巨獣族オーガ…
「ピコはオーガさんに、『一緒に戦ってください!』って言ってるんです…ッ!!」
「何…ッ!? しかし…自分の使命を全うせず逃げてきたお前と一緒に戦うつもりなど毛頭無いわッ!!」
オーガは愛梨達に背を向け立ち去ろうとした。
「ピギューッ! ピギューッ!」
「待って…ッ!!」
オーガは足を止め振り返った。
「何だ…ッ!? まだ何かあるのか…ッ!?」
愛梨はピコにコソコソと何かを話している。
「何なんだ…ッ!? 用がないならオレはもう行くぞ…ッ!!」
「『仲間』ニナッテクダサイ…ッ!!」
ピコがカタコトの日本語でオーガに呼び掛けた。
「…ッ! コイツ…ッ! 異人語を話すのか…ッ!? このイノタロスは何て言ってるんだ…ッ!?」
「ピコは…オーガさんに、『仲間』になってくださいと言ったんです…ッ!!」
「『仲間』…ッ!?」
「そうです…『仲間ニナッテクダサイ』…これは、仲間になってくださいといいます…!」
「仲間ニナッテクダサイ…」
オーガもカタコトの日本語で言い直してみた。するとピコはそれを聞き取り、喜び、また言い返した。
「仲間ニナッテクダサイッ!! 仲間ニナッテクダサイ…ッ!!」
ピコのカタコトの日本語をハッとした顔で聞き取るとオーガもまた言い返した。
「仲間ニ…ナッテクダサイッ!! すごい…ッ!! オレはイノタロスと話しをしているのか…ッ!?」
オーガはさっきまでの態度とは一変し、腕を動かしたり、表情が緩くなり、笑みまでこぼしていた。
「そうです…ッ!! 今、オーガさんは、ピコと話をしているんです…ッ!! ピコもオーガさんと話せて喜んでますッ!」
「そうか…!! ん? お前の言う、その、『ピコ』というのは…なんなんだ…?」
オーガは首を傾げ眉をひそめていった。
「あ……この子の名前です…ッ!!」
愛梨は腕に抱く『ピコ』を見つめながら言った。
「名前…ッ!? そのイノタロスには…名前があるのか…ッ!? イノタロスの名前はイノタロスじゃないのか…ッ!?」
「私たちにだって…一人一人に名前がないのおかしいと思うんです…ッ!! あ! この子の名前は私が付けてあげました…ッ!!」
「私たちって…お前はモンスターではないじゃないか…ッ!? プレイヤーのお前が…」
「私はプレイヤーじゃないです…ッ!! 私は…あんなプレイヤー達なんかより、オーガさん達の方が好きです…ッ! 大好きです…ッ!! だから…生き続けてほしいんです…ッ!! それに、オーガさん達は心の奥底では生き続けたいって思ってるはずです…ッ!!」
「…お前の名前は異人語でなんと言えばいいのだ…?」
「『愛梨』…。」
「はいッ!」
「お前みたいなプレイヤーは見たことがない…お前はまるで…女神のようだな…オレ達モンスターが生き続ける事を許してくれるのか…? オレ達は使命を果たさなくてもいいのか…?」
「女神って言われると照れちゃうけど…生き続けてください!!」
「そうか…お前はやはり…女神だな…。」
「いやいやいやいや…そんな女神女神言わないでください…ッ。」
愛梨は照れて顔を赤くした。
「女神よッ!! オレにも名前をくれないか…ッ!?」
「女神じゃないです…ッ! 『愛梨』でいいですよ…ッ!!」
「そ、そうか…ッ、あ、愛梨、オレにも名前を付けてくれ…ッ!!」
「は、はいッ!! え、えーと…ッ。」
愛梨は目を瞑り、しばらく考え込む…。オーガは、考え込む愛梨の顔に顔を寄せていく。顔と顔がくっついてしまいそうなくらいだ。
「ど、どうだ…!? いい名前…思い付いたか…ッ!?」
考え込んでいた愛梨の顔が一変し、ひらめき顔になった瞬間、目を開いた愛梨は目の前のオーガの大きな顔に驚いてしまった。
「ぶわおッ!!」
「『ブワオ』か…ッ!? お、おお…いい名前だ…ッ!! さすが女神…ッ!! 愛梨…ありがとうッ!!」
オーガは両腕を上げ喜び、自分の名を再び叫んだ。
「オレは、巨獣族オーガのブワオだぁッ!! ワッハッハッハッ!!」
そんなオーガをきょとん顔で見る愛梨。
「あ……いや……。」




