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第35話 イレーネさんが、ちょっと意味の分からない事を言う


「さあさあ、行きましょうユリエラさんっ」

「うわ~」


わたしは内心焦っていた。

だって地下2階で、経験値を積むんだと思っていたから。


わたしだって、経験値の稼ぎ方ぐらい知ってる。

ある特定の場所に陣取って、ひたすら同じモンスターを狩る。

そうすることによって、効率良く経験値を稼ぐことができるから。


けれど……

地下10階ってなにー!?

しまったっ、これ2人だけで大丈夫なの!?

今からでも遅くないよねっ、戻って自動人形(オートマタ)を何体か連れてっ――


わたしが悩んでいる間に、イレーネが扉を開けてさっさと入ってしまう。

こっちへ振り返って、手招きしていた。


「ユリエラさん早くっ。入った後、15秒で扉が消えちゃいます」

「ええー!」


くううっ、何かわたしにだけ「時間制限イベント」が起ってるー!

わたしは崖の(ふち)から、飛び込むような気持ちで扉をくぐった。


くぐった先は、何の変哲もない石造りの狭い通路。

先は暗くて良く見えなかった。


「今、松明(たいまつ)を灯しますね」


イレーネはそう言うと、右手を優雅に振って多くの「光子(こうし)」を飛ばす。

光の粒子は通路の左右へ飛んで、壁に掲げられた松明を灯して、通路が暖かな光に包まれた。


「おー」


灯りが付いても、50mぐらい先が真っ暗だった。

わたしが眼を凝らしていると、イレーネが説明してくれる。


「あそこから先が、大広間になってます。

鍾乳洞を荒く整えたような空間があって、その奥に“階層守護者”がいます。

ダンジョンの中ボスです」


「階層守護者っ!? 中ボスー!」


あれ? 雑魚キャラを、チクチク狩って行くんじゃないの!?

スライムとか、お化けコウモリとかそんな奴っ。

そんな奴じゃないのー!?


やっばい、階層守護者って響きがヤバい。

やっぱ自動人形フルメンバーで、連れて来れば良かったっ。


て言うか、イレーネがヤバい。

中ボスを2人で狩ろうとする、イレーネの思考がヤバいっ。

わたしがドン引きしててもお構いなく、イレーネがワクテカしながら説明してくれる。


「ユリエラさん、そんな怖い顔しなくても~。

大丈夫です。階層守護者とは戦いません。

その手前で、チクチクやります。

まずはですね~」


そこでイレーネが指先に光を灯し、空間をホワイトボード代わりにして、地図を書いてくれた。



     大広間

      ●←中ボス

…………………………………←ボスが動き出すライン



…………………………………←子分が出てくるライン

壁壁壁壁壁壁 壁壁壁壁壁壁 

     壁 壁

     壁 壁

     壁 壁

     壁 壁

      ●←入ってきたトビラ



「ここが、入ってきた扉です。

この手前の通路を行くと大広間があって、奥に中ボスがいます。

大広間に入ったら、ボスが私たちを視認して子分を出します。

すぐにボス戦が始まるんじゃなくて、まずはこの子分との戦いです。

ボスはこっちが直接攻撃したり、近づかない限り、戦闘には参加しません。

そしてそのボスの出す子分が、今回の私たちが狩る獲物です」


「ボスとは戦わなくて、その子分とだけ戦うの!?」


「そのとおりです。子分は、無限湧きしてくるんです。

ちっちゃくて、そんなに強くないです。

だから大丈夫ですよ、ユリエラさん」


「ううう……分かった。や……る」

「そうこなくっちゃっ」


わたしはイレーネに付いていき、通路から大広間へと出る。

空気がひんやりとして、真っ暗だった。


けれどその奥

大広間の奥に、こんもりとした山が見えた。


うっすらと後ろから青白い光が差していて、黒くのっぺりとしたシルエットが見える。

多分あれがボスだ。

でかいでかいでかいでかい、でっかいー!


「ユリエラさん、少し近づきましょう。

まだこっちに、気付いてくれません」


「近づくの!?」


真っ暗な中で、イレーネが微弱に発光していた。

夕暮れの学園で見たときは神秘的に思えたけれど、今は凄く目立つから、頭から毛布を被せたくなる。


わたしたちは闇の中、じりじりとボスへ近づいていった。

一歩、そしてもう一歩。

近づくほど、わたしの中に恐怖が噴き上がる。


見つかるために近づいているけれど、わたしの本能が見つかりたくないと叫んでいた。

もう心と体が、ちぐはぐだった。

更に一歩、更に奥へもう一歩。


「うぐぐっ」


もう駄目だ逃げようと思ったとき、山のようなボスのシルエットから、小さな影がころりと出た。

数は5つ。


多分あれが、イレーネの言っていた子分だと思う。

それがむくりと起き上がって、こっちを見た。


真っ暗で全然分かんないけれど、わたしを見たって本能で感じた。

わたしの背中が、ゾゾゾッてしたから。


それが一斉に、こっちに向かって駆けだした。

全力で!

ズドドドドッて、地響きがしてる。


「こわいー!」

「ユリエラさん、早く通路へ戻って!」

「ええ!?」


見れば通路へ駆け戻る、イレーネの背中が見えた。

わたしも必死で通路へ駆ける。


「待ってイレーネさん!」

「通路は狭くて、子分たちは一匹ずつしか入ってこれません!

通路まで誘導して、そこで戦います!」

「それ先に言って!」


わたしたちは通路の奥へと逃げ込み、長枝(ロッド)をかざして身構えた。

追いかけてくる地響きが鳴りやむ。

なんだか穴へ逃げ込んだこっちの様子を、(うかが)っているみたい。


イレーネは小さいって言ったけれど、わたしたちからすれば、子分も充分に大きかった。

多分、身長が5mぐらいある。


通路のふちに、白くて大きい手が掛かった。

体を折り曲げて、子分がこちらを覗き込む。


その顔は真っ白で目も鼻もなく、黒く塗られた唇だけがあって、にっと横に開いて笑っていた。

わたしの背中が、更にぞぞぞって来た。


「きもいっ!」

「あれが階層守護者バンドマンの、“追っかけ”ですっ。

わたしたちは黒ミサライブに紛れ込んだ、余所者として排除されるんですっ」


「イレーネさん! ちょっと意味が、分からないんだけどー!?」







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