呑気?
デュマと同調して聞き出したかったけど、眠そうなデュマには聞けそうにない。
私は諦めて殿下を見た。
「これからどうしますか?」
「とりあえず、一夜の宿を頼もうか」
私たちが一晩泊めてくれるように頼むと、お爺さんは「一晩と言わず、何日でも」と言って家に案内してくれた。
お爺さんはこの村の長で、族長なのだという。
お爺さんの一族はたくさんいて、あちこちの村に分かれて暮らしているそうだ。
ほかの村でも魔獣に襲われて怪我をした者がいるので、治してやってくれないかと頼まれた。
アウトゥール殿下を見るとうなずいたので、私はお爺さんに了承の返事をした。
お爺さんの家では、それはもう丁重にもてなされた。
特に私は竜使いだからなのか治療したからなのか、殿下よりも偉い人みたいな扱いをされた。
殿下は気にしてないみたいだけど、私はとても居心地が悪かった。
ちなみにデュマは外で寝ている。
草の茂った所まで行ったら寝てしまったので、そのまま置いてきたのだ。
殿下がその場所に術式を編んだので、変化があれば分かるそうだ。
殿下が魔術士で良かったと思った。
この時の私は、そのうちグレイス様たちが捜しに来てくれるだろうと思っていたので呑気なものだった。
待てど暮らせど迎えが来ないと気付くのは、もっとずっと後になってからのことだった。