ルール
ガサガサ…ッ!!
「うぉ…ッ!! もう一体いやがったか…ッ!!」
二人のプレイヤーの前に愛梨が姿を現した。
「はぁ…ッ!! はぁ…ッ!!」
「あれ…? イノタロス…じゃ…な…い?」
「女のプレイヤーだな…? お前も『クエスト』で来てたのか?」
愛梨は二人のプレイヤーと目も合わせず、辺りを見回しながら尋ねた、
「ニコラスと…ジェシカは…ッ!?」
二人のプレイヤーは、一瞬、顔を見合わせた後、すっとんきょうな顔をしながら愛梨に答えてやった。
「はぁ? ニコラスと…ジェシカ? そんなヤツら知らねーけど…。」
愛梨は剣士らしき男に再度尋ねた。
「…『イノタロス』……こっちに、『イノタロス』が二人来たはずなの……ッ!!」
愛梨は、泣きそうな顔をしながら剣士らしき男の両肩を抑え揺らしながら言うと、後ろにいた魔法使いらしき男がどんなもんだと言わんばかりの顔であざ笑いながら愛梨に答えるように剣士らしき男に言い放った。
「案外楽に倒せたよな? 俺達レベル上げ過ぎちゃたのかもな!!」
「ああ、確かに…ッ!! 結構骨が折れるような事言われたけど…そうでもなかったな! あれ? もしかして…あんたクリアー出来なかったとか? それだってらさ、俺達と『パーティー』組んで始めからやり直すか?」
「おいッ!! 希左ッ!! まだ『クエスト』クリアーじゃねんだから、まだアレが残ってんだろ!」
「ん? あ! ああ! そうだったな! 悪いなあんた! とりあえずさ、俺達の『クエスト』クリアーしてきちゃうからさ! あんたの『クエスト』はまた後で……ん? どうしたんだ…?」
「ニコラスと…ジェシカを…返して……ッ。」
愛梨は剣士らしき男の胸を二回、三回と叩くと、崩れ落ちてしまいそうになる気持ちと身体を抑え二人のプレイヤーに言った。
「あなた達を……許さない……ッ!!」
愛梨は二人のプレイヤーに鋭いながらも憂いた目で睨みつけると来た道へと引き返し駆け出した。
「な、何だぁ…??」
「さ、さぁ……よくわかんねー子だな……。」
「ま…いっか…さっさと『イノタロスの書』手に入れて帰ろうぜ…。」
「ああ…こっからが難関だもんな…確か最後の一体は『イノタロスの子供』みたいだなけど…『HP-体力-』が減ると大人に進化して、強さも普通のイノタロスの数倍に跳ね上がるらしいからな……。」
「でもよ、普通の大人のイノタロスの強さがあんなもんじゃ、たかが知れてるよな!」
「確かに…!」
二人のプレイヤーは面白おかしく笑い混じりで森の中を歩み進めていった。
そして…愛梨は…
「ピコ…ッ!!」
慌てふためきながらピコが一人で居るアノ家に帰ってきた。
「愛梨…ッ!? なんで…ッ!?」
別れを告げたはずの愛梨帰ってきたことに喜びを感じながらも、表には驚きだけを出し愛梨を迎い入れた。
「ピコ…ッ!! ごめんなさい……ッ!!」
愛梨はピコを抱き上げ泣きながら謝った、ピコは何のことかをすぐに悟り、愛梨を励ましてやった。
「愛梨は悪くないんだ…謝らないでよ…これは仕方のないことなんだ……。」
「ピコ……ッ!! 行くよ…ッ!!」
愛梨はピコを抱き、立ち上がった。
「え…ッ!! 愛梨…ッ!! それはダメだよ…ッ!!」
「どうして…ッ!!」
「…僕達はそういう使命なんだよ…ッ!! 僕が死ねば、次の僕が生まれてくる…この世界の『ルール』なんだ…ッ!!」
「そんな『ルール』知らない…ッ!! 死ぬために生きなきゃいけないなんて…私には分からない…ッ!! こんな世界のこんな『ルール』なんて知らないよッ!! プレイヤーっていう人達から見たら、ピコやニコラスやジェシカは『モンスター』なんだろうけど…私には『モンスター』には見えないもんッ!! ピコもニコラスもジェシカも…私達人間と変わらない…ッ!! 私達人間よりも人間らしいもんッ!! こんな世界の『ルール』なんか守らなくていいッ!!」
「愛梨……ッ。」
「ピコはピコだけだもん…ッ!!」
「フがォッ!! く、苦しい……ッ!!」
愛梨はピコを強く抱き締めあげるとそのまま家を出て、プレイヤー達が来るであろう方角とは反対への方角へ走り逃げた。
「ニゴラズぅ……ジェジカぁぁ…ッ!!」
愛梨はピコを強く抱き、泣きじゃくりながら走った。
「ぐ、ぐるじぃ…ッ!! フがッ…フがッ!!」
そしてイノタロスの住処に辿り着き、家々を練り歩き回る二人のプレイヤーは…
「いねぇ…じゃん…。」
「まじかよ……これ…『クエスト』…どうなんだよ……ッ!!」
「『運営』にクレームだなこりゃ…まじ有り得ねぇ…どうなってんだよ…ッ!!」