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気がついたら悪役令嬢が私の乙女ゲームを改変して攻略しようとしています Ⅰ

趣味で恋愛系ノベルゲームを作ってサイトで公開していた私は、ある日、新作ゲームの制作中に奇妙な事態に遭遇する。

書いたはずのシナリオを無視して、キャラクターが勝手に動き出してしまったのだ。


ヒロインは尻軽だし、攻略キャラは攻略されてくれないし、隠しキャラは隠れてくれないし………………そんなキャラクター創った覚えがないんだけど???


どうしてそんなことになったのか……原因を探っていったら不穏な動きをしている人物が、一人。

え!?令嬢、あんた、勝手に何やってんの!?!?

それは、一通りの制作をし終えたばかりの自作ゲームのデバッグ作業中だった。


ゲームのテキストが、明らかにシナリオと違った文章を表示して、私は唸り声を上げる。


「う゛ー…なんじゃこりゃー…入力間違いにも程があるでしょう、もう……」


間違いというか、もはや別物だ。

内容が……展開が違う。シナリオの根っこから別物になっている。


(ロザリアは過去にあった、義弟との確執で殺されかけた事によって魔性が目覚めて魔女になるはずなのに……なにこの義弟と打ち解けてキャッキャウフフ展開は。書いた覚えもなければ、後半との整合性も取れんじゃないの……)


ここまで盛大にやらかしているのに気づかなかったなんて、おかしな事だし覚えもないが。どこかで寝ぼけて無意識に別の話を入力していたのかもしれない。疲れていたのだ……と、この時はそれで納得していた。


しかし、おかしな間違いはこれだけでは終わらなかった。


(あれ?選択肢ウィンドウが表示されないぞ……っていうか、その前にこれ、カニーナのセリフをロザリアが喋ってない???)


どこを間違えたんだろう、スクリプトも見直さなきゃ……それにしても今回色々酷すぎるな、私。

そう思いながら、テストプレイと修正を繰り返す。


それが10回目に突入した時だ。


(なんか……変じゃない?)


流石に自分でも、これはおかしいと思い始めた。


いくらなんでも、こんなバグとも呼べないあからさまな間違いを、その場で気づかずにいくつもスルーしてしまうなんて事があるだろうか?


(確かめてみよう……)


私はもう一度、初めからゲームをスタートさせた。




ROSETTA(ロゼッタ) ROYALE(ロワイヤル)


これが、現在私の作ろうとしているゲームのタイトルだ。


10年前に王都で起きた、闇魔法教団による事件を発端に、薔薇(ロサ・)聖刻印(スティグマ)を持つ主人公が同じく聖刻印(スティグマ)を持つ聖戦士と共に教団に立ち向かって行くという流れの、恋愛アドベンチャーゲーム。


主人公。デフォルト名カニーナは、平和な農村に生まれた娘であったが、ある日、薔薇の聖刻印が現れると共に発動してしまった祓魔の力が元で、拐われる様に王都へ連れて来られる。

そこで、世界を闇に染めようと企む組織の存在と、王都で起こっている事件とその原因について聞かされ、それを解決するために協力してくれと言われてしまう。


無理やり連れて来られたために始め気乗りのしなかったカニーナだが、偶然仲良くなった令嬢、ロザリアや同じく聖刻印を持つが故に集められてしまった聖戦士たちと親交を深めて行くうち、彼らの過ごす世界を共に護りたいと思う様になる。


そして、聖戦士たちと共に、闇の組織に立ち向かおうとするのだが、なぜかそれらは全てが後手に回ってしまう。


どう考えてもこちらの情報が漏洩しているとしか思えない状況に、疑心暗鬼になっていく仲間たち。


カニーナは単身調査に乗り出すが、そこで目にしたものは……。


……。


……。



というのが、主なゲームの内容だった。……はずなんだけど。


改めてプレイしてみた結果、私の作った物語は全く別物に変わってしまっていた。


(しかも確かに直したはずの箇所が全然直ってないじゃない!)


さっきの今で見間違うはずがない。

私がこの手できちんと修正した場所が、それでも、シナリオとは全く違う挙動を見せている。


(一体どうなってんのよ……)



主人公、カニーナ。


村から出てきて使命に燃え……るどころか、何だかずっとイケメンの尻を追いかけている。

いや、「乙女ゲームって身も蓋もない言いかたすると、そういうもんだよね?」って言われたら概ね間違ってないっちゃあないんだけれど。

祓魔活動(ほんらいのもくてき)そっちのけでそれやられると、始まる前に世界が滅びちゃうと思うんだ……制作者的な立場から言わせていただくと。


でもって攻略キャラクターたち。


確かに、主人公がその迫りかたで来れば、逃げ出したい気持ちも解らなくはない。

しかし攻略キャラクターである以上、攻略されてくれないと話が進まない。

というか、こちらも制作者的な立場から言わせていただくと、最終的に世界が滅びる。


そして、この手のゲームにはお約束かもしれない隠しキャラクターもいたりするんだけれど、そのキャラクターに微塵も隠れる気概が見られない。

彼は出てきた時点で世界が滅びてる訳なんだけれど……世界、無事なようで何よりです……。


(あれ?)


画面が立ち絵からスチルに切り替わって、私はある違和感を感じた。


そもそもスチルが描いた覚えの無い攻略キャラクター全員集合絵なんだけれど、それはこの際置いといて……。


「………………なんか、一人、多くない?」


隠しキャラを入れても、元々そんなに多くない攻略キャラクター。見間違えようも無いんだけど……。

スチルになって、一人、見たこともないキャラクターが増えている。


「誰……これ……」


しかし。次に更なる衝撃が私を襲い、それを華麗に上書きした。


『さあ、みんな!親睦を深めるためにキャッチボールをするわよ!!』


「はぃィ!?!?」


テキストボックスに目を疑いたくなる様な信じられない文字が表示されたのだ。


もう断言出来る。入力間違いとかじゃない。寝ぼけてたってこんな間違えかたはしない。

だって……。


私は思わず、画面に向かって叫んだ。


「ちょっと待て!!世界観!!!!」

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