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飛んだ?
三週間が経った頃。
キュアーが少しだけ、飛ぶようになった。
羽をパタパタと動かして、一生懸命、身体を浮かせている。そして、私にしがみ付くようにして着地する。
…ますます可愛い。
そうやって、どこにでも付いてくるようになった。
「キューちゃん、これ食べる?」
「キュ」
「だめよ、キューちゃんに上げないで自分で食べなさい」
母が注意するが、姉は自分の嫌いな物をキュアーに与えている。
…結局、母も姉も“キューちゃん”と呼んでいる。
「キュアー、これは食べるか?」
「キュ」
父がお酒のおつまみを与えている。
父だけが“キュアー”と呼んでいた。呼ばないと名前を忘れてしまうだろう、というのが理由だった。
こうやって、食事時には皆でキュアーに色々な物を食べさせている。
いつの間にか、キュアーは家族の一員となっていた。