休憩?
私は同調を開始しながら「治療しますね」と言った。
「ああ。よろしく頼む」
男の人がそう言うのを聞きながら、術式を編んでいった。
治療が終わると、男の人は「ガルドだ」と名乗った。それから「ありがとう」とお礼を言われた。
ルゥイからもお礼を言われ、私は「次は?」と訊いた。
「少し休んだらどうだ」
「そうだよ。疲れてるんじゃないのか?」
ガルドさんとルゥイにそう言われたが、私は疲れている感じはしなかった。
「疲れてないから大丈夫。それより、ほかにも怪我してる人はいるんでしょ?」
「いるけど、後はそんなに急がなくても大丈夫だから」
ルゥイがそう言うので、私はガルドさんに勧められてお茶を飲む間だけ休むことにした。
お茶をご馳走になってから外に出ると、向こうから殿下とソンニがやって来るのが見えた。
私は自分だけ休憩していたのが恥ずかしくなった。
「すみません、殿下」
「何で謝るの?」
「私だけお茶をご馳走になっちゃって……」
そう言ったところで、ルゥイに「俺が休むように言ったんだ」と庇われた。
殿下は、そんなことと気にしてないようだ。
「ここはもう治療したの?」
「はい」
「じゃあ、重傷の人はもういないね?」
殿下がそう言うと、ルゥイが「ほかに、薬師の婆さんの所にも怪我人がいる」と言った。
「その人たちを治すと、薬師のお婆さんの仕事を奪ってしまうことになるんじゃないの?」
殿下がそう言うと、ソンニが「そうだね」と言った。
「あとは薬師の婆さんに任せて帰ろうよ」
「帰る前に、家に寄ってよ」
ルゥイがそう言って、私の腕を引っ張る。
殿下は苦笑して、じゃあ君の家に行こうか、と言ったので、私は約束が守れて良かったと思った。