行方不明
愛梨に、斉藤先輩へのラブレターを渡すお願いをした優花は校門の前で愛梨を待っていた。
「愛梨遅いなぁ…。」
予想以上に遅い愛梨の事が心配になり優花は校舎の中へと向かった。
「教室にもいない……あ! 校庭か!」
優花はサッカー部が練習している校庭へと向かい、練習している生徒達や、練習を見学している女子達を見回すが愛梨の姿だけではなく、憧れである斉藤先輩の姿すらもなかった。
校庭から優花の所へサッカーボールが転がってくるとそれを追いかけてきたサッカー部の男子生徒が優花に近づき、優花は自分の所へ転がってきたサッカーボールを拾い上げると、男子生徒へ、ひょいと優しく投げ渡してやった。
「あざっす! あれ? 佐倉? また斉藤先輩見に来たのかぁ?」
「うっさいなー! てか、斉藤先輩は?」
「え? 斉藤先輩? あー…なんか今日は体調悪いらしくて…だから部活には来てねーよ?」
「あ…そうなんだ…。え…? じゃあ…愛梨は…?」
「あ? 高梨がどーした? あ! おい!」
優花は、再度校舎へと向かい走っていった。
「なんだ? 高梨とケンカでもしたのか? ま、いっか。」
男子生徒練習へと戻った。
優花は校舎をくまなく駆け回り愛梨を捜したが何処にも愛梨の姿はなかった。
「校舎にいないって事は…屋上…?」
優花は屋上へと駆け上がり着くと、屋上を見回したが愛梨の姿はなかった。
「やっぱ…先帰ったってやつかな? 携帯も繋がんないや…。ユミさんは…まだ仕事中だろうしな…。」
その後も校舎内を駆け回り愛梨を捜すも、見当たらなく、優花は諦めて帰ることにした。
優花が自宅で父親と弟と夕飯を食べていると、優花の携帯が鳴った。
「愛梨かな! あれ…? ユミさんだ?」
小さい頃に母親を亡くしていた優花は愛梨の母親を自分の母親のように慕っていたので、仲の良い女友達のように接していた。
「もしもし?」
優花が愛梨の母親からの着信にでると、受話器越しでは愛梨の母親の心配そうな声色が伺えた。
「優花ちゃん! 愛梨がまだ家に帰ってこないんだけど…! 愛梨…何か言ってなかった…!? 優花ちゃん、今日は愛梨と帰り一緒じゃなかったの…!?」
愛梨の母親は相当心配しているらしい。
優花は愛梨の母親に事情を説明し、とりあえずもう少し時間を見て、警察に…という話をして電話を切った。
「愛梨…どうしちゃったんだろ…。」