治療は殿下が?
村に着くと、すぐにディアンの家に向かった。
途中で行き合った人に私たちのことを訊かれていたが、ソンニは「後で説明する」と言って急いで歩いて行った。
ディアンの家に着くと、ソンニは「ティーナ、いる?」と言いながら、扉を開けて入って行った。
私と殿下もソンニの後に続いて入って行くと、一人の少女が驚いた顔をして立っていた。
「ティーナ。この人たちはディアンを治療しに来てくれたんだ」
ソンニの言葉に、少女の顔がパッと輝いた。
「ホント!? 兄さんを助けてくれるの?」
「ああ」
ソンニが確信に満ちた声で答えている。
私は急に不安になった。
(治せないくらい酷い怪我だったらどうしよう……)
私が青くなっていると、殿下が私の肩を叩いて言ってくれた。
「私が先に治療するよ」
だから安心して、と言う殿下が初めて頼もしく見えた。
ディアンの部屋に入ると、薬草の匂いが鼻についた。
身体中に包帯を巻かれた彼の顔は青白く、容体はかなり悪そうだった。
「まず、回復の術を掛けるよ」
殿下がそう言って術式を編み始めた。
魔術士の術の編み方は基本的に竜術士と一緒だが、自分の魔力を使うところが竜術士とは違っている。
同調の必要がないから術の発動が速いが、自身の魔力を使うので、魔力切れの心配がある。
今回は殿下が治療してくれるけど、次からは私が治療しよう。そう思いながら、私は殿下が術を掛けるのを見ていた。