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「碧」14歳。さきほど65歳の老婆に転生しました!  作者: 北佳凡人


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鷲鼻に襲われる


 死ぬとは、どーゆー意味かな。

 私に飲ませようとした苦い粉薬。

 それを吸って死ぬとは、どーゆーことかな。


「こっち来て説明して」

「けほっ、けほっ」


 鷲鼻は、自分のことだけで精一杯だ。

 顔色が無い。あれが蒼白っていうのね。


 死ぬのは勝手だけど、状況説明してから死んでもらいたい。

 お前を恨んでいたとか、こうするしかなかったとか。

 吐き出してきって死ぬのはサスペンスの基本でしょ。


 マウントポジションでタコ殴りしたい。

 だけどできない。

 年寄りの体は、不自由だ。


「だれか、その鷲鼻をここへ」


 誰もうごかない。

 目を合わせても知らん振りしてる。

 私、奥方様なんだよね。

 なんで命令、聞いてくれないんだ。


「お、おのれ……」


 おお。鷲鼻のほうからやってきてくれた。

 足取りがよろよろと危なっかしい。


「エリザバトラー……」

「エリザ、バトラー?」


 何かの暗号か。どこの戦闘ロボットだ。

 私のことにらんでる……ってことは、それが老婆の名前かい。


 七草碧(ななくさみどり)って可愛らしい名前が私にはあるのよ。

 けっして、悪と戦うワーカホリックマシンなんかじゃない。


「くたばりぞこないが……、お、お主など死んでしまえばよかったのだ」


 死にそうな初老からだけは、ぜったい言われたくないセリフです。


「そんな言葉聞きたいわけじゃない」


 もっと有意義な、ほら、私が納得するような情報を言ってよ。

 あなたの住所氏名年令とか、役職でもいいよ。

 しかし男はしゃべらない。

 歯を食いしばって老婆こと私の首を締めてきた。


 反射的に身を守ろうとした。けどレスポンスは、真空管テレビ並みに最悪。

 脳が発した信号によっこらせと手が反応するまで、とんでもない時間が過ぎた。

 そんでやっと動いた手だけども、男の手首を握ったところでお仕事おわり。

 だるくなって力が入らなくなった。


 広い寝室には、たくさんの人。

 11人いる! でも助けに動く人はいない。

 そこの二人、私の子供じゃなかったっけ。

 孫もどうした。


 老婆の、枯葉のような握力は焼け石に水。

 役にたたない抗いだった。

 とうとう息ができなくなる。


 また……死ぬのかい。

 短いセカンドライフだったなあ。





 あきらめて目を閉じたその時――。

 鷲鼻の動きがなくなった。






 掴んだ手のひらの、ぶよっとした肉の感触もなくなった。

 なにがなんだがわからない。


 けど、息ができるようになった。

 湿った空気が肺を満たした。

 命が……つながったのだ。


 うれしいと思ってしまったことが、なんだか悲しい。



 部屋は静か。

 半分だけ、ちょこっとだけ、目を開けてみた。

 灰色の何かが、視界の中に見えた。


「?」


 その物体は人の形をしていた。

 服を着ているけど中身は、中身が……


「ぎゃああああ!!」




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