グレイス様に会いたい?
回復の術式を編んだ後、殿下は怪我の一つ一つに治癒の術を施していった。
その際に包帯を解いて傷を確認していく。その怪我の酷さに、私は目を背けたくなった。
(ちゃんと見なきゃ)
私は目を瞑りたいのを堪えて治療の様子を見守っていた。
ディアンの治療が終わった。
まだ目は覚まさないけど、顔色は良くなっているし、寝息も安らかだ。
でも、魔獣に喰い千切られたという指は元には戻らない。
それでも、ティーナは涙を流して喜んだ。
「ありがとうございます!」
ティーナが殿下の手を取ってお礼を言う。
ソンニも「良かった」と言ってホッとした表情だ。
「ほかにも怪我人がいるんだろう?」
殿下がそう言うと、ソンニが「そうだった」と慌てて言った。
「ティーナ、俺たちはラィムの所に行くから」
「私が案内を……」
「ティーナはディアンについてて」
「……うん」
私たちはもう一度ティーナにお礼を言われてから、次の家へと向かった。
ラィムという青年は、頭に包帯を巻いていた。
「頭の怪我は、慎重に術を掛けないといけないから、私がやるよ」
そう言って、今度も殿下が治療を引き受けてくれた。
私は申し訳ない気持ちになりながらもホッとしていた。
頭の怪我は、下手に治療するともっと酷いことになるのだという。
私には上手く治療する自信がなかった。
(次は! 次は私が治療するんだ)
そう思いながらも、次も酷い怪我だったらどうしようと怖かった。
(グレイス様……)
今一番見たいのは、無口だけど優しい師匠の顔だった。
(早く迎えに来て下さい)
私はグレイス様を思い浮かべて、キュアーはきっと寂しがっているだろうな、と心配になった。
(早く帰りたい……)
ここに来てから初めて、心の底から帰りたいと思った。