、息を整えていたんだと気がついた。あいつだって、老齢。エリザに付き従った前線の忍びかもしれないけど、年にはかてない。つかの間の疲労を抜くために、おしゃべりで時間稼ぎしてたんだ。

 14歳じゃ思いつかないことでも、65歳の身体が教えてくれる。


 獣人が動いた。ベッドとは対角に移動。

 ついでとばかりに、黒い攻撃を投げかけて。


「いて。動くな、このー」

「そうはいきませんの、ふぉっふぉっ。ふっふっ……よっと、の」


 ゴンブームを休ませないこと。息が切れてきてるのが、わかる。

 敵の力を奪うのが速いか、こちらの年齢ダメージが65歳に達するのが早いか。

 終わりはみえないけど、終着点のある、命の削りあいを積み上げる。


 とにかく動いて、動いて、動いて、動く。

 それが、いまできる私の戦術だ。



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