表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/48

第33話 ユリエラ、イレーネにダンジョンへ誘われる


ちゃんと寝たお陰で、1限目を無駄にしなかったユリエラ。


「ふう……」


わたしは学校から帰ってくると、アイナの淹れてくれた紅茶を飲みながら、机に向かっていた。

最近色々とあって、勉強が(おろそ)かになっている気がする。


仮にもわたしは公爵令嬢なので、「勉強ができる女」でなくてはならない空気がある。

だから今日学んだ範囲は、しっかりと復習して――

と言いたいけれど、わたしは昨晩できたばかりの曲の歌詞を考えていた。


「ららら~でも、良いんだろうけどなあ」


やっぱり、歌詞があった方がカッコイイよね。

こうして詩を考えているわたしって、アーティストみたいだよね。


とっても素敵っ。

だから歌詞なのです。

元々あった曲の歌詞は良く分かんないから、一から作らないといけない。


「世界観を大切にしなきゃ」


なんてアーティスト気分で(つぶや)いて、ニヤニヤしてたら、扉がこんこんこんとノックされた。


「はい、どうぞ」


声をかけると扉が開いて、メイドのアイナが会釈する。

何だか表情が硬い。

いつもすまし顔だけど、ちょっと眉毛あたりに困惑の色が混じってる気がする。


「お嬢様、御学友のイレーネ・フェルル様がお見えになりました。

お部屋にご案内しても、宜しいでしょうか」


非常階段から連れ去られたのは、つい先日のこと。

わたしは何かあったのかと緊張する。


「ええどうぞ、通して頂戴」


入ってきたイレーネは、わたしに深々と頭を下げる。

それはご挨拶と言うよりも、先日助けられた事への、感謝という意味が含まれていると思う。


けれど言葉には出さない。

すぐ後ろに、アイナが立っているから。

アイナが、はっきりと困惑している。

それはそうだろうなと思った。


だって土曜日の夜遅くにアルヴィン王子たちが、

「イレーネが消えた! どこにいる!」なんて言って、この部屋に押し込んで来たのだから。


その消えたはずのイレーネが、月曜日の夕方に訪ねてきて、わたしに頭を下げている。

きっとアイナの中では、?マークが飛び交っていると思う。


土曜の深夜から日曜の朝にかけて、わたしはこの部屋に居なかった。

そのことは、アイナも多分気付いているはず。


日曜日の朝にイレーネを救出して、わたしとイレーネは学園に戻ってきた。

一応、時間差をつけて戻ってきたけれど、あんまり意味は無かったかもしれない。


この世界にはネットとかテレビはないから、港での「巨大イカ騒動」は口コミで広がっていく。

情報は拡散されるほど不確かになるから、「何か港に出たらしい」とか、「巨大なエビが出たらしい」とか、あやふやになって行く。


港から、遠く離れた学園にいたアイナ。

彼女がこの月曜日の夕方までに、どれだけ確かな情報を耳にしているか、分からないけど……


土曜の夜から日曜の朝まで、わたしは部屋に居なかった。

日曜の朝に、港で何か大事件が起きた、

消えたはずのイレーネが、たった今ここに居る。


わたしを監視するために送り込まれたアイナが、この3つを繋げて考えないはずがない。

て言うか3つ知ってたら、誰だって繋げると思う。

色々とアイナの頭の中で、回っているんだろうなあ。


「……イレーネさん、少し散歩でもしない?」

「はい、行きます」


わたしはイレーネを連れて外へ出た。

ここでは壁越しに、アイナが聞き耳を立てるだろうから。


ちょっと前まで5時頃になると真っ暗だったけど、今は西の空がまだ明るかった。

わたしとイレーネは夕焼けを眺めながら、学園の敷地を散策する。


「イレーネさん、あのあと大丈夫だった?」


「大丈夫じゃないです。

あのあとアルヴィン様、カイギス様、ジェイル様に取り囲まれて、質問責めにされました。

全然開放してくれなくて、私また監禁されてる気分になりましたよっ」


「あはは、おつかれさま」


「ちゃんと打ち合わせ通りに、タルから自力で脱出した事にしました。

自分で爆発させて逃げて来たって」


「信じてくれた?」


「多分そこは信じてくれたんですけど、

その後に何でユリエラさんと2人きりで、学園寮をウロウロしていたんだとか、

なんで非常階段に2人で行ったんだとか、もうしつこいくらい聞いてきて……

だから私、言ってやったんですっ」


「何て言ったの?」


「私とユリエラさんは、すっごく仲の良いお友達だって。

2人でいると色々変な眼で見られるから、誰もいない2人きりになれる場所を探していたって。

だから、非常階段に登りましたって」


「あー」


誰もいない、2人きりになれる場所かあ。

何だかそこを強調すると、「友達とは違う情熱」を聞き手に感じさせる気が、しない訳でもないけど……

ゲームの聖地巡礼してたなんて言えないから、まあいっか。

イレーネがぷりぷり怒ってる。


「アルヴィン様たち、ユリエラさんの悪口すっごい言うんですよ。

友達になるなとか言ってきて、あーもうっ」


「悪口、言ってたんだ……」


分かってはいたけれど、はっきりと悪口を言ってたと知ると、結構胃にくるものがあった。

それが悪役令嬢としての役回りとは分かっているけれど、胃がきゅうってなって痛い。


でもゲーム通り敵対していたら分かるんだけど、イレーネと仲良くなっているのに、まだ悪口を言われるのって、何なんだろう?

何だか頭も痛くなってくる。

しょげるわたしを、イレーネが(はげ)ましてくれる。


「ユリエラさん気にしないで、私が付いていますから!」

「うん、なんかありがと」


「で、ユリエラさん。

今日はその……ちょっとお願いがあって来たんです」


あ、状況を報告しに来ただけじゃ、なかったんだ。

わたしは、気持ちを切り替えて尋ねる。


「お願いって何かしら?」

「私と一緒に、ダンジョンへ潜ってもらえませんか?」


「え?」


「私は自力で脱出したって、アルヴィン様たちに言いましたけど、本当は違うじゃないですか。

自力じゃ無理でした。

これじゃまずいなって思って……

もしこれからもイベントが、早期アクセスみたいに始まったら、今の私じゃ対応できないと思います。

だから積極的に、レベル上げがしたいんですっ」


「お~」(感心)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ