猫
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本編 夜天の魔女
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猫
ある日キナが拾い物をしてきた。
拾い子が拾い物をしてくるとは何やら妙なものだ。
拾い物は、キナの腕の中に丸く収まり
満足そうにゴロゴロと喉を鳴らしている。
キナを拾った時には大層睨まれたし、
風呂に突っ込んだ時には爪も立てられたし歯も立てられた。
汚れが漸く落ちて、初めて女児であった事に気が付いたものだ。
なのにこの拾い物ときたら、キナの手に頭を擦り寄せて「撫でてくれ」と言わんばかりである。
同じ拾い物なのに随分と違うものだ。
飼っても良いかと上目で尋ねるキナに
世話は自分でする事と申し渡す。
夜の色が嬉しげに輝くのを見れば、このぐらいの事は些事であると思えた。
しかしそれは一時の気の迷いであったかもしれない。
二人で過ごしていた茶の時間、それは常にキナの膝の上を陣取った。
ゆるりと街歩きと思っても、拾い物の給餌だなんだとすぐに転移で帰りたがる。
何やら咽喉に小骨の刺さったような心持ちが続いた。
ある日キナが初めてのワルプルギスに出かけることとなった。
後ろ髪引かれる様子であったが、こればかりは親の死に目以外欠席は認められないそうだ。
育ての親である自分はまだまだ死ぬ気はない。
拾い物の世話を懇々と頼むキナにとんがり帽と箒を渡し、迎えに来た魔女仲間に押し付けた。
やれ、と居間へ戻れば拾い物は現金にも定位置のキナの椅子ではなく、自分の椅子で丸まっている。
呆れたものだと椅子を開け渡し、窓際のロッキングチェアに本を片手に陣取った。
幾枚か頁を捲ったところで、とん、と膝に温かいものが跳び乗る。
本を持つ腕を掻い潜り、ひょっこりと顔を覗かせ、にゃあと鳴く。
腹が減ったかと除けて立ちあがろうとすると
拾い物はぐんと伸びをしてきて、自分の頬をざらりと舐めた。
驚きにその顔を見ると、こてりと首を傾げてから満足そうに定位置へと戻って行った。
ふむ、と頬を擦り頁へ戻ろうとすると
拾い物はもう一度にゃあと鳴く。
視線を向ければ尻尾をぱたり、ぱたりと振って見せる。
そしてくるりと丸まり、影のようになって目を閉じた。
我が家の拾い物は漆黒の猫である。
名前はまだない。




