セロハンテープ
「愛梨…!! 早く起きなさい…!!」
「ふぁぁ…い……すぴー…すぴー…。」
「起ーきーなーさいッ!!」
「ふごぉッ…!!」
母親が寝起きの悪い娘の鼻をつまみ、捻る。高梨-たかなし-家での毎朝恒例だ。
「眠……い……。」
ビリッ ビリッ
「早く顔洗って歯磨いてきなさいよッ!」
「ふぁ~い…。」
娘が眠気に勝てず、重たい両瞼-まぶた-を透明セロハンテープで無理矢理開き貼る光景もまた毎朝恒例だった。
愛梨は百五十六センチながらも体重は四十五キロという軽やかな身体、だが、寝起きの為、非常に重たい身体をゆらゆらと一階にある洗面所へと向かわせた。
「あら…?」
愛梨は洗面所に辿り着いたものの扉が閉まっていたため引き開こうとドアノブをガチャガチャとした。すると、扉の向こう側から、図太く低い声が発せられた。
ガチャガチャ ガチャガチャ
「愛梨か、洗面所は隣だぞ。」
「あ…パパ…扉開けて…。」
「そりゃ無理だ。」
「え…? 愛梨、顔洗って歯磨かなきゃ…。」
「愛梨、ここはトイレだ。洗面所は隣だぞ。」
「あ…間違えちゃった…ごめんなさい…。」
「あ、愛梨!」
扉の向こう側からの返事は愛梨の父親だったらしい。寝起きという事もあり、愛梨は洗面所とトイレを間違えたみたいだ。父親が何か言い掛けていたが寝起きの悪い愛梨はまだ意識朦朧し、身体をゆらゆらさせながらたった今間違えてしまったトイレの左隣にある洗面所へと入っていった。
「顔…顔…。」
愛梨は洗面台の前に立つとレバーを上げ、水を出し、両手を出して手のひらを表にし、くっつけ、蛇口から出る水をすくい、腰を曲げて自分の顔を手に近づけて水をかけた。
「ぶぁ…! 痛ったーい…!」
重たい両瞼を持ち上げるために貼ったセロハンテープを剥がし忘れた愛梨は、思いっきり見開いた目に水をかけてしまった。
「目…痛いよぉ…。」
愛梨の脳がようやく起き始めたのか、両瞼を開くためのセロハンテープを剥がすと、歯磨きを済ませ、母親が朝ご飯を用意しているキッチンに向かった。
「あ…ママー!」
「愛梨、おはよーは?」
「おはよー! あ! あのさ! もうセロハンテープないから買ってきといて! お願い!」
「はいはい…。」
キッチンで朝ご飯を用意する母親と、
トイレの便座に座り妻と娘の会話を聞く父親は毎朝思う。
愛梨よ…
毎朝毎朝そんなんで大丈夫なのか!?
…と。
「行ってきまーすッ!!」
「愛梨…!! ちょっと待て…!!」
「え? 何、パパ?」
「それ、パパのカバンだ…愛梨のカバンは…こっちだ。」
「あ…! ごめんね、パパ!」
「たくッ。 気を付けて行って来いよ!」
「はぁーい! じゃ、行ってきまーす!」
主人公
高梨愛梨
高校二年、十七歳。
身長、百五十六センチ。
体重、四十五キロ。
顔、 中の上。
髪型、黒髪セミロング。
格好、ブレザー、濃紺。
特徴、寝起き悪い。少し?おっちょこちょい
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