箱の世界で叫ぶ僕
「箱の世界で叫ぶ僕」
不思議な学校が一つあった。学校自体は普通の建物なのだが、教室が不思議だった。教室に入ると上に空間があり、大きな人がのぞいている。教室の中央にも箱があり皆、箱をのぞいている。つまり教室自体が箱なのだ。
少年はいつも朝早く登校してくる。その隣には少年の友達がいる。彼らはいつも一緒に登校している。
「一つ思ったことがあるんだ」友が少年に話題をふる。友はよくこのような話をする。以前にも地球が平面かもしれない話や、食肉をやめた方がいいなどという話を少年に話していた。少年はそのたびに友にほかの人に言わないよう忠告をしてきた。
「この教室は無限に続いていると思わないか。箱の中に箱があって、その中にも箱がある。そしてその中にも箱がある。だが箱の中にある箱に映るのは最初の箱なんだ。つまりお互いに観察させている状況。これで見られてる状況を常に実現して学力の向上を図っているんだよ」
おぉ、なるほど。少年は友の言葉で初めて感心した。その様子を見た友もうれしそうな顔をした。
次の日、少年は寝坊した。急いで支度をしたが、電車は先にいっている。少年が着いたときには一限が終わって授業間休みとなっていた。教室には友がいなかった。どこにいるのかとクラスメイトに尋ねた少年は驚いた。クラスメイトが指を差した先は中央の箱だった。
友はこの日、少年に話した話をクラスメイトにもした。クラスメイトには変な話に聞こえたのだろう。クラスメイトは別のクラスメイトへと広げた。そして気が付いたら、友は箱の中にいたらしい。少年はクラスメイトとそこまで仲良くもない。それは友も同じだ。昨日少年が友の話に納得したことで、友は正しいことを言った気になり、ほかのクラスメイトにも話してしまったのだろう。少年はそう思った。それと同時に少年の心には深い罪悪感が残った。
気が付いたら少年は箱の友へと話しかけた。少年の隣に友が立った。周りには知らない人達が群がる。少年も箱の中に入ったのだ。少年は先ほどまで、友への罪悪感を感じていたことを忘れた。友は少年へいつも通りに接してきているが、その声は届かない。
「ここから出せ。僕は何もしていない。第一お前の意見は間違っていたじゃないか。このクラスに箱はない。ほかの奴に話したお前が悪いんだ。それに俺は巻き込まれた。お前のせいで、僕が箱の中に吸い込まれた。お前のせいでだ。」少年は激高し、友に掴みかかろうとした。新たなクラスは静寂に包まれている。目は少年に向いている。
少し経ち新たなクラスでは中央に設置された箱が話題となっていた。中にいるのはただ一人、少年である。少年と仲の良かった友も箱に話しかけたりしない。箱へ話しかけたら自分も箱の中に入るのだ。
少年は一人になったが、まだ楽観的に考えていた。よく考えると、箱の中に入ったところで家に帰れば関係ない。もう学校にいけないだろう。問題を起こせば箱に入るということはたった一人で箱に入った問題児の少年は進級できるとは到底思えない。
6限のチャイムが鳴り、少年はドアに手をかける。さよなら、学校。もうここには来ない。覚悟を決めた少年はドアを開けようとした。
ドアはピクリとも動かない。少年の額は冷や汗で埋まった。スマホを取り出した少年は親へと電話をかけた。
「教室のドアが開かない。助けてほしい。どうなっているの。」
鼻水と涙が混ざった震える声で親へ助けを求めた。少年は頼るものがこれしかなかった。しかし求めた回答は帰ってこなかった。
「お前は最後の箱まで行ったのだろう。そのようなものはもう家の息子ではない。」
電話が切れてから少年はどうしようもない後悔に襲われた。頼る人がもういない。
その時スマホが光った。SNSの通知が来たのだ。少年は最後の綱にSNSを選んだ。教室の箱に閉じ込められている。このままでは死んでしまう。そのような内容で少年はSNSに投稿した。
SNSはしばらく何も反応がなかったが、時間が経つにつれ心配を表すコメントが何件かついた。助かるかもしれない。気が滅入っている少年はそう本気で思った。一時間に一件ほどの通知音が少年の心の助けになっていた。
寝ていた少年は大量の通知音で目が覚めた。スマホを見ると自分への誹謗中傷コメントが付いており、それへの批判で炎上が起きていた。SNSという箱のなかで自分は中心ではなく、それを眺める傍観者になっていた。
ある日、友のクラスから箱が消えた。一人減ったのだろう
薄気味の悪い内容だった。この内容では人は寄り付かない。箱の説明もない。後半は喧嘩をしただけの少年が破滅するだけであった。私はスマートフォンで作者へと批判を書こうとした。手が止まった。この物語にはもう一人破滅した人が登場している。
少年のSNS上に誹謗中傷を書いた者である。彼は今後の人生うまくいかないだろうと容易に想像できる。でも彼もただ少年と同じことをしただけではないか。少年も罵詈雑言を浴びせていたが、破滅するほどの悪には思えない。SNSの彼は自業自得に見える。
その時少年の友が話していた内容を思い出した。「つまりお互いに観察させている状況。」これは作中間違っているものとして書かれていた。しかし、SNSなどの観察しあっている状況では少しのことですぐに人生が終わってしまう。
そして、心配のコメントと、箱の外の巨人も同じだ。実際は何もせず傍観するだけ。
握っている板が私の目には箱に見える。私はこの作品に虜になっていた。
「とても面白い内容でした。特にSNSと教室、二つの箱がリンクする描写が実際自分もこうなるかもしれない。と深く感じました。通知音が自分には足音のように聞こえ、あなたの感受性の高さにはぞっとしました」
なぜかはわからないが僕の書いた短編が飛ぶように売れた。おそらくこのコメントのおかげだろう。実際にこのようなことを考えて書いたわけではないのだが、コメントでは考察や新たな視点で埋め尽くされている。
新たな本を書けば、僕の書いた本だからという理由で売れる。住む場所はボロアパートから、高層マンションへと変わった。称賛の通知音がなりやまない。一つの投稿が僕の人生を変えた。
ふと、画面に自分が反射する。背後の窓に映った背景では巨人がこちらを見ている気がしてぞっとした。結局、僕はもっと大きな箱に移動しただけなのかもしれない。




