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困った、困った。

作者: 暇庭宅男

自分は母親と相性が悪い。性格の相性の悪さは現実世界でもネットでもどこでも話題になるが、それだけ合わぬ人間がどういうわけか親子になったり兄弟になったり夫婦になったり。おかしなものである。


それを私が感覚的に理解し始めたのは高校生からだろうか?小学生のころからどうにも話が合わず、しかし親とはそんなものであると思ってあまり疑問にも思わなかった。


高校生のある時、人生ではじめて友人の家に泊まった。夏休みにぴったりの高地にあるお洒落なお家だった。そこから毎日、電車で片道1時間半もかけて、高校へ通っていると思うと不思議な感じがした。


友人と友人のお母様と三人で、麦茶を頂きながらはじめて話したとき、ある種の衝撃を受けた。

友人一家が家族仲が良いのは感じてはいた。その源がお母様にあると確信したのはその時だ。


会話が弾むというのはああいうことを言うのだろう。お母様は話の引き出しが豊富で、様々なことに興味津々であった。そして、息子とも、私とも、その意見の差異を楽しむ余裕があった。


一泊してから自分の家へ帰り、自身の母へ帰宅を告げた時、今までなんとなく感じていたものの正体を理解した。

母親のコミュニケーションとは、基本的に相手との意見の差異を見つけ、その差異をエラーとして解決する事だと。

解決というのは自分の理解と許容の範囲の内側に、息子の感性を矯正することである。

それは母自身の抱える慢性の不安感を、息子である私を通して和らげようという心のはたらきであったように思う。(後に母の抱くあらゆる事柄への不安感は、種々の病の元になる)


しかし悲しいかな、私は母に近しい感性を持たぬまま生まれ、ついに矯正されることもなかった。

故に母との会話はいつでも私の忍耐と消耗を強い、母からしてもそれは同様であった。


帰ってきた私に、「相手の家はどうであったか、そこでおまえはどういう振る舞いをしたのか」と細かに説明させ、息子にどこがどう至らぬのか指摘し、相手の家のしきたりをおかしいと批判した。


私も大概、対人の感覚は鈍いほうである。が、この時とうとう、母のこのコミュニケーション方法が私は嫌いなのであると認識せざるを得なかった。


以来、私も様々な努力をし、母も力を尽くした。

同じボートに乗りながら互いに反対の方へオールを漕ぐような果てしない徒労の果て、母の発病と私の縁談の破談が決め手となり、私は仕方ないのだと母の人格について半分あきらめ、もう半分を受け入れることとした。


親子と言えど相性よく生まれるとは限らない。そこは運であり、努力が実を結ぶとも限らない。それを学ぶのに実に四半世紀を費やした。


……などと書くと今は悩んでいないように見える。実際は日々母とのコミュニケーションにストレスを感じ、困った思いもたくさんしているのである。


でも昔より、消耗する度合いが軽くなったのは感じる。困ったことを困ったこととして、自分に引き受けつつ抱えないようにできる姿勢が少しずつ身について来たということかもしれない。

困っているということは、生きているということでもある。ぼくらはみんな生きている、生きているからから困るんだ。はあ、困った、困った。

文章リハビリテーション。2回目は結構個人的な事を書いてみた。見返して思うが本当に私は愚痴を書かせたら筆が早い。

ちなみに母には感謝していることも多々ある。それこそ親子の立場が逆だったら、ちゃんと成人まで面倒を見ることが出来たか甚だ怪しい。

かーちゃん、決して仲の良くない息子をちゃんと面倒見てくれてありがとう。作品のだしにしてごめんね。

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