その人たち、結託してます〜転生悪役魔女と次元を越えた迷子、時々、????〜 2、悪役魔女、コーネリア・ルサールカ
前世の世界では確か、思い立ったがナントカという言葉があった。
早速、術式の準備を開始する。
何を隠そう、私は魔法が使えた。
それも、ジャンルに少し片寄りはあるけど、かなり得意な部類に入る。
厄災の魔女の、『魔女』部分は、ここから来た呼び名だろう。
そして、『厄災』部分がどうして付いたかに関しては、命に関わるので、早急な解明が必要である。
「だからって……なんでまた唐突に使い魔なんて言い出しちゃったかなぁ……」
雛菊は使い魔を呼び出すという手段に関して、かなり渋っていた。
「私の得意分野は召喚系と呪術系でしょ。この場合、どっちが役に立つかって言ったら召喚系じゃない」
呪術で攻略対象や主人公を攻撃するという手だても、取れなくはないだろうけど。
ゲームの流れ通りだろうとなかろうと、それをやったら『厄災の魔女』認定まっしぐらであろう事は私にだって判る。
「だからって、使い魔召喚して何させようってんですか?」
「偵察とか?」
「それだったら、ボクだって出来ますよ……何でわざわざ新しく召喚……」
不貞腐れた様に言う雛菊。
これはもしかして焼き餅を焼いてくれていたりするのだろうか?
あら、あら、あら、なんとも可愛らしいではないですか!
「なんてね。ふふふ、安心なさい。使い魔の召喚と言っても、なにも人や生き物とは限らないのよ」
これは前世を思い出す前のコーネリアからの知識になるけど、この世界で使いとして呼び出せるのは、何も有機物だけとは決まっていない。
現在の所有者が居ない持ち物も使い魔として呼び出しが可能である。
古いものの場合は前の所有者や持ち主を失った……という条件付きだが、魔術に使う道具なんかを呼び出し、使い魔として先人の知恵を利用出来たりしてしまうのだ。
流れで思い出したけど、ゲームの中には、主人公にアドバイスする、喋るティーカップが登場していた。
あれは、恐らく使い魔だ。たぶん、そう。
そこで私は、自分の運命を変えるに当たって、力になってくれるスペシャルなアイテムを使い魔として呼び出して仕舞えばいいんじゃないかと思いついた訳だ。
「本とは、ゲーム本体とか公式ビジュアルファンブックなんかを呼び出せたらベストなんだけど、それは無理だろうから……未来予知とか預言の魔法が使える人の持ってた魔術書なんかが出てきてくれたらありがたいんだけど」
「そう上手く行きますかねぇ……」
まだ納得は行っていないという体の雛菊の協力を得つつ、召喚のための陣を整えて力を注ぐ。
魔力が行き渡り、淡く発光を始めたら、そこに呼び出すモノの条件を書き加えた。
(一番は、何かしらの要素で、『これから先のゲームの内容が分かる事』)
そちらを第一に、その他の条件も書き加えて行った。
この時、欲張って分不相応にならない様に注意を払うのが召喚成功のコツだ。
条件が確定したら、更なる力を陣に加える。
最大発光を迎えて、それが収まったら、召喚終了の合図で、そこに使い魔の姿が現れる……筈だった。
「……お嬢様、一つ、いいですか?」
陣の上に現れた使い魔の姿を見て、雛菊が言った。
表情は、無い。
「なに、雛菊」
応えた私も、たぶん同じ顔をしている。
「これ、どう見ても人に見えます」
魔方陣の上に立っていたのは、無機物ではなく、有機物。
人だった。
それだけでは無い。
私にはその『人』の出身国と職業が本人に確認せずとも解ってしまった。
「え?なになに??なにこれ???昨今流行りの異世界召喚????」
口を開いた、これから使い魔になる相手が言った、一言の意味も、よく理解出来る。
間違いない。
出身、この世界には無い国。日本国。
制服姿の、間違う事なき、女子高生が、そこに立っていた。




