ダビルスティガー?
「どこなの? ここは……」
私は目の前のデュマに訊いた。けれどショックで同調が解けてしまって、明確な答えが返ってこない。
私はもう一度、同調を開始しようとした。
「リゼ」
殿下が呼んだので振り向くと、私を抱き寄せたまま固い表情で彼は言った。
「ここから移動したほうがいい。魔獣の気配がする」
「魔獣なら、デュマがいるから……」
「数が多い」
そう言って、デュマに乗ろうとする。
しかし、デュマは殿下を乗せようとしない。
睨み合っている二人(?)にため息を吐いて、私はデュマに「乗せて」と言った。
デュマは私の言葉に応えて、姿勢を低くしてくれた。
すると殿下が私を抱えて飛び乗った。
「飛ぶように言って」
そう言われて、私はデュマに「飛んで」と言った。
デュマは言う通りに飛び立った。
上空から見ると、少し離れた所に魔獣の群れがいるのが分かった。
小さいが、数が多い。
「ダビルスティガーだ」
殿下が言った。
ダビルスティガーとは、小さいけれどすばしこくて凶暴で、群れで襲いかかってくる厄介な魔獣だ。
あれを倒すには、結界に閉じ込めてその中に攻撃するのが最も効率が良い。
けれど、今見えているダビルスティガーは、人間の集落に襲いかかろうとしていた。
結界は間に合わない。
「殿下!」
私は殿下を振り返った。
「……あそこに降りるように言ってくれ」
私はデュマに言って、集落の近くに降ろしてもらった。