デュマがいない?
次の日。
殿下とグレイス様が迎えに来てくれたけど、何か様子が変だった。
不思議に思っている私に殿下が言った言葉は――
「リゼ、デュマがいなくなった」
「え!?」
「グレイスが捜してみたが見つからない。念のため、君も気配を辿ってみてくれないか」
「わかりました」
私は慌ててデュマの気配を探した。
しかし見つけることはできず、今度はキュアーと同調してデュマの気配を辿ってみたけど、やっぱり見つけられなかった。
「……駄目です。見つかりません」
「そうか……」
殿下はやっぱりという顔をして、グレイス様に言った。
「グレイス、セラージュ湖から竜を呼べるか?」
「やってみます」
ここからセラージュ湖まではだいぶ離れているから、私には竜を呼ぶことなんて絶対無理だ。
けれど、グレイス様はしばらくすると「呼びました」と言った。
(凄い! さすがグレイス様!)
私は自分が半人前だと改めて実感したのだった。
呼び寄せた青い竜に乗って、私たちはセラージュ湖に向かった。
セラージュ湖に着くと、たくさんの竜の中にデュマがいないか捜してみたけど、どこにも銀色の竜はいなかった。
「グレイス、ほかの竜でも未来に帰れるか試してくれないか」
「わかりました」
グレイス様は、ここまで私たちを乗せてきてくれた青い竜と同調を始めた。
しかし、しばらくすると同調を解いて言った。
「駄目です。元の時代を認識させることができません」
「……リゼ。君も試してみてくれないか」
「……わかりました」
結果として、私も元の時代を認識させることはできなかった。
それで今度はキュアーで試そうと言うことになった。
最初にグレイス様が試してみたけど駄目だった。
次に私も試してみた。
キュアーと同調して、元の場所を思い浮かべた。
最初は竜舎を思い浮かべたけど、そのうち住み慣れた我が家が浮かんだ。
父と母と姉のいる家。あの場所に帰りたかった。
「リゼ!」
殿下の声がして、繋いだ手を強く握られるのを感じた。
そして、視界が揺らいで――
気がつけば、懐かしの我が家の前に立っていた。