どこ?
「ねえ、デュマに私のどこが気に入らないのか訊いてみてよ」
餌を与え終わったところで殿下がそう言ったので、私はデュマと同調して詳しく聞き出すことにした。
デュマの目をじっと見ながら呼吸を合わせていく。
そして意識が溶け合ったところで、デュマの心を探っていった。
(デュマはアウトゥール殿下のことを、どう思っているの?)
私が問い掛けると、デュマからは、アレはうるさい人間だ、という答えが返ってきた。
(うるさいから嫌いなの?)
デュマは、嫌いではない、と答えた。でも好きでもないようだった。
殿下が欲しい答えは望めそうにない。
私は諦めて、他のことを訊いた。
(デュマはここでの暮らしに満足してる?)
デュマは、もっと自由な所に行きたい、と答えた。
(セラージュ湖に行く?)
そう訊いたけど、デュマはもっと別の所に行きたいと答えた。
(別の所って?)
私が訊くと、一緒に行こう、とデュマが答えた。
(どこに?)
そう訊いたけど答えは無く、視界がぼやける感じがした。
「リゼっ!」
殿下の声がして、抱き寄せられるのを感じた。
そして瞬きの後。
「……どういうこと?」
私たちは見知らぬ森の中に立っていた。