キューちゃんとグレイス様?
翌朝。私たちはルゥイたち家族にお礼とお別れを言って、彼らの住む村を後にした。
そして再びデュマに乗って、セラージュ湖へと向かったのだった。
セラージュ湖に着くと、湖の中に入ろうとするデュマを止めて、殿下の指示を仰いだ。
「まずはデュマと同調して、元の場所に帰るように言って」
「はい」
殿下が私の手を握ったのを意識しながら、デュマとの同調を開始した。
私はデュマに何度も帰る場所を説明したけど不安だった。
だからもう一度訊いてみた。
(デュマ、元の場所、ちゃんと分かってるよね?)
デュマからは、分かってる、あのチビ竜のいる所、との答えが返ってきた。
……チビ竜とはキュアーのことだろう。
キュアーのいる所に戻れば、そんなに違う時代に行かないだろうと私は安堵した。
(そう。キューちゃんのいる所。小さいままのキューちゃんだよ)
私はキュアーを思い浮かべた。
すると、デュマがチビ竜の気配、と伝えてきた。
(え!?)
私は慌ててデュマの感じている気配に意識を向けた。
それは懐かしい、キュアーの気配に間違いなかった。
(キューちゃん!)
私はキュアーの名を呼んだ。
すると、すぐ近くにキュアーの気配が移ってきた。
私は不思議に思いながらも、殿下に握られていないほうの手をキュアーに向かって伸ばした。
「リゼ……!」
すぐ近くでグレイス様の声がした。
私は、帰れたのだろうかと辺りを見回した。
……どこも景色は変わったように見えない。
けれど、私たちのほかに、キュアーとグレイス様がいた。
「キュ!!」
キュアーがグレイス様の肩から私に向かって飛んできた。
私が受け止めると、キュアーは嬉しそうに鳴いて頭を擦り付けてきた。
「キューちゃん、会いたかったよぅ」
「キュ!」
私はキュアーとグレイス様に会えた喜びで泣き出してしまった。
そんな私を慰めるようにグレイス様が頭を撫でてくれたので、ますます涙が止まらなくなってしまった。
――だから、すぐそばで殿下が困った顔をしているのには気付かなかった。