アレルギー
子供の頃、俺の朝食は砂糖とミルクをたっぷりと入れた甘い、甘いコーヒー1杯だった。
とりあえず砂糖を入れておけば美味しいんだろ?と言わんばかりにスプーンに2杯とか普通に入っていた。
コーヒーに砂糖2杯、これは自分で入れていた訳ではなくて、子供は甘い方が良いだろう?と言う思想の元、祖母に入れられていた。なので弟もそんな甘い甘い代物を飲んでいた。
コーヒーは甘い飲み物、そう信じて疑わなかったので、初めてブラックを飲んだ時の衝撃たるや。
そして昼食の給食。
デザートに出てくるヨーグルトやプリンなどを楽しみに出来るほどで、ちゃんと完食出来ていた。
学校が終わって家に帰るとお菓子にまで手を伸ばし、7時頃には夕飯。
小学生の頃の自分が、1番の大食いだったと思う。
しかし、健康的な食生活をおくれていたのか?と言われると、そうではない。
朝食に甘いコーヒー1杯と言うだけでも宜しくない訳だが、そう言う事ではなく、食べた分、リバースする事も多かったのだ。
つまりは吐き気。気、だけではなく実際吐いてしまっている。
検査をした事がないので詳しくは分からないが「アレルギー」なのか「消化不良」なのか、食べられない物が多かった。
子供の頃は先生や親が「食え」と言えば食うしかないので、給食の時間、夕食、間食に至るまで、全て食べなければならない。
中学に行くと給食ではなく弁当になり、ここでやっと食べられるものしか口にしなくて済むようになった。
この時点で分かっていたのは魚だけだったので、冷凍食品を詰め込んだ弁当を普通に食べ、友達が持ってきたお菓子を1口もらったり。
夕食は確実に大丈夫な物しか口にしなかったので、ご飯とお茶だけと言う事が多かった。
高校になる頃にはもう少し自分の事が分かり、魚貝類と生のりんご、油濃い物が駄目な事に気が付いた。
油濃い物が駄目とか言いながら、この頃から主食はカップラーメンだった気がする。
食べられない物が分かってくると、段々と食事自体が面倒になり、カロリーさえとれていれば良いんだろ?とサプリメントを砂糖水で飲むような事になる。そして砂糖水の甘みで気分が悪くなる。
時々チョコケーキを食べてみたり、クッキーを食べたり、みかんの缶詰をシロップごと頂いてみたり。
食後は激しい吐き気に襲われるが、それをカロリーのためだ!と必死に我慢する。
高校を卒業する頃には、食べられない物がもう少しだけ分かってきた。
魚貝類、甘い物、油濃い物、ゴマ、キュウリ、スイカ、メロン、生のリンゴ、エビ、カニ、ビタミンCのサプリ。
これだけ。
ゴマは昔から食べられなかったのではなく、急に駄目になったと言う新顔だ。
予備軍を挙げるならもっと増えて、チルド餃子、しゅうまい、肉まん、カレー、オムライスのおにぎり、スーパーで出来上がっているコロッケや天ぷら。
予備軍にした理由は、餃子とシュウマイの場合、手作りした物なら普通に食べられるからで、肉まんもメーカーによっては普通に食べられるから。カレーも自分で作ったのは大丈夫だし、オムライスやコロッケや天ぷらも自分で作った物なら食べられる。
スーパーでは他にもエビの天ぷらなどを売っているので、揚げ油にエビの成分が入っているのかも知れない。
こんな感じなので、人の手作りを食べる事が物凄く恐ろしい。
だったら食べられないものを事前に言えば良いだけなのだろうが、ここまで書いた事全てを相手にきちんと伝えるのは至難の技なのだ。
言った所で、相手は覚えていない上に、どうせただの好き嫌いでしょ?と言う態度。
良いよ、もう。理解してくれなくて結構です。
自分で自分が難しいんだから、他人が理解してくれる筈もないし、出来る訳もない。
こうして俺はカップメンにお湯を注ぐのだった。