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第一部第一幕【桃園の誓い・第三段】

〜 OL三国志演義 第一部【イエロースカーフの乱】 第二幕【桃園の誓い・第三段】


 あれれ、ウチらそんな話、してた!?と関長子の演説に泡食った張本翼は、玄田徳子の横顔を見た。

 

 我社の問題と言いながらも、つまるところは個人攻撃、悪口のフリートークに過ぎなかった自分達の会話と、関長子の示した業界と我社の危機に関するご高説では、随分と開きがあることに驚いたのだが、意外にも玄田徳子は深刻な表情で関長子を見据えている。


 酔って気が大きくなっているからだろう。玄田徳子は「変わらなきゃ」とか「立ち上がる」とかいう、関長子の派手なフレーズに大に触発されていた。加えて、関長子の魅力的なルックスに「このと仲よしてたら、エエことあるかも☆」というスケベ心が芽生え、話の中身なぞ全く聞いていないくせに、瞳に力を込めて「分かる、分かる」と関長子の演説に相槌を打っていたのだ。


 張本翼はというと、小難しいことを言うは大嫌いというスタンスだが、美貌の酒豪に不覚にもリスペクトの念を抱いてしまった。澱むことなく、明瞭な口調でまくしたてた関長子は、実は相当に酒臭く、よく見ればポケットにオッサンが持っているようなスキットル(ウィスキー入れ)を忍ばせているではないか。


 「この人、凄い人かも知らんッス、、、」


 張本翼は人を酒量で評価する宴席のオヤジのようなメンタリティなのである。


 そういうわけで、玄田徳子と張本翼の二人の姿は、関長子の、実は一般論の域を出ない長広舌に聞き惚れているかのように映ったのだった。


持論が受け入れられたと思い、気をよくしたのか、関長子は、その場であぐらを組んで座り込んだ。


「どうです、三人で乾杯しませんか?」


 関長子は転がっていた紙コップを拾い上げ、玄田徳子と張本翼に突き出した。


「そうこなくちゃ!」


 張本翼は、すかさず同意した。もうこれ以上、長い話は聞きたくないのだろう。


「ア、でもお酒がもうないワ」


 と、玄田徳子が言うと関長子は初めて微笑んでこう言った。


「空の盃で乾杯というのもオツではありませんか?」


「そうそう、酒は後で調達すればええやん!まずは乾杯!乾杯!」


 と、張本翼。


「そうねえ、じゃ、何に乾杯する?とりあえず酒と私ら三人に乾杯する?」


 玄田徳子の提案に関長子、張本翼が同時に答えた。


「異議ナーシ!」


 ではご唱和を、と関長子が立ち上がり高々と紙コップを天に向かって掲げた。それにつられて玄田徳子と張本翼もヨロヨロと立ち上がり、カラの紙コップを春の空に掲げた。関長子は低いながらもよく通る声に二人が続いた。


「私達三人、。飲み始めた所は別なれど、。願わくは同じ場所にて、。酔いて寝入らん!」


 三人はその場の勢いで三人は義兄弟ならぬ義理の姉妹の契りを結ぶことにした。これは張本翼の提案で、彼女は懇ろになった年上の同性をお姉ちゃんと呼ぶタイプなのである。

 

 そこで、年長は関ながらも、菅コーポレーションでの勤務歴に従って、長女を玄田徳子、次女を関長子、そして末娘に張本翼と定めたのだが、今後三人で一体何をしていくのか、まるで不明確な頼りのない徒党がここに誕生した。ともかくも週末は飲もう!、これくらいのことは決まったのかも知れない。


 義姉妹となった三人は、宴会はもう終わろうとしているにも関わらず、宴はこれからとばかりに、肩を組み、張本翼のお囃子に合わせて意味不明な猥歌をがなりながら、千鳥足で周辺の座を冷やかしていた。

 

 その時、すっかり酩酊して物がゆがんで見える玄田徳子の目に、気になる光景が映ったのだった。若い管理職らと楽しげに、はしゃぐ三人のOL。彼女らは、ことごとく首に黄色いスカーフを巻いており、それがオシャレ上手を自認する玄田徳子の癇に障った。が、何よりもけしからんことは、自分らだけで男達と二次会にフケる談合をしているよう見えたことだった。

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