残虐
「ニコラス…ッ!?」
ニコラスは抱いていたピコをそっと地に下ろしてやると、愛梨に近づけさせ、顔を険しくし森の奥先を睨みながら地に散乱した剣と盾を掴み取り立ち上がった。
ガシャン! …ガシャン!
愛梨の背丈程の刃の長さはあるが全体的に少し寂れた感じの西洋風な剣を右手に持ち構え、縦七十センチ横四十センチ程の銀色の盾を左手で持ち、自分の身を守るようにして盾を 構え、睨みつけている森の奥先へとゆっくり進み歩き始めた。
「ニコラス…ッ!! 待って…ッ!! どこ行くの…ッ!?」
愛梨は、怯え震えるピコを抱き、立ち上がるとニコラスの後を追い、駆け出した。
ドカッ!!
「痛…ッ!!」
急に立ち止まったニコラスに愛梨は気付かずぶつかってしまった。
「……。」
ニコラスは耳をすましているようだ。
「え…? 何…? ニコラス…どうしたの…?」
愛梨もニコラスと同じ様に耳をすましてみた。
「……ッ!?」
森の奥先で何か争いをしているような声や物音が聞こえる。
「何…だろ…?」
ニコラスは止めていた足をまたゆっくりと歩き進ませ、愛梨もそれについていく。
物音が聞こえる森の奥先へ進み続け、木々の隙間から覗き見れる距離まで近づくと、その物音の正体が明らかになり、ニコラスは更に顔を強張らせ、愛梨は驚愕した。
「……。」
「……ッ!?」
鎧や剣、盾など、まるで西洋のような鎧や、日本刀のような剣、多種多様の武装をした、二、三人の若い男達が、先程傷だらけで走り逃げていったダチョウのような生き物達を無惨に斬り倒していく。
「ギャギャギャギャ…ッ!!」
「ヒャハハハ! コイツらマジ弱ぇな!」
「ギャハハ! 憂さ晴らしに最適だな! つか、コイツらみてぇに弱ぇヤツの素材が強い武器を生み出すなんて信じがたいよな!」
「ホントホント! つかマジ早く大剣とか魔剣とか欲しいんですけど! コイツら一匹一匹倒すのマジかったるいし!」
「仕方ねーだろが! まだまだレベル低いんだからよ! つかオレ、〈戦士〉じゃなくて、〈魔法使い〉にすりゃ良かった!」
武装した若い男達は何か話しながらダチョウのような生き物達を次々に斬り倒していった。
「ギャギャギャギャッ…!!」
倒された生き物達は地に伏せると身体は透明になっていき地面に吸い込まれるように消えていった。
「だいぶ材料集まったんじゃね? そろそろ【フィガルロ】に戻って武器生成してこようぜ!」
「ちょ、待って! あと二体!」
ニコラスはその光景を強張り険しくなった顔で見続けた。
「ニコラス…あれは…何なの…ッ!? 何であの人達は…あんな…ひどい事を…ッ!!」
愛梨は目の前で起こる残虐で信じられない光景を目の当たりにし、涙した。 ニコラスは涙を流している愛梨を見て、更に顔を強ばらせ、腕を震わせた。
ガサガサガサッ!!
「ニコラス…!! 待って…!! 行かないで…!!」