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エンディング

 翌日、私は非番。

(やはり集中できません、なんてことでしょうか……)

 あまりに効率が悪くふらふらと街に出た。



(なぜでしょう、いつからでしょう……私はどうしてしまったんでしょう?)

 そんなことを考えながら大通りを歩いていると、ふと、目立つ容姿が視界に映った。

(あれは……)

 アルヴァーとブリギッタさんの二人だ。

(今日はアルヴァーも非番でしたでしょうか?)

 ぽかんと見つめていると、一瞬こちらを見たブリギッタさんがアルヴァーに寄り添う。

(っ……あら?)

 それになんだか傷ついたような不思議な感覚を覚えた。


「モルガナー」

「ひゃっ」

 けれど考え事をしていたら後ろからフィトに肩をだかれて驚いた。

「な、なにするんです! びっくりするじゃありませんか!」

「べっつに、つーか、なにしてんの」

「集中できないので散歩に……というか離れてください! 近いです!」

 ぐいぐい押してもまったく意味がない。

「なんだよ、普段そんなこと気にしないだろ。

 いっつも魔術のことばっかで、身なりにも男にも興味がないおまえらしくない」

「わ、私だってたまには気にしますよ! それにもう私達も子供ではないのですからっ」

 さすがに少し恥ずかしい。


「もうっ、なんなのですか、今日はフィトのほうこそ変ですよ」

「あーそうかも、おまえにどーしても聞きたいことがあってさ」

「はい? 答えられることなら答えますよ」

「結婚」

 私はびくっとふるえた。

「どうしてそれをあなたが知ってるのですか!」

「……本当なのか」

「えっ、なっ……かまをかけたんですか!」

「別に、ほとんど確信してたけど」

「なんですか、フィト、今日は本当に変ですよ」

「……どこにも行かないでくれって言ったら、そうしてくれるか?」

「はい?」

「出世もするし、幸せにするから、俺を選んでくれ」

「……はい?」

 首を傾げた私に、フィトは真っ赤な顔でいらついた様子。

「あーもーほんっとおまえは鈍感だな! 好きだって言ってるんだよ! 副団長じゃなくて、俺と結婚してくれって」

「――は」

 驚いている間に、フィトに抱きしめられた。

「どこにも行かないでくれ」


 頭がうまくまわらない。

(こういうときは、ど、どう答えれば?

 家の問題で、どうしようもない?

 それとも私の気持ちを――)

 そこでふと、違和感を感じる。

(フィトは大切な人です、だけど……これは恋でしょうか?)

「……なんて、おまえの答えは分かってるんだけどさ」

 少しだけ体が離れる。

「けど、簡単にあきらめるつもりもないからな」

「フィト」

 名前を呼んだとき、ぞっとするような感覚が背筋を駆け抜けた。

 その原因と思しき方向に視線を向けると、ブリギッタさんと一緒にいたアルヴァーの冷たい視線と目があった。


「……モルガナ」

 ブリギッタさんに何か告げて、こちらへやってきたアルヴァーはとても怒っているようだった。

(なぜあなたが怒るのですか、怒りたいのは私のほうです、こんなときに……昔の恋人さんとなかよくしていらっしゃるのに)

「君とフィトはそういう関係だったのかい?」

「ちが、い、ます、けど」

「君が魔術以外に無頓着なのは知っている、だが、こういったことはいかがなものかと思う」

「それはっ、あなたも同じでしょう」

「?」

 アルヴァーは不思議そうに首を傾げた。


「だ、だって、ブリギッタさんはあなたの、前の恋人で」

「……」

 私の言葉を聞くなり、アルヴァーは思い切り背後のブリギッタさんへ振り返った。

 ブリギッタさんは楽しげににこにこ笑っている。

「姉さん! あなたはまたわけのわからないことをモルガナに吹き込みましたね!」

「だってあんまりにもじれったかったものだから姉として見過ごせなくてよ」

(え、あら? 姉……? ど、どういうことです?)

 混乱している私をよそに、となりでフィトが不機嫌そうに「そーいうことか……」と低く唸った。


「だってアルヴァー、モルガナさんがイヤって言ったら騎士団もやめさせられて挙句まったく知らない子と結婚しなきゃいけないのだもの、姉としては想い人がいるのに見過ごせないじゃない?」

「だからと言って、なんてことをしているんですかあなたは」

「あらあら、でも効果はあったでしょ? アイリにも一芝居うってもらったんだから」



 □□□


 フィトはとても不機嫌そうに「アイリのやつ絶対ゆるさねえ」と言い残して去っていった。

 そして私はというと、アルヴァーと二人で河川敷に残されてしまった。


「お姉様だったのですか」

「ああ、昔から無茶苦茶なことをする人だったからね、君にもまたばかなことをしていないかと心配していたんだが、当たっていたようだ」

「アルヴァー、なぜ事情を話してくださらなかったんです」

「俺の口からは話すなと言われていたからね、それに君の答えは分かっていた、それでもなんとかならないかと思ったのは事実だ」

「……そうですね、その時はそうでした」

 ここ最近のもやもやについて、私は一つの答えにいきついた。


「でも、今は私も好きですよ、あなたのことが」

「――」

 私の言葉に彼は青い瞳を見開いた。

「私が魔術の研究をやめることはないでしょう、そんな女でもよろしいなら、あなたの傍にいます」


「……どうしてきゅうに」

「だって、あなたのことでもやもやしておりますと、研究がはかどらないのです、こんなことは初めてですから」

「……そうか」

 嬉しそうに笑った顔に、私もつられて微笑む。


「君にであえてよかった」

 頬に手が触れて、軽くキスをされる。

「――あ、あの」

「?」

 私はいっぱいいっぱいで、なんとか口を開く。

「私、その、恋人がいたこともありませんし、キスも、その……初めてなことばかりなので、どうか、お手柔らかにお願いします」

「……そうなのか、それは意外だった……というより、とても嬉しいものだね」

「わ、私としては複雑ですよ、とても」

 む、と眉を寄せると額にキスをされた。

 なんとなく悔しくて、私は背伸びをして自分からアルヴァーにキスをした。


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