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第一部第三幕【イエロースカーフ討伐戦・第一段】

〜 OL三国志演義 第一部【イエロースカーフの乱】 第三幕【イエロースカーフ討伐戦・第一段】


 お茶場でからまり合う男女。真昼間のオフィスでは考えられない光景である。よく見ればコブラツイストとかいうプロレス技か?背後から男の肩をめ、肘で肋骨あたりをグリグリと責めているのは、義妹の張本翼だった。


 もしかして、と玄田徳子は思ったが、いじめられているのは、やはり先週の金曜日に一緒に飲んだ若手の男子、中条だった。


 「ちょ、ちょっと、ハリモト、あんた何やってんのよ!」


 「あ、徳子の姐さん!今、コイツから白状させるかンね!」


 「なんだこのヤロー!どうして二次会フケたんだ、このヤロー!」


 「イテテ!猪木入ってるッて!フケてないって!」


 中条は、張本翼の技から逃れられないながらも、片手を「NO!NO!」と大きく振って何故かギブアップを拒むアクションをしながら懸命に抗弁していた。


 玄田徳子はこの珍妙な光景が面白くなったので、張本を制止することはやめて、その代わりに自販機に小銭を入れ、ダイエットコークのボタンを押した。


 「なんだこのヤロー!突然消えたじゃねーか、このヤロー!」


 張本は詰問に合わせて髪を振り乱しながら体を前後させ、技の威力を加えていった。これには中条もたまらず降参した。


 「ギ、ギブ、ギブ!!*1」 


 *1 ギブアップの略。男子らは降参する時に、しばしばこの表現を用いる。


 中条の叫びに、ようやく張本は技を解き、息を荒げながら、中条に言った。


 「ハアハア、じゃあ正直に言いや!あんたら、派遣のイエロースカーフのらと、ハアハア、ウチら、まいたやろ!」


 ようやく張本翼の拷問から解放された中条は、攻められた肩と腰を回しながら、同期の女子に哀訴するかのように反論した。


 「だからー、まいてないって。自分らが突然消えたんやろ、、、」


 「消えたって、急に突風が吹いてあんたらを見失ったんやで。」


 ダイエットコークを片手に、玄田徳子が尋問に加わった。中条は、あ、どうも玄田徳子に会釈した。


 「で、、、二次会は何時までおったん?盛り上がった?」


 玄田徳子はこれを聞かずにおれない自分が恥ずかしい。 


 「いやあ、それが盛り上がって、盛り上がって!終電も無くなったからタクシーで帰ったンですよ。エヘへ。」


 よほど楽しい思いをしたのか、中条は嬉しそうに答えた。その顔が張本翼にはしゃくに障った。


 「そやけど、なんで急に風が吹くの?あんたら何か仕組んでたんやろ!」


 張本翼は技をかけて乱れてしまった髪を直しながら、中条を追求した。ほとんど言いがかりである。大阪はミナミの女、張本翼はケンカ慣れした稀有なOLである。


 「そんなん仕組む間あらへんやん!二次会でも皆、張本とか何処言ったのかなあって心配してたんやで。ま、悪かったからぁ、また飲みにいこうや、、、」


 どうやら中条は本当に玄田徳子や張本翼らの方が突如消えたのだと思っているようだ。 


 「ホンマ?じゃ許したるけど、、、次の飲み会はあんたのオゴリやで!」


 張本翼はニカッと笑って言った。中条は、はい、はいと言いながら、そそくさとお茶場を立ち去っていった。

 

 玄田徳子は、同期男子に対する張本翼の圧倒的な優位性を不思議に思いながら、ダイエットコークを飲み干した。一方的な態度ながら、そこに憎めない愛嬌があるのが張本翼の強みなのかも知れない。あるいは、小柄ながらはちきれそうなダイナマイトボディに男達は目が眩むのか、、、


 筆者曰く。世の男性の多くは、肉感的な女性を好むと女性は思っているフシがあるが、これは正確ではない。むしろ、その対極にある身体的特徴の女性に惹かれる男性も数多いることを、その一人として指摘しておきたい。



 「ねえ、徳子の姐さん!それにしても何で急にあんな突風が吹いたんやろ、、、あのイエロースカーフって魔術でも使うんかなあ?」


 まじめで礼儀正しく見えたイエロースカーフこと太平スタッフの派遣社員、角田らに、張本翼は動物的な感覚で得体の知れない恐怖を感じているようだ。それにしても魔術って、、、と張本翼の言葉を玄田徳子は笑いそうになったが、フト気が付いた。


 「見た?さっきの中条クンのネクタイ。黄色系やったね、、、」


 イエロースカーフと飲んだ翌日から、男どものネクタイが黄色に変わるという噂を、以前、関長子から聞いた。どうもイエロースカーフは、金曜日の二次会でも男子を陥落させたようだ。


(次回につづく)

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