手当て
騎士団詰め所に戻って数日がたった。
「っつ」
消毒液が傷口にしみる。
「まったく無茶苦茶しやがって、二人して死んじまったかと思ったんだぞ」
傷の手当てをしてくれていた騎士の幼馴染、フィト=レジェスが心配そうに言う。
彼も私と同期だけれど、不真面目さが勝っていまだに一般兵をしている。
「他に手段がありませんでしたから、むしろ二人とも無事であったことを喜んでほしいものです」
不満ですと私が言うと、フィトは怒ったような顔をした。
「おまえが重症じゃ手放しに喜べないだろ、副団長を庇ったんだって?」
「主にはその傷よりも魔力の欠乏ですよ、それに結局はそれで余計足手まといになったうえにアルヴァーに背負ってきてもらう始末です」
「嫁入り前の女が体に傷ばっか作るなよ」
「余計なお世話ですよ」
上半身は、袖のないシャツ一枚の私は包帯だらけの腕や体をあらためて見る。
「この程度で済んだのは奇跡ではないですか」
「おまえは女だろってことを言ってんの」
はあっと溜息を吐いて、フィトは手当てが終わると私の上着を放り投げてきた。
「ありがとうございます」
「あーもー、ほんと、なんでこーいうときに女の隊員がいねーのかな」
「嫌でしたか?手当て」
「そーじゃなくて! あぁもうなんでもない!」
そんなやりとりをしていると、ノックのあとに医務室の扉が開いた。
「モルガナは――」
入って来たのはアルヴァーで、私達を見るなり固まり、そのまま扉をしめた。
「すまない、手当ての最中だったか」
「もう終わりましたよ、すこし待ってください」
上着とコートを着て、椅子からたちあがって扉を開ける。
「……フィトしかいなかったのか? アイリは?」
「アイリは今日、お父様が倒れられたそうで」
私とも懇意にしてくれている女性騎士の名前に、今朝方にはいった情報をそのまま伝える。
「……そうか」
「?」
心なしか、アルヴァーの機嫌が悪いように見える。
(といっても、彼は普段から感情をあまり表に見せませんが)
「いや、元気ならいいんだ、だが今日の宴会は欠席したほうがいいだろう」
「え? いやです、おいしいものを食べられる機会ですし」
「君は自分がどれほどの大怪我を負ったか忘れてしまったのかい」
「怪我自体はもうほとんど術で治っていますし、魔力の欠乏を補うにはおいしいものが一番ですから」
そう言うと、アルヴァーは頭痛でも感じているように眉を寄せた。
「……どうしてもかい」
「私にもおいしいものを食べさせてほしいです」
そんなことで、私も夜に行われる宴会には出ることになった。
(……あら? そういえば。
窮地であったうえにばたばたしていて忘れていたのですが。
たいへん重要なことを思い出しました)
アルヴァーは女性が苦手だったのは?




