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第26話 わたしの美しい自動人形たち


わたしの自動人形(オートマタ)は、全部で16体。

精巧に造られた、見目麗しい球体関節(ボールジョイント)の男たちだった。


学園城下の街並。

その屋根上を 漆黒のスーツを身に(まと)ったオートマタたちが、音もなく走り抜ける。


わたしはそのうちの一体に、お姫様抱っこされて一緒に移動していた。

わたしも夜に(まぎ)れるよう、黒いドレスへ着替えている。


天空の月に照らされた街の屋根瓦が、黒い海原のように何処(どこ)までも続いていた。

夜に吹く春の風が、ドレスの(すそ)やわたしの銀髪を巻き上げる。


眼下の通りでは、魔法のランタンがちらほらと灯っていて、飲んで騒ぐ楽し気な声が聞こえてきた。

イレーネが(さら)われてすっごい緊迫してるのに、わたしは一瞬、「赤えび亭」のオススメは今日何だろ?とか考えてしまった。


いけないこんな時にっ。

集中してよ、わたし!

わたしがぷるぷる頭を振っていると、随行(ずいこう)している他のオートマタたちが寄ってくる。


「どうしたのです、我が(きみ)(わたしの事)。

気分がすぐれませんか?

おいアグリっ。

お前の抱擁(ほうよう)が、未熟なのではないか?

私と、我が君の抱擁をチェンジしろっ」


「ずるいぞシャサールっ。

抱擁をチェンジするなら、この私。

ペシャールが適任だっ。

アグリよ私と変更しろ」


「シャサール、ペシャールよ。

私は適切なパワーで、我が君をホールドしている。

余計なクレームを、受け付ける時間はない」


「アグリ何を言っている?

たった今、我が君が頭をスイングしていたではないか。

事実に、着目しろアグリっ」


「そうだ事象を直視しろ、アグリっ」

「むむっ」


わたしを誰が持ち運ぶかで、オートマタたちが揉め始めた。

オートマタという設定だからなのかな?

彼らはちょっと奇妙な言葉遣いがデフォルトになっていた。

わたしは3体を(なだ)めながら、優しく告げる。


「心配してくれてありがとう。

アグリのホールドは、適切なパワーよ」


オートマタたちと喋っていると、わたしまで釣られて変な言葉になっちゃう。


「「 我が君の言伝(ことづて)ならばっ 」」


シャサールとペシャールは声を(そろ)えて(うなづ)くと、大人しく随行してくる。


ふう……実際のゲームでは、オートマタのセリフとかボイスはなかったけど、何でこんな感じなんだろう?

なんかゲーム制作者の、ウラ設定とかなのかな?

喋っていると疲れるけど、わたしに絶対服従の(しもべ)たちだった。


わたしたちの向かった先は、港にある倉庫街。

わたしはそこの19番倉庫を、偽名で借りている。


実際のゲームでは、その倉庫にイレーネが魔法を使えないように拘束されて、横たわっていたんだけど……

やっぱり居なかった。


わたしが誘拐してないから当たり前なんだけど、早く見つけなきゃって気持ちがあるから、ガックリくる。


「でもでもっ、それほど元のイベントから、流れは大きく変わっていないはずっ。

わたしの倉庫に居なかったら、この倉庫街のどこかに!」


リミットは日の出まで。

早朝に沖から船がやってきて、(たる)に詰められたイレーネが、外国へ売り飛ばされちゃう。


貿易船は早朝にたくさんやって来て、積み荷を降ろし、また別の積み荷をいっぱい積んでいく。

その樽のやりとりは何千個にもなるから、一斉に始まったら、もうその最中に探し出すなんて無理だった。

わたしは空中にイレーネの幻影を、魔法で浮かび上がらせる。


「全員注目してっ。この子を探してほしいの。

名前はイレーネ・フェルル。

この倉庫街のどこかにいるはず。

倉庫の数は、全部で51。

見つけ次第、集合して助け出して!」


16体のオートマタは、わたしの命令を受けて、倉庫街の闇に消える。

わたしもアグリと共に、倉庫を順に調べていった。


そして数時間後、わたしたちは再び19番倉庫の屋根上に集まる。

イレーネは何処にも居なかった。

51棟ある倉庫の、何処にもいない。


「どこにいるの、イレーネ!?」


わたしは振り返り、東の空を見つめる。

遠くに見える山の稜線(りょうせん)が、うっすらと色づいていた。


「くう」


ゲームでは「イレーネ入りの(たる)」が船へ積まれる直前、危機感をバネにして、イレーネの魔法レベルが上がる。

イレーネはそうやって、イベントで危機を乗り越えるたびに、光属性の魔法使いとして成長していく。

これを何度か繰り返して、最終的には「聖女」として国の守護者となる。


自力で脱出できるレベルに達していれば、拘束具なんか無視!

自分の詰まった樽を、光魔法で爆破して中から出てくる。


けれどレベルが不充分だと、12分の1の確率で王子たちが駆けつけて助かるか、もしくはそのまま船に積まれてしまう。

港を離れていく貿易船をバックに、イレーネの「辞世の句(ダークバラード)」が画面に浮かんで、ゲームオーバーになる。


わたしの中に、選択肢が過ぎった。

ここでイレーネが、自力で脱出する可能性にかけるか?

それとも王子たちの、12分の1の確率にかけるか?


「……どっちも無理。

このイベントの発生が早すぎるよっ。

5ヶ月ぐらい早い。

その5ヶ月分の、レベル上げが足りてないっ。


それじゃどうやっても、自力で脱出できない。

あと12分の1の確率なんか、危険すぎるっ」


わたしは心を落ち着かせるため、3度深呼吸した。

オートマタの超綺麗な男子たちが、その様子を見て、わたしを取り囲む。

自動人形なのに、すっごい良い匂いがする。


「我が君っ」

「我が君よしっかりっ」

「我が君、どうか私の胸でスリープして下さいっ」


「……ありがとう。

みんな聞いて。

わたしは最悪ここを戦場にするわ。

その準備をしておいて」





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