何か来る?
その日も私たち(私とキュアーとタイゼンさんとクルト)はアウトゥール殿下を捜しに出かけていた。
殿下は海沿いの町・デュマに向かったというので、そこに向かって飛んでいた。
すると突然、クルトが何かに気付いたように声を上げた。
「クルルル」
「何? クルト」
私が尋ねると、クルトは「クルル」と鳴いた。
「クルトは何だって?」
タイゼンさんが私に訊く。
「それが……危険だということしか」
「おい、クルト、何が危険なんだ」
タイゼンさんが訊くと、クルトは頭を右に向けて遠くを見ながら「クルル」と鳴いた。
「向こうから何か来るみたいです」
今度は分かってホッとした。
「何が来るんだ?」
タイゼンさんが訊くけど、クルトはじっと遠くを見つめたままだ。
私たちもその方向をじっと見つめていた。
しばらくすると、何か赤い物が見えた。
それが徐々に近付いて来て、竜だということが分かった。
「あの竜が危険なのか?」
タイゼンさんがクルトに訊くと、うなずくように「クルル」と鳴いた。
私は急いでキュアーと同調して結界術を展開した。
赤い竜が近くに来るまでに、なんとか結界を張ることができた。
赤い竜だと思ったら、銀色の身体が血色に汚れていたのだった。
タイゼンさんが一気に緊張するのが分かった。血まみれの竜なんて、ただ事ではない。
竜は私たちのすぐ側まで来て止まった。
そしてクルトに話しかけるように鳴いた。




