竜使い?
ダビルスティガーは、死んでいるものも全部デュマが食べてしまった。
たくさん食べて満足そうなデュマは、私の側にやってくると、「クルル」と鳴いて頭を擦り付けてきた。褒めてほしいのだろう。
「よくやったね、デュマ」
「クルル」
私はデュマを褒めながら頭を撫でた。
いつの間にか、殿下もデュマを撫でている。
少し離れた所で村人が私たちを見ていた。
そのうちの一人が、意を決したように「あの……」と話しかけてきた。
「その竜は、あなたたちが飼っているのですか」
「飼っているわけじゃないけど……」
「リゼは懐かれているんだよね」
村人の質問に、私と殿下が答えると、おおー! という声が上がった。
「竜使いだ!」
「竜使い様だ!」
皆嬉しそうに、竜使いだ! と言っている。
竜術士のことを“竜使い”とも呼ぶとは聞いていたけど、こんなに喜ばれるのは初めてだ。
「竜使い様、どうもありがとうございました」
白い髭のお爺さんが、私に向かってお礼を言う。この人が村の代表みたいだった。
「あの、この村は何ていう名前なんですか?」
「オスタ村です」
「オスタ村……」
村の名前を聞けば場所が分かるかも、と思ったけど、オスタ村というのは聞いたことがない。
殿下を振り向いて見たけど、彼も知らないようだった。
「ここは何と言う国なんですか?」
殿下がそう訊いたけど、お爺さんは「国?」と不思議そうに首をかしげている。
「国という概念がないのか……」
殿下が呟いた。
いったいここはどこなんだと、私はデュマを見上げた。
デュマは眠そうにトロンとした目で私を見た。