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嵐の予感

「アルヴァー、書類こちらに置いておきます」

「ああ、ありがとう」

 補佐にあたって数日がたった現在、私がアルヴァーを観察して思うのはたいへん真面目でたいへん女性に人気があるということ。


 それは容姿と勤務態度と地位をかえりみれば当然のことで、今日も光にあたるときらきら輝く金髪がまぶしい。

 戦場では私のように地味な色のほうがよいこともあるけれど、すこしばかり羨ましい。


「君はなぜ騎士団に?」

 ふと書類仕事をしていたアルヴァーに声をかけられて、私は本棚に伸ばした手をひっこめた。

「魔術の研究のためです」

「それなら王立の魔術院のほうが危険もなかっただろうに」

「私のような弱小貴族の娘をいれてくれるほど懐が広くはありませんよ」

 笑ってこたえると、アルヴァーは「なるほど」と困ったような顔をした。


「だが、君は戦場にもでるだろう? 女性には酷ではないかい」

「もう一つの理由を申し上げると、どうしても結婚をしたくなかったのです」

 私には兄弟がいるし、結婚したくないと言っても特に問題はない。

(今となっては、嫁ぐより魔術師をしているほうが家のためにもなりますし)


「戦場に立つような女を嫁にと言うおかしな家はありませんから、それに私にはこうしているほうが向いているのです」

 着飾ったり、夜会にでたりそんなことよりは、賊の討伐、治安維持に人助け。

 そして魔術の研究。


「なるほど君の覚悟はその研究成果を見れば分かりきったことだったが、筋金入りの魔術師なんだね、安心した」

「なにがでしょう」

 不思議に思ってたずねる。


「いや、賊の討伐に君を連れて行くようにと言われてね、俺が行くようなところは戦況も荒れることが多いし、少し心配だったんだ」

「そういうことでしたら慣れていますよ、戦争こそありませんが、治安がいいとは言いがたい時代ですから」

「ああ、君ならきっと大丈夫だろう」


 慣れているのは真実。

(けれどきっとここまで事前の予測がはずれるのはアルヴァーにとっても想定外だったでしょう。

 私にしても人生で初めてのおおはずれだったかもしれません)

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