我が家?
「ここは……?」
殿下の呟きに、グレイス様が答えた。
「……リゼの家のように見えますが……」
私は目の前の家の扉を、信じられない思いで見つめていた。
(ここは本当に私の家……?)
この扉の向こうに家族がいるのだろうか。
もしも誰もいなかったらと思うと、開けたくても開けられなかった。
すると突然、扉が開いた。
「あら? リゼ、帰って来てたの?」
扉の向こうからは母が現われた。
「帰れた……」
私はその場に座りこみそうになって、グレイス様と殿下に両側から支えられた。
「どうしたの?」
母の後ろから姉が顔を出した。
変わらぬ姉の姿を見て、私は涙が出るのを止められなかった。
その後、家の中に入ってから今日が何日か母に訊いたところ、私たちが過去の世界に行ってしまった日から三日後であることが分かった。
「無事に帰れたね」
殿下がホッとしたように言うと、グレイス様が「ええ。城に急いで連絡しなければ」と、セイジさんの家に行くと言って出て行った。
私と殿下はお茶を飲みながら、キュアーに食べ物を与えている姉を眺めていた。
「殿下はまたお城に帰ったら、どこかに逃げ出してしまうんですか?」
「……しばらくは大人しくしているよ」
でも、またすぐ逃げ出したくなると思うけどね。
そう言って、殿下は悪戯っぽく笑った。
それからしばらく後、タイゼンさんが迎えに来て、私たちは城へと戻ったのだった。